第98話 救出作戦

砦の戦いの後、移動前に少し休息を取っていたら、慌てた様子で一人のライダーが走ってきた。


「今、敵の捕虜から話を聞いたのですが、ここからすぐ近くにあるマルダン基地に、幽閉されていたリヒリア王女たちが移動されたとのことです、これは救出の最大のチャンスではないでしょうか!」


「大チャンス……そうなのか?」

「はい! 防御の高い王宮では手出しできないですが、マルダン基地はそれほど規模も大きくなく、守備する魔導機も100機ほどと十分とは言えない兵力しかいません、どうでしょう、厄介な場所へ移動される前に我々で救出しに行くと言うのは!」


凄く熱く言うそのライダーの表情は生き生きとしている、すぐにでも主人であるリヒリア王女を助けたいと言う気持ちが伝わってくる。


「わかった、100機くらいならさっき戦った数と変わらないし、サッと行って助けてこよう」

「ほ……本当ですか! ありがとうございます! すぐに皆に知らせてきます!」


そう言って嬉しそうに知らせに行った。本当はジャンたちと合流してからの方がいいのだろうけど、時間が経つと確かにまた別の場所へ移動する可能性もある、ここは少し無理しても救出した方がいいだろう。


「でも、大丈夫かな」

ナナミが何か心配事があるのかそう言ってきた。


「ナナミ、何か気になる事でもあるのか」

「うん……そうじゃないけど、何か変と言うか……」

「変ってなんだよ」

「リヒリア王女とか公爵たちって大事な人質だよね、そんなに簡単に移動させたりするのかな……しかも守りやすい王宮から、そんなに強固じゃ無い基地になんて……」


「何か事情があったんだろ、まあチャンスなんだから最大限にいかそう」

「まあ、勇太なら何があってもどうにかしそうだからそんなに心配じゃ無いけどね」

「そんなに万能じゃ無いぞ俺は……」

「万能じゃ無いかもしれないけど、実際どうにかなっちゃうのが不思議なんだよね」


ナナミの俺に対する評価が不思議の一言だと言うことはわかったところで、出撃の準備ができたとライダーが伝えにきた。みんなすぐにでも救出に向かいたいようで、目を輝かせて俺を見る。


「よし、それじゃ王女たちの救出に向かおう!」


そう言うと、歓声が上がり大きく指揮が向上した。



少し離れた場所からマルダン基地の様子を探る──ぱっと見、変わった様子はなく、警戒しているようには見えなかった。


「大丈夫です、いつもと変わらない様子ですね」


以前のマルダン基地を知っているライダーの一人がそう言う。しかし、いつもと変わらないと言う言葉がどうも引っ掛かった。


「いつもと変わらないって、ちょっと変だな」


そう俺が言うと、不思議そうに聞き返してきた。

「変というとどう言う事ですか」


「だって、今、あの基地の中には重要な人質が何人かいるんだろ? だったらいつも通りの警戒レベルってのは変だよね?」


「た……確かに……やはりこれは罠なんでしょうか……」

ライダーたちはものすごく残念そうにする……そんな顔をされると、罠っぽいからやっぱり止めようとも言えなくなった。


「よし、まずは俺一人で攻めてみるから、みんなは後方で待機しててくれ」

「そ……それはいくらなんでも……」

「いや、全員で攻めに行って罠だったら逆にどうしようもなくなるよ、俺一人ならなんとでもなるから大丈夫」


「ちょっと、ナナミも待機なの?」

「ナナミは何かあった時にみんなを守ってもらわないとダメだからな」


「もう……そうやってまた一人で無茶する……」


いや、本当に一人ならなんとかなりそうなんだよな、何しろこのヴィクトゥルフ……正直、まだ全力を出してるとは思えないんだ……



ナナミとみんなには後方で待機してもらう事にして、俺は単機でマルダン基地へと近づいた。そして基地から約1キロ当たりにくると、急激に基地の様子が変化する──どうやらやっぱり罠だったようだ……基地近くの林や死角のある場所などからもわらわらと魔導機が現れる。


その数は100機どころではなく、今まで見たことのないような無数の大軍勢だった……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る