第49話 優しい巨人
「おい、ちょっと見てみろよ! カークス共和国、俺たちがいなくなってすぐ滅亡したみたいだぞ」
ジャンが町で購入した情報紙を読んで嬉しそうにそう報告する。
「やっぱりエリシア帝国に潰されたのかね」
アリュナが本を読みながらそう聞くと、ジャンは満面の笑みでこう答えた。
「エリシアからあの大陸最強ライダーがご登場だとよ、そりゃカークスなんて一溜まりもねえだろうな」
「ユウトだね……あれこそ本当の化け物だよ……」
「アリュナ、知ってるのかよ」
「前に縁があってね……絶対に戦いたくないと思った」
「勇太でも負けそうなのか?」
「……わからない……ユウトの絶対的な強さを知ってるけど……どうしてかな、勇太ならなんとかしそうだと思っちゃうね……やっぱり惚れてるからかな」
俺の話も出てきてなんともその場に居づらくなったので、ライドキャリアの外で遊んでいるナナミとファルマの方へといくことにした。
俺たちは長い移動の骨休めに、とある森の中で休息をとっていた……森の中には綺麗な泉があり、ナナミとファルマはそこで水浴びをして遊んでいる。
「きゃーー!」
不意に悲鳴が聞こえた、あの声はナナミだ……俺は急いでその声の方へと走った。
見ると、ナナミとファルマの目の前に、熊のような大きな男が立っていた……俺はその男とナナミ達の間に飛び込んだ。
「や……やめろ!」
ちょっと震えながらその男にそう叫ぶ。
「お……おで……ご……ごめん……おどかした……ごめん……」
男はそう悲しそうにそう言ってきた……なんだ……悪い奴じゃないのか?
「えっと……何か用があるのか?」
そう俺が聞くと、男はモジモジと何かを言いたそうにしている。
「言わないと分からないだろ」
強気でそう言うと、意を決したように男は話し始めた。
「ここ……動物たくさん暮らしてる……大きな箱……入っていったの見て心配になった……おで……動物好き……大きな箱……動物殺さないか心配……」
どうやら俺たちが森の動物を殺さないか心配で見にきたようだ。
「大丈夫、俺たちは動物を殺したりしない」
そう言うと、男は嬉しそうに笑顔になった。
「おで……ロルゴ……」
「そっか、俺は勇太で、そっちはナナミとファルマだ」
「勇太……ナナミ……ファルマ……覚えた……おで……頭悪いけど人の名前だけ覚えれる……人の名前ぐらいは覚えないさいって……母さんに教えられた……」
ロルゴは見た目は熊みたいで怖そうだったが、話せば話すほどいい奴なのが伝わってきた。
「この森の動物達……前に酷い目にあってる……おで……何もしれやれなかった……だから今日は急いできた……動物守ろうと……でも……勇太たち良い人……よかった……」
「そうか、ロルゴは優しんだな」
「優しい……おで……優しいのか?」
「そうだ、ロルゴは優しいよ」
「優しい……ヘヘヘッ……おで……優しいか……」
ロルゴは俺の言葉が嬉しかったのか、ニコニコと優しいと言う言葉を何度も繰り返した。
「どうしてそんなに嬉しんだ」
「おで……昔、母さんに言われた……優しい人になれって……おで……優しい人わからなかった……だからどうやってなるかわからなかった……優しい人……おでは……」
そう言いながら笑顔だったロルゴは、今度は涙を流し始めた……
「急にどうしたんだ、何か悲しいことがあったのか」
「母さん思い出した……おでの母さんもういない……おで……母さんい会いたい……」
「私はお母さんもお父さんもいないよ……」
「ファルマも母さんも父さんもいないのか……おでの父さんも先月死んだ……だから父さんも母さんもいない……ファルマとおで……一緒だ……」
「そっか……でも、私は寂しくないよ、今はナナミも勇太もいるから」
「ファルマには勇太もナナミもいるのか……おでには誰もいない……おで……寂しい……」
「ロルゴ、どうだ、俺と友達になろうか、そうすれば少しは寂しくなくなるだろ」
「本当か! おでなんかと友達になってくれるのか! おで……こんな醜い姿だから……誰も友達なってくれなかった……おで……嬉しい……」
「じゃあ、私とも友達になろ、私もこんなに醜い姿だけど……」
「ファルマ醜くない……おで……ファルマと友達になれる……嬉しい……」
「あっ、ナナミだけ除け者にしないでよ、ナナミとも友達になろう」
「おで……おで……人生で一番嬉しい日だ……友達いっぱいできた……数えきれないほど友達できた……」
そう言うロルゴの笑顔は本当に嬉しそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます