第94話 王族親衛隊

敵がどちらかは分かれば問題ない、俺は20機ほどの魔導機の部隊に攻撃を開始した。


集団戦を展開していた敵部隊に、加速して一気に接近する。前衛に布陣していた防御力の高そうな重量級の魔導機に拳を叩きつける。殴られた魔導機は柔らかい粘土細工のように簡単に変形して後ろに倒れた。


「ば……馬鹿な、ドデムのBランク装甲を易々と破壊しやがった」

敵の隊長機ぽい機体から、そんな驚きの声が上がる。


俺は重量級の魔導機が持っていた大きな戦斧を拾い上げ、それをぶん回しながら敵の集団に突撃する。敵機の集団は俺の動きに全くついてこれなく、振り回す戦斧に次々とその体をバラバラに破壊されていった。


戦闘が始まるとナナミもすぐに参戦して、回り込んで俺の後ろを取ろうとした魔導機二機を剣で血祭りにあげてくれる。味方の小グループも黙って見ておらず、俺の攻撃で完全に陣形が崩壊した敵軍を、一機づつ取り囲んで撃破していった。


最後に残った敵の隊長機が大きな剣を振り被り、大声で叫びながらヴィクトゥルフに突撃してきた──その剣の攻撃を片手で軽く受け止める。


「ぐっ! ば……化け物が!」


握った剣を握り潰すと、戦斧を隊長機の頭上から叩き下ろして、この戦闘を終わらせた。



戦闘が終わると、小グループのリーダーぽい魔導機が近づいてきて礼を言ってきた。

「ありがとうございます! さすがはリンネカルロ王女直属傭兵団の方、信じられない強さですね」


「いえ、それより、あなた達は……」

「はっ、申し遅れました、我々は王族親衛隊、リヒリア王女の護衛騎士でございます」

「確かリヒリア王女ってリンネカルロのお姉さんだよね、その護衛さんがどうしてこんな所に?」


「残念ながら我らが主人であるリヒリア王女はレイデマルト公爵、バレルマ公爵、テセウス公子と共にムスヒム王子によって幽閉されてしまいました。我々はリヒリア王女を助ける為に、レイデマルト公爵様の御子息にご尽力して頂こうとレイデマルト公爵領へ向かっている途中でした、そこを敵軍に見つかり戦闘になっていた次第です」


「なるほどね、やっぱりあの後、みんな捕まったんだな。俺たちもレイデマルト公爵領へ向かっているから一緒に行こうか? この後も敵に遭遇するかもしれないし」

「それはそれは願ってもない申し入れで……しかし、あの……もし、我々にお力をお貸しいただけるのでしたら、その圧倒的強さを見込んで一つお願いがあるのですが……」


「えっ、お願いって?」


「はい、我々には行動を共にしていた仲間がいるのですが、その仲間が今、近くの砦でムスヒムの軍に包囲されて攻撃されているのです。この戦力で助けに行っても返り討ちに遭うと思い、レイデマルト公爵軍から戦力を借りてからと考えておりましたが、やはり砦はギリギリ持っている状況、早急にも救援に向かいたいと思っておりました。そこで出会ったのがあなた方、あの強さであれば、包囲している敵軍を蹴散らすのも十分可能かと、どうでしょう、助力をお願いできませんか」


「そうか、俺たちも急いで仲間と合流したいと思ってるけど、そんな状況なら放っておくわけにはいかないよな──いいよ、仲間の救出、手伝うよ」


砦にどれくらいの戦力がいるのかわからないけど、これから先、少しでも味方が増えるのは絶対に良いことだと思い、軽く引き受けた。


「おおおっ! ありがとうございます! それでは早速、砦に向かいましょう!」



砦はそこから1時間ほど移動した小高い丘の上にあった。見ると確かに戦闘中のようで、ワラワラと砦の城壁に群がる魔導機の軍勢を、砦の魔導機がアローなどで応戦していた。


「包囲している敵は100機くらいかな、砦の戦力はどれくらいなんだ?」

「はい、魔導機は30機ほどですが、対魔導機用のバリスタが数基ありますので、なんとか凌いでいるようです」


「あそこにいるのが敵の指揮官機かな、よし、あの敵の本陣ぽいとこに俺たちが突撃して暴れまくるから、その間に砦の中の味方と連携して敵を殲滅していってよ」


「お二人であそこに突撃するんですか、さすがに危険では……」

「もっと厳しい状況とかで戦ったことあるし、この機体、この国の伝説の魔導機らしいから多分いけると思うよ」

「伝説の……どこかで見たことある魔導機だと思いましたが、まさかそれは我が国の国宝、ヴィクトゥルフ……あなたがどうしてその機体に……」

「いや、無断で乗ってないから、ちゃんとリンネカルロに許可貰ってるから大丈夫だよ」


「天下十二傑のお一人であるリンネカルロ王女にそこまで信頼されているなら大丈夫でしょう、それではお任せします」


と言うことでナナミと二人で敵の本陣に突撃することになった。ヴィクトゥルフだったらなんとかなるだろう、そう思ってしまうのもちょっと危険な感じがする。

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