第97話 油断/リンネカルロ
軍の準備ができるまで、私たちは作戦会議室でオーディンを奪還する作戦を考えることにした。
「マルダン基地の戦力はどれほどですか」
「あそこは魔導機100機ほどの小さな補給基地ですから、この要塞の戦力で攻めればすぐに落とすことは可能でしょう」
「五倍以上の戦力ですから、そうなりますわね」
「あの……私のセントールもそこにあるんでしょうか……」
アーサーが控えめにそう聞いてくる。
「どうですかね、オーディンの情報しか入ってきてませんので」
「そうですか……」
最悪、私のオーディンが戻ればいいのだけど、ハイランダーのアーサーも戦力には違いない、セントールがあることを小さく願う。
「それより、お連れの魔導機のライダーはこちらには来ないのですか? まだ魔導機に乗って警戒していますけど……」
オルレアはなぜかしきりに魔導機で待機しているエミナのことを気にしているようで、そう聞いてきた。
「あっ、エミナのことですわね、私も魔導機から降りて休憩すればと言っているのですけどね……」
「あっ、私が呼んできましょうか? エミナ殿は根っからの軍人気質のようですから、無理にでも誘わないと体を休めることもしなさそうですし」
「そうね、その方が良いかもしれないですわね」
そう言ってアーサーがエミナを呼びに行ったのだけど、なかなか戻ってこない、私は様子を見に、アルテミスが待機している要塞の中庭へと足を運んだ。
「だから、何があるかわかないでしょ、私だけでも魔導機で待機していた方がいいに決まっているわ」
「ですから、もうここは味方の陣地ですよ、警戒する必要はないんです」
「さっきまで敵だった人間を簡単に信用してどうするのよ、いいから私はここにいるから放っておいて!」
どうもエミナはまだ警戒を解いてないようである、確かに私とオルレアの事情を知らない人間からしたら、いきなり味方になりました、で納得するのは難しのかもしれない……
「アーサー、もういいですわ、エミナの好きにさせない」
「しかし、それではエミナ殿の休息が……」
「いいから戻ってきなさい」
「は……はあ……」
そう言ってアーサーが言い争っていたアルテミスのコックピットから降りてきてすぐに、それは起こった。
いきなり、アーサーの後ろにいた兵士が、ガツッと彼の後頭部を強打する。アーサーはそのままゆっくりと前に倒れる……
「アーサー!」
私が叫んだ瞬間、私の首筋に剣が添えられた──
「魔導機のライダー! 早く魔導機から降りろ! でなければこの首が落ちることになるぞ!」
そう叫んだのはまさかのオルレアであった……
「オルレア……どう言うつもりですの……」
「ハハハッ! リンネカルロ王女、私がいつまでも貴方だけのオルレアだと思っているのですか、貴方と違ってクルス司令官は私をすぐに受け入れてくれましたよ」
しまった……クルスはオルレアの謀反を読んで、防衛策を貼っていたのね……
「早くしろ魔導機のライダー! リンネカルロの首が飛ぶぞ!」
流石に、アルテミスが動いて私を助けるより、首元に添えられた剣が私の首を飛ばす方が確実に早い……それを十分理解しているエミナは、ゆっくりと魔導機から降りてきた。
「わかったわ、今、降りるから剣を降ろしなさい」
「それでいい、本当は魔導機のライダーが降りてから事を起こすつもりでしたが……なかなか降りないので強硬策になってしまいました」
「オルレア、貴方はすでに私に気持ちが無いのに私の思い人を聞いたのはどう言う事ですの……」
「私は嫉妬深いのです、貴方に思い人がいたらあの場で首を飛ばしていました」
私はオルレアを何も理解していなかったようですわ……そう思うと、なんとも言えない虚しい気持ちになっていた。
私とエミナ、そして気絶しているアーサーは拘束され、どこかへ輸送される事になった。
「私たちをどこへ連れて行くつもりですか」
「マルダン基地です、あっ、そうだ、オーディンがマルダン基地にある話、あれは本当ですよ、それとマルダン基地には貴方のお姉さんや、無能な公爵たちも移動されてくることになっています」
「どうして……」
「それはマルダン基地を貴方たち反乱軍の墓場にする為です、マルダン基地には1000機の魔導機軍が、貴方たちを助けにくる反乱軍を迎え撃つ手筈になっているのですよ」
「だからオーディンもそこにあるのですわね」
「そうです、貴方も誘い出す予定でしたから、それがまさか自分から捕まりにくるとはまるで喜劇ですね」
「くっ……オルレア……私は貴方を許しませんわ……」
「どうぞお好きに、今の私にはクルス司令官がいますので何も感じません」
クルス……やはりあの女狐が最大の障害になったようですわね……
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