第53話 巨人との別れ
ジャンとロルゴのなんともいえない特訓は夜まで続いた……
「よし、ちゃんと言えるじゃねえか」
「おで……やれるような気がしてきた……」
「それじゃあ、もう一度言ってみろ!」
「お……おでは領主だぞ……もっと言い方があるだろ!」
「そうだそうだ、その調子だ!」
ロルゴに自信が付くのは良いことだと思うけど、実際には彼の性格がそう簡単には変わるとも思えないんだよな……
「ジャン、そろそろご飯にしようよ」
ナナミの悲痛な願いにより、特訓とやらはそこで終了となった。ジャンは少し豪勢な食事を用意した、多分だけど、ロルゴとは今日でお別れということを認識してのことだと思う。
「ロルゴ、俺たちは明日には南に向かって旅立つ、だからこうやって一緒に食事をするのは最後になるんだ」
俺がそう言うと、なんとも絶妙な悲しい表情をした。
「おで……また一人か?」
「ごめん……でも、いつまでもここにいるわけにはいかないんだ」
「そうか……仕方ない……寂しいけど……勇太たちにも用事がある……」
一瞬、一緒に来るかとロルゴに言いそうになったが、彼はここの領主だ……流石に無理だよな。
その日も俺たちはロルゴの城に泊まった、明日の朝にはここを発つつもりだ。
俺たちとロルゴは寝るのを惜しんでずっと話をした……やっぱりロルゴはいい奴だ、友達になってよかったと思う。
次の日の朝──
「やだ……ロルゴ……元気でね」
「ナナミ……おではいつも元気だ……」
「ロルゴ、ちゃんとご飯食べてね」
「おで……ちゃんと食べるよファルマ……」
「無理するんじゃないよ、何かあったら連絡しな」
「アリュナ……わかったよ、連絡する……」
「領民にガツンと言ってやれよ! ビクビクしてんじゃねえぞ」
「うん……おで……頑張るよジャン……」
「えっと……まあ、元気で」
「ライザ……おで……ライザとももっと話したかった」
「それじゃ、ロルゴ、どこにいても俺たちは友達だからな」
「うん……勇太とおでは友達だ……」
ライドキャリアに乗り込み、ロルゴの城を後にする、ロルゴは俺たちが見えなくなるまでずっと手を降り続けていた……
「面白え奴だったな」
しみじみとジャンが言うと、ナナミが俺にこんなことを言ってくる。
「ロルゴも無双鉄騎団に誘えば良かったのに」
「そうだな、ハイランダーだし戦力になるだろうしな」
俺が答えるように先にジャンもそれに賛同する。
「それも考えたけど、ロルゴはあそこの領主だろ、彼には彼の役目があるだろうから」
「役目ったてな……多分、あいつには領主は無理だぞ……」
「俺もそう思うけど、領主を辞めてついて来いとは言えないよ」
「まあそうだがな……あいつは俺たちについて来いって言ったらどう思っただろうな……」
確信があるわけじゃないけど、多分、ロルゴは喜んだと思う。そう考えるとやはり誘えば良かったと後悔する。
そんなモヤモヤの残るまま俺たちは南に向かう……なんとも変や雰囲気になっていることもあり、お昼ご飯は軽く外食で済まそうと途中の町の酒場へと入った。
入って、『しまった!』と思うくらいにガラの悪い連中が多い酒場で、少し離れた席に俺たち座った。
味もイマイチで、これならライドキャリアで何か作って食べた方が良かったと思って食べていると、少し離れた席から大きな怒鳴り声のような話し声が聞こえてくる。
「お前たちはガボロの奴が誘ってた、隣の領地の略奪の仕事には参加しなかったのか?」
「行きたかったがよ、ちょうど俺の魔導機が故障しててよ、美味しい仕事だってのに残念でしかたねえよ」
「本当に美味しい仕事だよな、領主がバカなせいで家臣も兵もいなくなって、領主たった一人でいる領地なんてな、略奪し放題じゃねえか」
「それで結局、参加したのはどれくらいになったんだ」
「魔導機30機くらいだそうだ、あ〜あ、俺も行きたかったぜ」
俺たちは無言で席を立って、その話をしていた男たちに近づいた。
「おい、その話詳しく聞かせろよ」
ジャンがそう男たちに聞いた。
「ああん! なんだてめーら、喧嘩売ってんのか?」
そう凄んできた輩たちに、アリュナは容赦無く蹴りをお見舞いする、アリュナって魔導機乗ってなくても強いんだ……
「私らは、今話していた内容を詳しく聞かせろって言っているのよ……」
アリュナがナイフを抜いて輩の首元にチラつかせながらそう聞くと、震えながら男たちの一人が話し始めた。
「ここいらを縄張りにしている山賊頭ガボロって奴が……領主一人になっている領地があるって情報を持ってきて……そこの領地を襲う為に人を集めてたんだよ……」
「その領地ってここから北に行った場所じゃないのか?」
「そ……そうだ!」
やっぱりロルゴの領地のことだ……やばい! ロルゴは領民を守ろうとするはず……でも、彼の性格だと野盗相手にも戦えるかどうか微妙だ……早く助けに行かないと!
俺たちはすぐにライドキャリアに戻り、北にあるロルゴの領地へ向かった。
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