第93話 遭遇
「敵だらけだね……どうする勇太、無理やり突破する?」
「そうだな、最悪それでもいいけど、どんどん援軍が来ると厄介だからなるべく避けて突破したいな」
「あの川の中とか進めないかな……」
ナナミは近くを流れる比較的大きい川を見てそう言う。
「川の中か、深そうだから敵からは隠れそうだけど……そういえば魔導機って水中に入れるのか?」
「そんなの知らないよ、実際に水の中に入ってみればわかるんじゃない」
「それでコックピットに水が入ってきた時が怖いな……まあ、ちょっと試してみるか」
川は深く、12mほどのヴィクトゥルフの胸の辺りまでは水嵩がある。これなら少ししゃがんで進めば問題なさそうだ。しかも魔導機はちゃんと防水になっているようで、コックピット内に水は入ってこなかった。だけど空気のことを考えたらそんなに長くは潜ってない方がいいな、魔導機の中で窒息とか洒落にならない。
俺たちはそのまま川の中をしゃがんで進む──やはり敵は川の中を移動しているとは想像もしてなかったようで、発見されることもなく敵軍が見張っているエリアを突破できた。
敵の視界から外れると、上陸できそうな場所を探す……見ると木々に囲まれていて周りから見えにくくなっている窪みのポイントを見つけた、あそこからなら安全に上陸できそうだ……水の中では外部出力音で会話することもできないので、俺は身振り手振りでナナミにその上陸するポイントを伝えた。
身振り手振りはナナミにちゃんと伝ってたようで、問題なく二人ともそこから陸へと上がる。
「周りに敵はいないようだな、ナナミ、このままあの森の方へ移動するぞ」
「うん、わかった」
森の中に入り奥に進むと、何か、金属のぶつかるような大きな音が響いてきた。
「なんの音だ……」
「これって魔導機の戦闘の音じゃないかな」
「誰か戦ってるのか……このまま進んだら見つかるな、迂回するか……」
「でも勇太、誰かと誰かが戦っているってことは、そのどちらかは敵かもしれないけど、もう一方は味方の可能性がない?」
「うっ……確かにそうだな、だとすれば見捨てるわけにもいかないか……仕方ない、ナナミ、音のする方へ行ってみよう」
俺たちは警戒しながら戦闘音の聞こえる方へと向かう──すぐに二つのグループが激しく戦う場へとたどり着いた。
二つのグループと言っても、一方は20機ほどの中規模の部隊で、一方は5機の小隊であった。数で押されていはいるけど、少ない方のグループも上手く連携して互角に戦っている。
「さて、どっちが味方だ……」
残念ながら俺とナナミには、敵味方がはっきりとはわからない……味方を識別するビーコン水晶もないし、どうしたもんか──
「どうするの勇太、どっちも似たような魔導機だし、全然味方がわかんないよ……」
「う〜ん……仕方ない、正直に話して聞いてみるか」
「えっ!? 聞くって誰に?」
「誰ってあの戦ってる連中に決まってるだろ」
「勇太ってたまに大胆で変な行動平気でするよね……」
「まあ、いいから任せろって。ナナミは何かあったら困るから少し離れて見ててくれ」
「わかったけど気をつけてね」
俺は魔導機で手を振ってナナミのその言葉に応える。
俺は戦闘している場所に行くと、外部出力音を最大にしてこう話しかけた。
「リンネカルロ王女直属の傭兵部隊、無双鉄騎団が援軍に来たぞ!」
俺は両方のグループにそう語りかけたのだが、反応は真逆であった。
「おおお! まさかリンネカルロ様の直属の傭兵部隊が我々の援軍に来てくれるとは辱い!」
そう感謝の言葉を口にしたのは少数のグループの魔導機からだった。
「小癪な! リンネカルロは王位継承投票でユーディン王子がムスヒム王子に負けたことに納得がいかず、あろうことかムスヒム王子を亡き者にしようとした大悪人、そんな悪の手下になど遅れを取るものか、返り討ちにしてくれるわ!」
これは中規模グループの魔導機からのメッセージだ、わかりやすい反応で助かるな、これで少数グループが味方だと言うのがはっきりした──後は中規模グループを倒して少数グループを助けるだけだ。
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