第81話 討伐報告

俺たちはホロメル公爵の屋敷に凱旋する時、わざと目立つように全員で魔導機で隊列を組み、野盗の魔導機の頭部を刺した槍を掲げて帰ってきた。


「ホロメル公爵、お約束通り、野盗の首を取ってまいりました」


屋敷の庭に頭部を並べて、そう報告した。


「た……確かに野盗の魔導機の頭部のようだな……しかし、なぜ頭だけなのだ、動体や、中に乗っていた野盗のライダーをどうしたのだ」


「申し訳ありません、激しい戦闘でしたので野盗は皆殺しにしました、我々無双鉄騎団は敵に容赦しませんので……鉄騎の動体全ては我々のライドキャリアでは運ぶことが出来ませんでしたので、頭部のみ持ち帰った次第です」


「そ……そうか……まあ、大儀であった、これでこの領地も平和になろう」


「お約束、忘れなきようお願いします」


「わかっておる、王位継承の投票ではユーディンに票を入れると約束しよう」


これで任務完了である、ホルメル公爵に祝勝会の誘いがあったが、本当は野盗を殲滅していない後ろめたさと、ライドキャリアにテセウス公子を待たせていることもあり丁重に断った。


「さて、うまくいったな、それでは王都へと戻るとしよう」


「あっすまない、王都に戻る前に、お金を用意するので私の実家によってもらえるか、少し遠回りだがそれほど手間はかけさせないので」

テセウス公子の願いに、ライドキャリアを操縦するジャンがニコニコとした表情で──


「ヘヘヘっ、お金を貰えるならいくらでも寄り道するぜ」


ささやかな礼金の話を聞いたジャンはご機嫌で、テセウスを客人として見ていた。


テセウス公子の実家があるカロン公爵領は、数時間ほどの寄り道で到着する。


テセウスはカロン公爵の屋敷に到着すると、少し待っててくれと言った──だけど、ジャンはそのまま逃げられるのが心配なのか──

「俺と勇太もついていくぜ」


テセウスはその言葉に特に嫌がる素振りも見せず了承した。


「テセウス、しばらく見なかったがどこにいっていたんだ」

屋敷の中でそう声をかけてきたのは白髪で威厳のある、まさに貴族という風貌の中年紳士であった。


「父上、少し社会勉強にと国を周っておりました」

「そうか、お前のやることなら間違いないと思うが……そこにいる者たちは誰だ?」

「はい、こちらは最近友人になった者たちで凄腕のライダーにございます」

「ほほう、凄腕のライダーか……それほどの者ならカロン家に仕官して貰いたいものだな」

「父上、私の友人を取らないでくださいよ」


「ハハハッ、冗談だよ、まあゆっくりして行きなさい」


そう言って中年紳士は屋敷の奥へと歩いていった。あれがカロン公爵……凄く気の良さそうな人物だな。



「約束のささやかな礼だ、受け取ってくれ」

テセウスは自室に入ると大きな袋を持ってきて、それをジャンに渡した。


「ヘヘヘッ、気前のいい男は好きだぜ俺は」


「それより、ユーディン王子との面会の件、よろしく頼むよ」


「ちょっと気になったんだけど、テセウスほどの地位の人間だったら、自分の力でユーディンに面会することは可能なんじゃないのか?」

俺が素直な疑問を言うと、テセウスは微妙な表情でこう答えた。


「私がユーディンに近づくのは色々問題でな……」

「問題って?」

「ムスヒム王子は私の義理の弟だぞ、あとは察してくれ」


なるほど、複雑な人間関係があるんだな。


「ライドキャリアに戻る前に、裏庭に寄っていいか」

「どうするんだ」

「ちょっと久しぶりなの帰宅なので挨拶にな……」


裏庭の一角に立派な石碑が建てられていた、テセウスはそこの前に立つと静かに目を閉じる──


「母上……もう少しお待ちください……必ずシュトガルの民は私が救って見せます」


どうやらテセウスのお母さんのお墓のようだ。彼の表情は悲しみと決意に満ち溢れていた……


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