第103話 守りの覚悟/ジャン
「無双鉄騎団、ムスヒム王子の1000機以上の魔導機軍が四方よりレイデマルト公爵領内へ侵攻してきた、すでに包囲され退路は絶たれている。我々が敵軍を抑えるので、ユーディン王太子を連れて逃げてくれ」
カロン公爵からの通信は絶望的な状況を知らせるものだった。
「チッ……アリュナ、勇太とはまだ連絡できないのかよ」
「ダメだね、うんともすんとも言わない」
「どうする、ユーディン、カロン公爵たちはお前だけでも逃げろと言ってるけどよ」
ユーディンは何かを考えるように難しい表情をするが、すぐに顔を上げてこう答えた。
「僕の為に集結してくれた味方を見捨てるなんてできない! 何の力にもなれないかもしれないけど、一緒にここで戦わせて欲しい」
「と言うことだ、カロン公爵、ユーディンはここに残りたいそうだ、なので俺たち無双鉄騎団も必然的に参戦することになるな」
「……すまない……せめてユーディン王太子の乗るライドキャリアを軍の中央に移動して貰えるか、その方が士気も上がるだろ」
「わかった、すぐに移動する」
敵軍は魔導機1000機を越える戦力、こちらは300機ほど、普通に考えたら勝ち目はないが……
「ジャン、エミナから通信だよ」
「おっ、そうか、エミナ、どうだ、リンネカルロの知り合いの将軍はこちらについてくれたか?!」
「残念だけどそれは無理だったわ」
「なんだと、どうするんだよ、こっちは1000機以上の敵に囲まれてるんだぞ」
「だけど、リンネカルロのオーディンとアーサーのセントールは取り戻しました。後、勇太とナナミと合流して、今そちらに向かっています」
「おっ、勇太たちと合流できたか、そうか、勇太、ナナミ、リンネカルロ、エミナにアーサー……それだけ戦力があればなんとかなるか、わかった、お前たちが戻るまで持ち堪える」
俺は言霊箱のチャンネルを、事前に用意していたカロン公爵軍、レイデマルト公爵軍、バレルマ公爵軍の共通回線に変えた、そしてこう語りかける。
「カロン公爵軍、レイデマルト公爵軍、バレルマ公爵軍の全ての兵に伝える。ユーディン王太子は自分だけ逃げる事を拒否してここに残る事を決断した、味方であるお前らを見捨てることはできないと言ってな、どうだ、自分達の為にこんなこと言う奴に王様になってもらいたいと思わねえか、あのムスヒムが王になったと考えたりしたらゾッとするだろ、それに俺たちは最終的な勝利を約束されている、もうすぐ、あの天下十二傑のリンネカルロが援軍にやってくる、それまでユーディンを守り切れれば俺たちの勝ちだ、どうだ、そんなに難しくねえだろ、時間を稼ぐだけでいい、攻撃より防御に徹して守り抜こうぜ!」
我ながら何を言っているんだと思うが、これで多少は士気は上がるだろ、あとは防御に徹して勇太たちの到着を待つだけだ。
「ジャン、あんた指揮官に向いてるかもね、悪かない演説だったよ」
「口だけは達者なんだよ、これくらいしか俺にはできねえからな」
そう俺は言うとアリュナは微笑んで座っていた椅子から立ち上がった。
「さて、ロルゴ、ファルマ、私たちも仕事をしようかね」
「おで、ユーディン守る……」
「私も頑張る、勇太たちが戻ってくれば絶対勝てるもんね」
「全員、無理すんなよ、勇太たちが帰ってくるまでの時間稼ぎでいいんだからよ」
「皆さん……すみません……よろしくお願いします」
ユーディンの言葉にアリュナが反応する。
「将来の王さんが傭兵如きに畏ってんじゃないよ、礼は後でちゃんとした形ある物で返しな」
「は……はい!」
アリュナたちが出撃すると、敵軍の姿が目視できるまで近づいてきた。やはりとんでもない数だ、あれが襲いかかってくるのかと考えると背中に嫌な汗をかく。
勇太、リンネカルロ、早く来いよ、長くは持ちそうにないからよ……
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