第87話 王宮の戦い

敵の魔導機を一掃すると、ユーディンたちを取り囲んでいた兵を威嚇して蹴散らす。さすがに魔導機に歩兵が勝てるわけもないので、一目散に逃げ散った。


「よし、勇太、格納庫から出て、入り口の安全を確保してくれ」

「わかった、ジャンたちはどうするんだ?」

「今、アーサーが奥にあるライドホバーを取りに行ったからそれに乗って脱出する」


ライドホバーが何か分らなかったけど、多分乗り物か何かだろう。


格納庫から出ると、外では激しい戦いが繰り広げられていた──見ると戦っているのはナナミたちだった。


「ライドキャリアがムスヒムの兵に襲われたみたいだな……」


ナナミたちと話がしたいけどヴィクトゥルフには言霊箱もなく、あったとしても共有していない言霊箱では通信できないので、近づいて外部出力音で直接会話しないと無理であろう。


ヴィクトゥルフに気がついた敵の魔導機部隊がこちらに近づいてくる。敵の数は五機、ジャンたちの乗ったライドホバーが出てくる前に片付ける必要がある。


敵機の一機が三又の矛で攻撃してきた、それを避けると、その敵機の頭部をガシリと握り、少し力を入れるだけでグニャリと握り潰した。力なく倒れる敵機の持っていた三又の矛を奪うと、前から剣を振って攻撃してきた敵機の胴部を貫き、きびすを返すと後ろから襲ってきていた二機の敵機に連続の突き攻撃を繰り出して破壊する。


残りの二機の敵には矛を振って斬りつける──直撃した一機はバラバラに分解され、もう一機は肩から上が吹き飛んだ。


敵機を片付けて格納庫入り口の安全を確保すると、バギーのような乗り物が格納庫から飛び出してきた。多分これがライドホバーなのだろう。見るとリンネカルロやユーディンも乗っている。


「よし、勇太、このままライドキャリアまで護衛してくれ」


「わかった、少し離れて付いて来てくれ」



俺たちのライドキャリアの周りでは、ナナミたちが襲ってくる魔導機を相手に戦っている。敵機の数はかなり多い。



ライドキャリアに近づいてすぐに、バチバチという音が俺の後方から聞こえる──後ろを振り向くと、いきなりパシッと頭部に衝撃を受ける──見ると、ボウガンの折れ曲がった矢が落ちていた。


バチバチバチとさらに音が響いて、ぼんやりとボウガンを放った魔導機の姿が現れる──それはエミナのアルテミスであった。


「エミナ! 違う敵じゃない! 俺だよ勇太だって!」


「あっ……勇太なの?! その魔導機は何?」

「話は後だ、ジャンたちが乗ったライドホバーが来るから守ってくれるか」

「わかった」


ライドホバーの護衛はエミナに任せて、俺はライドキャリア周りにいる敵を一掃することにした。


さっき敵から奪った三又の矛を振り回して、ナナミのヴァジュラを取り囲んでいた敵機の部隊を殲滅すると、ナナミに話しかけた。


「ナナミ、大丈夫か!」

「えっ、勇太! どうしたのその魔導機」

「それより、ジャンたちがライドホバーでライドキャリアに向かっているから、安全を確保する為にこの辺りの敵を一掃するぞ!」

「うん、わかった」


ロルゴやファルマとも連携して、ライドキャリアの周りの敵を破壊していく──ある程度、敵を殲滅した頃、ライドホバーがライドキャリアへと到着した。


ライザが気がついたのか、ライドキャリアのハッチを開き、ライドホバーを迎え入れる。


「勇太、あれ見て、凄い数の魔導機だよ!」


ナナミが指差す方向を見ると、信じれない数の魔導機がこちらに向かってきていた、このままだとライドキャリアごと飲み込まれそうだ。


「一度撤退しよう。ナナミ! ライドキャリアのジャンに連絡して撤退するように言ってくれ!」

「うん、わかった」


俺はライドキャリアが撤退するまで敵を引きつけることにした。


俺は数えきれないほどの敵軍に向かって行く、しかし、あの数の敵とまともに戦うほど馬鹿ではない、敵軍を横切るように移動して、注意だけ俺の方へ向かわせる。


狙い通り、敵軍はこちらに向かってやってくる。その間にライドキャリアは別方向へと撤退を開始したようだ。


「勇太、ライドキャリアは撤退したよ」


ナナミがこちらに近づいてそう伝える。

「わかった、俺たちも逃げるとしよう」


追いかけてくる敵機を撃破しながら、ライドキャリアとは別方向へと向かった。

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