第73話 弁護完了

アルレオに乗り込むと、執行人十二人と対峙する──


「我は王国親衛隊、隊長のビルケア、ルーディア値18000! 刑の執行の正当性を、その力によって示すものとする! 弁護人、名を名乗って自分の意思を示せ!」


よくわからんが自己紹介のようなものかな、俺は仕方なく同じように言うことにした。


「俺は無双鉄騎団の勇太! ルーディア値2! 彼らの無罪を、その力によって示して見せる!」


そう言うと一瞬当たりが静まり返った……そして王国親衛隊隊長が怒りだす。


「何をふざけたことを言っているのだ! ルーディア値2など、おもちゃを動かすこともできぬではないか! なぜ魔導機に乗ることができるのだ!」


いや、そんなこと言われても……しかし、今回は俺のルーディア値を知っている奴がそこにいた、御影が隊長にフォローしてくれる。


「隊長、彼の言っていることは本当です、その計測時に僕もいましたのでそれは保証します」


「なっ、なんだと守、そうか……お前が言うならそんなんだろう。しかし、ルーディア値2とは……それが本当なら今から俺たちは何と戦おうとしているのだ、戦闘にもならんぞ」


「ふっ……ルーディア値がどうとかどうでもいい! ビルケア! 早くそいつを倒せ!」


ムスヒムはどうも短気のようだ、そんなやりとりを見守るも嫌のようですぐに戦いを始めるようにそう言ってきた。


「それでは弁論を聞くとしよう、弁護人、開始の合図と共に罪人の正当性を主張せよ!」


中央にいた役人が黄色い旗を持っている、おそらくアレが振られたら戦いが開始するのだろう。


バサっと黄色い旗が振られた──その瞬間、執行人の魔導機が一斉に動きだす。俺は中央の隊長の機体に右手を上げて魔光弾を向ける、そして首元あたりを狙ってそれを放った。


ズドォオオン──放たれた魔光弾は光の帯となって王国親衛隊隊長の魔導機の首下辺りに命中した。隊長の魔導機は首回りが吹き飛び、膝をついてその場に崩れ落ちた。


何が起こったか理解できないのか、崩れ落ちた隊長機を見つめながら他の執行人の動きが停止する、俺はその隙に加速して御影の魔導機との距離を一気に詰めた。


御影も隊長の魔導機が魔光弾の一撃で戦闘不能になったのが衝撃なのか、俺が接近してもすぐに反応することができなかった──俺はそんな無防備の御影の機体を、上から叩き下ろすようにトンフォーを叩きつける。


グニャという感触がして御影の魔導機のボディーが凹み、プシュプシュと音をたててそのまま後ろにぶっ倒れた。


御影を倒され、ようやく冷静になったのか他の執行人が攻撃してきた──まずは剣で攻撃してきた魔導機の頭をトンファーで突いて破壊すると、後ろから大きな斧で攻撃した敵の攻撃を避け、回転しながらトンファーを回しながらぶち当てて頭部を吹き飛ばす。


右から接近してきた敵機の足を叩き動きを止めると、低い体勢になった敵機の頭を膝蹴りで粉砕する。二機の同時攻撃を体を捻って避けると、ボクシングのアッパーカットのように、下から突き上げるように右手のトンファーで頭部を吹き飛ばし、左手のトンファーを回転させてもう一体のボディーに強烈な一撃を与える。


最初に主力となるハイランダーの機体を倒したことで、残った執行人は恐怖と動揺で動きが鈍くなっている──普段ならもう少し戦えるのだろうが、連携もなくガムシャラに突っ込んでくる敵機になんの恐怖も感じなかった。


移動しながら体を回転させてトンファーを振り回し、近づいてきた敵機をどんどん破壊していく──気がつけば敵の残りは一体になっていた。最後の一人はすでに戦意を喪失していて後ろにゆっくり下がるだけで攻撃する意思を感じない……すでに勝負は決したと思うけど、倒さないと終わらないと思い、ビビって何もできないその魔導機の首元を、トンファーでひと突きして戦闘不能にした。


「ば……ばかな! 十二機の魔導機をこんな短時間で……しかも全員王国親衛隊の精鋭だぞ……」


驚くムスヒム王子に対して、誇らしく堂々とリンネカルロがこう言い放った。


「驚いているようですねムスヒム兄さん、残念ですけど彼は私と引き分けたほどのライダー……傭兵如きと侮ったことが誤算でしたわね」


「天下十二傑と引き分けるだと……そんな傭兵など剣聖以外にいるなど聞いたこともないぞ……」


「現実にここにいますわ。それより裁判の結果を宣言したらどうですの、群衆がそれを待っていますよ」


リンネカルロが言うように、この裁判を見ている人達が、興味津々でムスヒムに注目していた……ムスヒムはその視線に何かの力を感じているようで、渋々、こう言葉を述べた。


「ぐぐっ……べ……弁護人の主張が正しいことを認め……ここにいる者たちを無罪とする……」


ムスヒムがそう言った瞬間、群衆から大きな歓声が上がった……その中には罪なき者の家族もいるだろう、彼らを助けられて本当に良かったと思った。

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