第100話 ヴィクトゥルフの光の矢
流石に一度に相手にするのはキツイと判断した俺は、移動しながら数を減らす事にした。一般の魔導機を凌駕する高い機動力を生かして、囲まれないように移動しながら、近づいた敵機を一機ずつ破壊していく。
しばらくそんな感じで戦っていたのだけど、数が多くていくら素早く動いても逃げ道がだんだん無くなってくる──そんな時、外部出力音で増幅した大きな声で何かを喋りながら近づいてくる魔導機がいた。
「おい、貴様! そこを動くなよ! 私は魔導機第3軍団の軍団長、オルレア将軍だ! 男としての器をかけて、尋常に勝負しろ!」
いや、なんか痛そうなのが来たな……
「尋常にって……これだけの数で攻撃してきてよく言うよな」
「ふっ……数も力、これが私とお前との差だ! もし、土下座してお願いするなら、一騎討ちでの勝負を受けてやってもいいぞ!」
「いや、いいよ、面倒臭そうだし、土下座するのも嫌だし、その他大勢と一緒にかかってくれば?」
「なっ、この私をその他大勢と一緒にするとは……いいだろ、望み通り大勢で嬲り殺しにしてくれるわ!」
そこで俺は気がついたのだけど、その魔導機のライダーとの会話に気を取られている隙に、周りを完全に敵の魔導機に包囲されていた……ちょっとヤバイぞ……いくらなんでもこの数を一気に相手するほどの体力は無い。
だけど戦うしか選択肢がないのも事実であった、俺は本気になる為にルーディア集中モードに入る……意識を落ち着かせて、どんどん集中の闇の中に心を沈めていく……奥へ奥へ、いつもよりより深く……
光……意識のずっと奥に光が見えた……俺はそこに手を伸ばした──そして何かに触れる……その瞬間、美しく透明度のある女性の声が聞こえた。
「ルーディアモードの起動を承認──状況確認の為にスキャン開始──地上全方位に敵意のある魔導機を多数認識、攻撃の回避を提案いたします」
「えっ! 誰?」
「私はヴィクトゥルフのサポートAI、フェリ・ルーディアです、早急に包囲から離脱することを進言いたします」
「いや、完全に囲まれてるのにどこに逃げるんだよ!」
「上空には敵機が確認できません」
「上空? ちょっと待て、ヴィクトゥルフは飛べるのか?」
「ヴィクトゥルフの飛行能力はSSクラスです、短時間の高速飛行が可能です」
確かにファルマのガルーダも飛べるくらいだからな、伝説の魔導機が飛べてもおかしくないか……
俺は操作球に上空に舞い上がるイメージを送った──するとグンっと重力を感じ、一気に上空へと舞い上がった。
「うわ〜! 本当に飛んだ!」
「敵機の数、およそ1000機──範囲、半径2キロ、上空からのヴィクトゥルフ・ノヴァの発動で、敵機全ての撃破が可能です、どういたしますか──」
「全部の撃破……一撃で全部倒せるのか?」
「はい、敵機の中には防御シールドを展開できる機体は確認できません、確実に殲滅できます」
「よし、それじゃあ、ぶっ放そう!」
「了解しました。マスター認証OK、機体をノヴァモードに変形します」
そう言うと、ヴィクトゥルフの機体がガチャガチャと動き出した──見てると、腕や足がパズルのようにズレて型を変えていく──
最終的に、ヴィクトゥルフは大きな主砲のような形に変形した。
「ヴィクトゥルフ・ノヴァ準備開始──ルーディアコア、アクセス──スペル『インフェルノ』詠唱開始、スペル『アースクエイク』連結詠唱開始、スペル『アクアスフィア』連結詠唱開始、スペル『テスラスパーク』連結詠唱開始──スペル『マジックブースト』同時詠唱開始──範囲選択、位置補正、照準準備完了──ヴィクトゥルフ・ノヴァ、発射準備が完了しました」
どう撃てばいいかわからなかったけど、とりあえず操作球に手を置いて、体全体から何かが発射するイメージを送った。
「四元素砲、ヴィクトゥルフ・ノヴァ発動──」
グォンッ! ヴィクトゥルフが大きく震える──そして激しい光に包まれた──
無数の光の線が地上へ放たれる──まさにそれは光の雨であった──光は地上へ落ちると、大きな爆発を起こし、次々と地上に溢れる魔導機たちをその爆風の渦に飲み込んでいった。
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