第42話 大規模殲滅作戦
何やら大きな戦況の変化があったようで、カークス軍が慌てた様子で司令室に来るように俺たちに伝えて来た。
「あれだけ酷い仕打ちしておいて、呼びつけるの躊躇しないよな」
「多分、向こうは酷い仕打ちとは思ってないんだよ」
「勇太の言う通りだね、悪気すら感じないほど頭の中は空っぽなんだろう」
そんな愚痴をジャンとアリュナと言い合いながら司令室にくると、各傭兵団と正規軍など多くの人が集まっていた。
「チラキアに侵攻していた前線の軍が全滅した……魔導機200機の大軍だったがものの数十分で全滅したとの報告が入った」
司令官はそう皆に報告した。まあ、だからなんだと思ってしまった自分が、カークス軍に良い感情を持っていないことを実感した。
「不確定の情報だが、どうやらチラキアは強力な援軍を呼んだようだ。そんな強力な部隊を放っておけばこの先危うい状況になるだろう……そこで、その敵援軍部隊を全力で叩き潰すことにした、全傭兵団とここにいる正規軍での大規模殲滅作戦を実施する」
「敵の数はどれくらいなんだ」
獣王傭兵団の団長がそう尋ねる。
「援軍部隊は魔導機50機ほどだが、チラキア軍100機ほどが同行しているらしい」
「それに対してこちらの戦力はどうなんだ」
「全傭兵団90機と正規軍150機だ」
「ふっ、楽勝じゃねえか、これは稼ぐチャンスだな」
戦力差を見て獣王傭兵団の団長がそう言うが……敵の援軍が200機を難なく全滅させているって情報忘れてないか?
「おい、勇太、まだ生き残ってんだな」
「本当、運だけはあるようね」
直志と明音が俺を見つけてそう声をかけて来た。
「まあな、運は昔からいいからな。お前たちも俺に負けず劣らず運がいいようだな」
「なぁ! 運だと! 俺たちはハーフレーダーだぞ、実力で生き残ってんだよ!」
「そうよ、ルーディア値2のあんたと一緒にしないでよ!」
「そうか? 実力者とは思えない『誰でもいいから助けて〜』なんて情けない声を聞いたもんだからな、もしかして運だけで生き残ってるのかと思ったよ」
「ど……どうしてそれをお前が……いや、そんなわけねえだろ、俺たちがそんなこと言うわけねえだろ! 誰かの声と間違ってるんじゃねえか!」
「まあ、いいけどな、それより、今回の敵はかなり強いかもしないぞ、あまり人の足を引っ張る事ばかり考えてると危ないってお前たちの団長に伝えておけよ」
「る……ルーディア値2のお前が偉そうに!」
とりあえず昔のクラスメイトのよしみで警告だけはしてやった。
大規模殲滅作戦はすぐに発動され、俺たちも戦場となる国境のチルニ地方へと向かった。
「なるべく獣王傭兵団とは別行動した方がいいね」
無双鉄騎団で作戦の話をしていると、アリュナがそう提案してくる。
「だな、あいつらは信用できない、カークス正規軍も信用できんから単独で動いた方がいいだろな」
「俺もそう思う……一緒に戦うのは無双鉄騎団の仲間だけで十分だよ」
「ナナミもみんなと一緒なら安心だな、他の人たちはナナミたちを馬鹿にしてるから嫌だ」
「私も……みんなと一緒ならそれでいい」
全員一致で、今回の作戦は無双鉄騎団の単独での行動が決まった……本当なら単独行動の方が危険だと思うけど、現状だとそっちの方が安心できるってのも妙な話だ。
「勇太、今回は魔光弾はいざって時の為に取っておいた方がいいね」
出撃準備をしていると、アリュナがそう助言してくる。
「そうだな、撃ちたい時に撃てなかったら困るよな」
確かに魔光弾は連射ができないので、何かの時の為に使わないでいた方がいいだろ、俺もその助言に同意した。
戦場はチルニ地方の広い範囲になりそうだった……カークス正規軍が中央から侵攻して、他の傭兵団は東から中央に進むと情報が入ったので、俺たちは迷わず西から侵攻するルートを選んだ。
「おいおい無双鉄騎団、ビビってそんな隅っこに行くのか」
言霊箱の長距離チャンネルで獣王傭兵団の団長が嫌味を言ってくる。
「どこかの傭兵団と一緒だと怖いんでね、悪いけど単独で行動させてもらう」
ジャンがそう返信するとさらに嫌味な感じの言葉が返って来た。
「怖いのは敵の援軍だろ、まあ、大人しく隅っこで震えてな」
その言葉は返信せずにジャンも無視した、今回は距離もあるので獣王傭兵団に何かあっても助けることはできないだろうし助けたくないってのが本音であった。
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