第72話 異議あり。
まずは弁護する為の道具を取りに、ライドキャリアへと戻ってきた。アルレオに乗り込む俺を見て、ナナミが声をかけてきた。
「勇太、アルレオに乗ってどこ行くの?」
「ちょっと弁護しにな」
「弁護?」
「そうだ、罪のない人が殺されそうになってるから助けに行くんだよ」
「ええ〜じゃあ、ナナミも一緒に行く〜」
「いいけど、ちゃんとした正式な戦いみたいだから見ているだけだぞ」
「そうなんだ、ナナミも罪のない人、助けたいな……」
結局、ナナミはファルマを誘って俺の弁護を見学しにきた。二人とも俺が負けるとか微塵も考えてないようで、楽しそうに群衆に混ざりこちらを見ている。
弁護する場所は広場の近くの広い空き地で行われることになった、そこで待っていると、相手となる執行人の魔導機が、ムスヒム一行と一緒にやってきたのだが……
「ちょっと待って! どうして十二機もいるんだよ!」
執行人の魔導機がズラリと俺の前に並んでいる……その魔導機の前にはそれを操縦するライダーも綺麗に整列していた──威圧するその姿に、流石に焦って抗議した。
「何を言っているのだ、貴様は罪人全員の弁護をすると言ったではないか、罪人は12名、ならば執行人も12名なのは必然であろう」
確かに理屈はそうだけど、どうして同時に戦う必要があるのか……これにはリンネカルロも納得いかないようで抗議してくれた。
「ムスヒム兄さん、その理屈はいくら何でも酷いですわよ、でしたらこちらも弁護人を増やしますわ」
「ふふふっ……リンネカルロ、そんなことが許されると思っているのか、もうすでにそいつは全ての罪人の弁護を引き受けているのだぞ。弁護人は罪人一人に対して一人という決まりはお前も知っていよう、一度受けた弁護は撤回もできぬのにどうするつもりだ」
「くっ……そんな理屈を……」
どうやらルール的にはこの状況を覆すことはできないようだ、俺はあの十二機の魔導機と戦う覚悟をする。
「リンネカルロ、もういいよ、俺が十二機全部ぶっ倒せばいいだけだろ」
「ゆ……勇太……あの執行人の十二人は普通のライダーではありませんわ、王国親衛隊の精鋭……全員がハーフレーダー以上で、しかもあの中央の三人はハイランダーですよ」
「リンネカルロはあいつら全員と戦って勝てるか?」
「えっ! そ……そうでしたわね、あなたは私と引き分けるほどの実力者ですからね、確かに私ならあの全員と戦っても勝てます、ならばあなたにも可能でしょう、もう何も言いませんわ、あんな執行人なんて全員ぶっ飛ばしてきなさい!」
「おう! それじゃやってやるかな!」
やる気を出してアルレオに乗り込もうとした時、一番中央にいた執行人から声をかけられた。
「勇太くん、君は勇太くんじゃないのか?」
「御影……御影守か!」
「あっ、やっぱり勇太くんだ、久しぶりだね、君だけよくわからない商人に買われていったから心配してたんだよ」
髪が長くなり、前の雰囲気とは随分違ったのですぐにはわからなかったが、クラスメイトの御影守だった……御影とはあまり仲がいいわけではないが、久しぶりの再会に少し嬉しく思った。
「お前、メルタリアに買われてたのか」
「そうだよ、今はメルタリア王国親衛隊の一員なんだ、それより……もしかして今から戦う相手って君なのか?」
「そうだ、俺が弁護人だ」
「それは無謀だよ、こっちは王国親衛隊の精鋭十二人だよ、失礼だけど君に勝てる相手じゃない。今ならまだ間に合う、降参してムスヒム王子に許しを乞えば命だけは助けて貰えるかも、あれだったら僕も口添えするし……」
「悪いな御影、ちょっと悪口言ったくらいで殺されようとしている人を見捨てるわけにはいかないし、俺は負けるつもりもないよ」
「しかしだね、君のルーディア値は……」
「御影、ルーディア値が低いからなんだ? 正しいことをしようとしてはダメなのか? それに俺はお前が思っている以上に強いぞ」
「……わかった、そこまで言うならもう止めはしないよ、僕も全力で戦わせてもらうよ」
「ああ、俺も手を抜かないからな、負けても後で言い訳するなよ」
御影はそのまま振り返ることなく自分の魔導機の方へと歩いていく──二度目のクラスメイトとの戦いか……やはりあまりいい気分ではなかった……
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