第44話 強敵
「よし! これで十機目!」
今回の戦いも武器はダブルスピアにしてみた。敵の攻撃は避けることが多く、防ぐ機会があまりなくなったので殲滅力を優先したのだが、やはりサクサクと敵を倒せてストレスフリーで良い。
「勇太、調子いいみたいだけど油断しない方がいい、この敵、今まで戦って来たチラキア軍と違って動きに無駄がないし、連携や統制が取れててかなり強いよ」
「確かに……俺の攻撃も何度か避けられたりしたからな……」
「まあ、それでも油断しなければ私たちの敵じゃないけどね」
アリュナの言うように、そんな強敵の部隊にも目に見えた苦戦はなく、ナナミやファルマも次々と撃破数を増やしていく。
そんな順調な戦いの最中、長距離通信であの嫌な声が聞こえて来た。
「ガガ……ガ……た……助けてくれ! え……援軍を要請する! 東にとんでもない強い部隊がいるんだ! 何やってるんだ、無双鉄騎団! 早く助けにこい! いや……た……助けてください! ザザ……」
獣王傭兵団の団長の声だ……切羽詰まっていて、なり振り構わず助けを求めている。
「悪いがこちらからは距離があり、救援は不可能、どうぞ」
俺は冷たくそう返信した。まあ、事実だしね。
「くっ……前の戦いで援軍に来てやった恩を忘れやがって! ぐっ……獣王傭兵団は戦略的撤退をする! この戦いに負けても俺たちのせいじゃねえからな! 救援にこなかったお前たちが悪いんだからな!」
「どうぞ、勝手に逃げ出せよ」
もう相手にするのも嫌だったのでそう返事したのだが……
「あらら、あの感じだと、この戦いに負けらたウチらのせいにしそうだな」
アリュナにそう言われて俺もそう思ってしまった。しまったな、もう少しやんわり言えばよかったかな……いや、どう言っても一緒だろ、そう思い直した。
気を取り直して、残りの敵の殲滅に取り掛かった。その後も多少の抵抗を受けたけど苦戦するまでではなく、次々敵を撃破していき、最後の敵をファルマのアローで撃ち抜いて殲滅が完了した。
「よし、殲滅完了だな、次はどうしよう、少し休んだら中央に向かおうか」
「そうね……とりあえずは休憩しましょう、東に強い部隊がいるみたいだし、万全の態勢を整えましょう」
少し休みながら飲み物を飲んだり、携帯食で食事を取っていると何か胸騒ぎのような……変な感覚に襲われた……
「みんな……ちょっと待って……何か来る……妙な感じだ……」
その意味不明の感覚だが、他のみんなは感じていないようだ。
「どうした、勇太、何を感じてるの?」
「ナナミも何も感じないよ……」
「えっ、私も……わかんないな……」
最後にファルマがそう言った瞬間、森から十機ほどの魔導機が飛び出して来た。
「きたぞ! 早い!」
敵の動きはかなり早かった……特に漆黒の機体は今まで見たことないくらいのスピードでこちらに接近してくる。
漆黒の敵機はナナミのヴァジュラに急接近して細身の武器で攻撃を開始した……さらにヴァジュラには紫の機体が後方から襲いかかる、そちらも漆黒の機体ほどではないが、かなりのスピードだ、ナナミがやばい! 俺はすぐに手助けしようと動こうとしたが五体の敵機がその行手を阻む。
アリュナも俺と同じように五体の敵機に絡まれていて動けなくなっていた。
「ファルマ、上昇してアローでナナミを援護! ナナミ、こちらを片付けるまで持ち堪えてくれ!」
「うっ……うん!」
強敵二人を相手に、ナナミは互角の戦いを見せていた、逆に言えばトリプルハイランダーのナナミ相手に互角に戦える敵って……
こちらを早く片付けないと……俺はダブルスピアで近くの敵機を貫く、不意を突かれたのもあり、簡単に串刺しになる。アリュナもこの集団の危険性を感じたのか、急いで周りの敵を片付け始めた。
しかし、さっきと同じようにこいつら並の敵じゃない、簡単に倒せそうにないが……
ダブルスピアで斬りつけると、右手を犠牲にしてそれを受ける、その隙に敵機の一体が体当たりしてくる、少しバランスを崩したのを狙って、二体の敵が剣と槍で攻撃して来た、俺はその攻撃を体を捻って避けると、体当たりして来た敵機をダブルスピアで真っ二つに斬り裂いた。
やっと二体……
仲間が切り裂かれたのに動揺したのか、一体の敵機が少し後ろに下がったので、俺はその敵との間合いを一気に詰めた、そしてダブルスピアで貫く……そんな俺のアルレオを別の敵機が後ろから攻撃して来たので、ダブルスピアをそのまま引き抜いて後ろの刃でそいつも貫いてやった。
残り一体……
最後の一機を片付ける為に加速して接近する──そいつは逃げたり避けたりしないでこちらに体当たりして来た、意外な行動に一瞬動揺して動きが鈍り体当たりをまともに受けてしまった。
くっ……しぶとい!
そのままその敵機は俺にしがみ付いてくる……それを引き剥がして地面に叩きつけると、ダブルスピアでとどめを刺した。
「きゃーー!」
ナナミの悲鳴が聞こえてゾッとする……
「ナナミ! 大丈夫か!」
「う……うん……ちょっとかすっただけ……でも、この敵、強いよ!」
ファルマのアローで援護されていても、敵二体の攻撃に晒されているナナミは防戦一方になっていた。俺はすぐにその戦いの救援に駆けつけようとした。
しかし、次に俺の目に飛び込んできたのは、紫の機体に動きを封じられ無防備になったヴァジュラが漆黒の機体の細身の剣に貫かれようとしている姿であった。
「ナナミ!」
俺はとっさに魔光弾を構えた──そしてヴァジュラに当たらないように漆黒の機体を撃ち抜くイメージを操作球に送った。
ズキューン!!
光の一線が伸びていき、攻撃体勢だった漆黒の機体の肩の部分を貫き右腕を吹き飛ばした──その反動で紫の機体もヴァジュラから離れる……その瞬間をナナミは逃さなかった、最小限の動作で右手の剣を振り、紫の機体の胴部を貫いた。
その時、俺は何かの叫び声を聞いたような気がした。それは悲しみと怒りに溢れた大きな声だった……
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