第105話 防衛戦/アリュナ

「ロルゴ、敵の部隊がきたよ、あれの正面に移動して止めな」

「アリュナ……わかった……」


「ファルマ、動きの止まった敵から狙い撃つんだよ、動いてる敵なんてあたりゃしないんだから」

「うん、了解〜」


ロルゴの乗るガネーシャの防御能力はかなりのものだ、敵のアローなどの遠距離攻撃は弾き返し、剣や槍などの近接攻撃も、まともにダメージを受けているものは無さそうであった。ロルゴが止めた敵は上空からファルマがアローで狙撃していく、命中精度も高く、ファルマのアローは敵機の弱い部分を的確に狙っていて、攻撃力もかなりのものであった。


私はロルゴの止めきれなかった敵機を狙い、撃破していく。


ロルゴの壁を越えて四機の魔導機がライドキャリアに向けて突撃してきた。ベルシーアを低い体制にして力を貯めると、突破してきた敵機に狙いを定め一気に加速して接近する。体を捻り、回転しながら敵機の中に突入すると、回転の勢いを利用して剣を振り、一気に四機の魔導機を分解する。


さらに三機の敵機がロルゴを突破して、次はベルシーアに向かってきた、先に邪魔な存在を排除しようとしたみたいだ。


私は双剣の右の剣で正面の敵機の首元を貫き、左の剣を水平に振り、もう一つの敵機の首を飛ばした。首元を貫かれてこちらに倒れてきた機体を蹴り上げて排除すると、後ろにいた最後の一機を、両手の双剣をクロスさせて機体を真っ二つに両断した。


しかし、私たちは中央の位置にいるのだが、これだけの敵機が味方の防衛線を突破してくる事を考えると、最前線の状況は決して良いものではないだろう、私も前線に出れればいいのだけど、ロルゴとファルマだけではここを守るのは難しいように思う。


「ジャン、前線の味方の状況はどうなっているの」

「頑張ってるが、やはり敵が多すぎる、どんどん戦況は悪化しているな」


「勇太たちはあとどれくらいかかりそうなの」

「わからん、移動に集中しているのか連絡が取れなくなった」


どうする……ここをロルゴとファルマに任せて前に出るか……


私が悩んでいると、十機ほどの魔導機がこちらに近づいてきた。一瞬緊張したが、どうやら敵機ではないようだ。


「無双鉄騎団の方々、カロン公爵の命令で、ライドキャリアの防衛に参りました」


カロン公爵の方もカツカツだろうに、それでも救援の部隊を送ってくれたようだ。


「それは助かるわ。ロルゴ、ファルマ、この人たちとライドキャリアを守って頂戴、私は前に出て敵を押し返すわ」


「わかった……ロルゴ……頑張る」

「アリュナ、気をつけてね」


前線が崩壊してはとてもライドキャリアは守りきれないだろう、私はこの場を任せて前線に出ることにした。



前線の状況は私の想像より悪化していた。敵機は味方の数より遥かに多く、少ない味方どうしで支え合いながらなんとか防衛している状況であった。


私はルーディア集中する──全ての敵を私が倒す気持ちで、ベルシーアとシンクロする──瞳を光らせ、ベルシーアが私の気持ちに応えてくれる。


無駄な動きはするな、敵は一撃で沈めろ、効率良く動き、なるべく早く、なるべう多くの敵を打ち倒せ──自分に暗示をかけるように頭の中でそう呟くながら、ベルシーアの操作球に動きのイメージを伝えた。


高速移動しながら踊るように剣を振るう──敵機一体を1秒もかからず、屠りながら移動して、味方の魔導機を救っていく。高速で回転しながら剣を振るう姿を見て、味方からまるで剣の竜巻だと声が上がる。


調子良く敵を倒していき、戦況が良くなってきたと思った矢先、ベルシーアに強烈な衝撃が走った。私とベルシーアは大きな壁にぶち当たったような感じで、後方に弾き飛ばされる。


「くっ……な……なんだい一体!」


見るとそこには壁があった──いや、違う、壁と思っていたのは魔導機の胴体だ……それも今まで見た事ないほど巨大な魔導機であった。


「チッ……なんだい、この化物は……」


巨大な魔導機は両手に大きな棍棒を持っていて、それを振り回し周りの味方をなぶり殺しにしていく──大きな図体の割には動きが早い、しかも装甲は厚そうでパワーもかなりのものだ、一体どんなルーディア値の奴が動かしてるんだい……


味方もその巨大な敵に驚きと恐怖で混乱しているようだ、こいつの存在はヤバイ……そう感じた私はすぐにこの化け物の排除に動く。


振り回す棍棒の攻撃を掻い潜りながら、巨大な魔導機の後方に回り込み双剣で足を攻撃する──


カキッーン──


見た目通りの分厚い装甲と防御能力を持っているようで、マガナイト製の双剣が簡単に弾き返される。


「これは厄介だね……」


今まで戦った事無いタイプの敵に、どう攻めればいいかすぐには思いつかなかった。

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