第101話 解放と拘束
「敵機の殲滅完了、全ての敵魔導機の行動停止を確認しました」
フェリ・ルーディアは無感情にそう報告してくる──見ると、地上には無数の魔導機が破壊されて転がっている。俺はヴィクトゥルフを飛行させて、ナナミたちが待機している森へと向かった。
ナナミたちと合流すると、全てを見ていた護衛騎士のライダーたちが魔導機のまま駆け寄ってくる。
「奇跡を見せていただきました! あれが噂に聞くヴィクトゥルフの光の矢なのですね! まさに貴方は英雄ルザークの再来! 共に戦える事を誇りに思います!」
「それより敵はほとんど倒れた、今なら基地を制圧するのも簡単だろ、捕まってる味方を助けよう!」
「はい!」
ライダーたちはそう元気よく返事をすると、陣形を組んで基地へ向かう準備を始めた。
「ナナミ、俺は先に基地にいって残りの敵を倒しているから、みんなを頼むよ」
「うん、わかった、油断しないでよ、勇太」
ナナミに皆を任せると、俺は、また飛行して基地へと向かう。やはり飛べるのは便利だ、あっという間に到着する。
マルダン基地には一桁の魔導機が守備に残っていた。しかし、さっきの戦いを見ていたのか完全にビビっていて、ヴィクトゥルフの姿を見ると武器を捨てて逃げ始めた。
俺は他に敵がいないか基地をまわりながら、仲間たちが到着するのを待っていた──そこへ大きな声で俺を呼ぶ声が聞こえる。
「勇太! 勇太ここですわ! そっちじゃありません、上を見なさい!」
言われた通り上を見ると、塔のような建物のバルコニーから、手を振りながらこちらに声をかけているのはリンネカルロだった。
「あれ、リンネカルロ、どうしてここにいるんだ?」
「その話は後ですわ、ヴィクトゥルフを使って私をここから下せますか? 部屋の外には兵士が見張っていますから、こちらから出たいのです」
塔は高く、ヴィクトゥルフが手を伸ばしても届きそうにない、仕方ないのでゆっくり飛行してリンネカルロのいるバルコニー近くまで行った。
「よし、指に掴まれリンネカルロ」
手を伸ばしてそう言うが、高い所が怖いのかリンネカルロは首を横に振る。
「無茶言わないで、この高さで落ちたらどうするのですの!」
「じゃあどうすればいいんだよ」
「操縦席にもう一人くらい入れるでしょ」
確かに少しくらいのスペースはあるが、飛行しながらハッチを開きたくないぞ……
「フェリ! 外にいる仲間を操縦席に入れたいけど、飛行しながらハッチを開くのは可能か?」
「……フェリと呼ばれるのはどれくらいぶりでしょうか──はい、可能ですが、風などの影響で少しでもバランスを崩すと危険ですので、建造物の凹凸を利用して、機体を固定してからハッチの開閉をすることをおすすめいたします」
「なるほどな、わかったやってみる」
フェリが言うように、塔の突起部分に足をかけて、機体をうまく固定する。そしてハッチを開き、リンネカルロが落ちないように手でサポートしながら操縦席へと誘導した。
操縦席までくると、リンネカルロは勢いよく中に入り、俺に抱きついてきた。
「おい、操作球から手が離れるだろ、ちょっと離れろよ」
「し……仕方ないですわ、こうしないと、この狭い操縦席に二人は乗れませんわ」
「そんなことないだろ、そっちちょっとスペースあるじゃん」
「いいえ、無理ですわ、そんなことより早くエミナたちを助けに行きましょう」
「エミナも捕まってるのか?」
「そうですわ、ついでにアーサーも捕まっています」
「そうか、なら早く助けてやらないとな」
ちょっとリンネカルロに密着されて操縦しにくいけど、俺はヴィクトゥルフを動かして地上に降りた。
丁度、地上に降りた時、ナナミたちが基地へと到着した。ナナミはさっき俺と対峙した、なんとか将軍が乗っていた魔導機をなぜか引きずってやってきた。
「ナナミ、どうしたんだソレ?」
「あっ、みんなが偉い人が乗っている将軍機だから捕虜にしようって言うから持ってきた」
「あっ、それはオルレアのガデルアですわね」
リンネカルロがその魔導機を知っているようでそう言う。
「えっ、リンネカルロがどして勇太と一緒にヴィクトゥルフに乗ってるの?」
「それは後で説明しますから、とりあえずその中にいる人物を叩き出してください」
ナナミはリンネカルロにそうお願いされ、魔導機のハッチを強引にこじ開ける。将軍機はヴィクトゥルフの攻撃でボロボロになっていたので、ハッチは簡単に外れた。
「ぐっ……何が起こったのだ! ひ……光の雨が……」
中にいた男は、混乱しているのかそう叫びながら転がるように操縦席から出てきた。
「オルレア! どうですの、自分がどれくらい小さな男かわかったかしら」
リンネカルロが出てきた男にそう言い放った。
「り……リンネカルロ……私はどうなったのですか……お前の思い人はいったい何者なのですか!」
「貴方は負けたんです、たった一撃の攻撃によって倒されたんですわ、これでよくお分かりになったでしょう」
「私が負けた……私はクルス司令に認められた男なのに……うっ……」
男は力なくその場に崩れ落ちた──そこに仲間の兵がやってきて男を拘束する。憔悴した男は何かに絶望したのか口をパクパクさせて何かを言っているようだが、それは声として発することはなかった。
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