第47話 仇は何処へ


右腕を失った私のエルヴァラは、エリシア本国からきた整備士によって修復された。壊れた部位を見て整備士は怪訝そうな表情でこう言った。

「エルヴァラのSS装甲を、どんな武器を使ったらこんな壊れ方にできるのか……」


私も敵の武器を確認できなかった、あれは一体なんだったのか……



「どうだい、結衣、動きは大丈夫かい」

修復されたエルヴァラの確認をしていると、ユウトさんがそう話しかけて来た。


「はい、問題ありません」

「そうか、それはよかった。僕はもう出撃するけど一緒に来れるかい」

「もちろん行きます! エミナの仇を討ちに……」


そう言うとユウトさんは頷いた。


カークス共和国と獣王傭兵団への攻撃は、完全な包囲殲滅作戦であった。


「一人も逃すつもりはない、捕虜も降伏も認めない完全な殲滅戦だからそう認識してくれ」


カークス共和国を包囲して八方向から攻め立て、敵軍を駆逐する。単純だが絶対的戦力がなければ不可能な作戦だったがユウトの軍にはそれを実行する力があった。



そして大陸最強のライダーの実力は本物であった、私たちは圧倒的な力でカークス共和国を蹂躙して敵の魔導機を破壊していった……カークス共和国の抵抗も最初だけで、首都まで追いやられた時には白旗を振って必死に降伏を呼びかけていた。もちろん、完全殲滅の命が皇帝から下されているこの状況で、降伏など無意味なことだった。


首都も陥落して、カークス共和国は制圧された……ほとんどの敵の魔導機は殲滅され、カークス共和国の首脳も捕らえられた。だけど、私には一つだけ気がかりなことが残っていた、あの金色の魔導機、それにその仲間の魔導機も敵軍に見当たらなかったのだ……獣王傭兵団はどこに行ったのか……


それから私の元に獣王傭兵団の団長が捕らえられたと情報が入った。


「今、その獣王傭兵団の団長はどこにいるのですか」

「首都の中央広場です、もうすぐ処刑されるみたいですよ」


私は急いでそこへ向かった……確認しないと、エミナの仇の最後を……



中央広場には二人の男が縛られていた。


「どちらが獣王傭兵団の団長ですか」

私は見張りの士官にそう聞いた。


「こちらはカークス軍の司令官です、獣王傭兵団の団長はあっちに縛られている男ですね」


私は獣王傭兵団の団長に話しかけた。

「私が誰かわかりますか」


「はぁ? 知るわけないだろ!」

「私はチルニであなた達と戦った漆黒の魔導機のライダーです」

エルヴァラの特徴を言ってそう伝える。


「漆黒……もしかして散々俺たちを痛めつけてくれた! こんな女のライダーだったのかよ! くそっ!」


「何を言ってるんですか、私たちはあなた方に敗北したじゃないですか」


「はぁ? 何言ってんだ! 俺たち獣王傭兵団はお前達に散々にやられて逃げたじゃねえか」


話が噛み合わない……どう言うこと……


「あなたの仲間に金色の魔導機はいないのですか?」


そう言うと、獣王傭兵団の団長は何か閃いたのか豪快に笑い出した。


「ギャハハハッ! もしかしてお前達を散々にぶっ倒したのって、金色、白、赤、青の四体の魔導機じゃねえのか」


「そ……そうです! それは獣王傭兵団ですよね」


「ヒャハハハッ! 面白え! これこそ墓穴を掘ったって話だな! いいか、教えてやるよ、そいつらは獣王傭兵団じゃねえよ、無双鉄騎団って傭兵団だ!」


「無双鉄騎団……」


「あいつら馬鹿みたいに強えからな! まともに張り合ってたら勝てねえと思って、俺たちはカークス軍の情報部や、他の傭兵団、現場の正規兵なんかを買収して、奴らの手柄を裏でぶん取ってたんだよ! まさか敵さんにもそれが伝わってるとわな! こりゃ傑作だ!」


その話を聞いた隣の男、確かカークス軍の司令官が大きな声でこう怒鳴った。


「ちょっと待て貴様! なんだその話は! どういうことか説明しろ!」


「言った通りだよ! ルバ要塞戦で見ちまったんだよ! 無双鉄騎団は化け物ばかりの最強の傭兵団だ! あんな奴らと正面から張り合えないから裏でコソコソやってたんだよ! 司令官、馬鹿だったな! あいつらを追い出してなかったら、あんたもこんな無様なことになってなかったぞ! ギャハハハハハ!!」


「き……貴様!! お……俺も騙してたんだな!」


「もう遅いんだよ! あいつらはどっかにいっちまったしな! ふたりで大人しく処刑されようや」


「ふざけるな! 貴様のせいで……俺には妻も子もいるんだぞ!」

「それは残念だな、見る目がなかった自分を恨みな」


「くっ……無双鉄騎団のあのふざけた撃破数は本当だったのか……」

「あいつらにバトルレコーダーを改竄する技術なんかあるかよ、それも俺が広めたデマだ」


「なんてことだ……俺は……俺はそんな化け物みたいに強い奴らを……」



「そろそろ処刑の時間です」


冷たく、淡々と処刑担当の士官はそう言った……処刑方法は火あぶり

だそうだ……流石にそんなのは見たくないのでその場を後にした。


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