第40話 任務の結果

ほとんど俺たち無双鉄騎団が制圧したはずの国境の町の奪還作戦は、なぜか獣王傭兵団の活躍で奪還したことになっていた……


「どう言うことだよ! 俺たちが敵をほとんど倒してるんだぞ! バトルレコーダーを確認すればわかるだろ!」

ジャンが怒りの抗議を、カークス軍の司令官にぶつける。


「ふっ……お前たちはバトルレコーダーの数値を改竄する技術があるようだからな、そんなのは信用できん」


「どうやってバトルレコーダーなんて改竄できるんだよ、そんな話聞いたこともねえよ!」


「我々もそんな方法などには興味はない、だが、そもそも今回の撃破数も221機などと現実ではあり得ない数字だったのだぞ、現場の下士官からは敵の総数は100ほどだったと聞いているのに矛盾しているだろ! 改竄して嘘を付くならもっと現実的な数字にするんだったな」


「そもそも単独の任務だったのにどうして獣王傭兵団が援軍に来てたんだよ! おかしくねえか!」

「それは現場の下士官が気を利かせたようだ、お前たちだけではあまりにも可哀想だと思ったそうだ」


「誰がそんな余計ことしろって言ったんだよ!……チッ……それより、成果報酬はどうなるんだ」

「今回も獣王傭兵団の活躍があったと言うことで保留だ、次の作戦で証明するがいい」

「なんだよそれ! 納得できるかよ! 勇太、お前も何か言ってやれ!」


「……ジャン……何を言っても無駄だよ、ここは引き下がろう」

「しかしよ! 金が入らねえんだぞ!」

「いいんだ、次で証明するればいい、だけど司令官さん、次の任務で俺たちの力を証明したら、今までの撃破数をまとめて払ってもらいますからね」


「ふんっ、もちろん証明できれば払うとも、存分に頑張ってくれたまえ」



かなりイライラとしながら俺たちは自分たちのライドキャリアへ戻って来た。


「勇太! ちょっとお人好しすぎるぞ!」

ジャンの怒りはまだ治らないようだ。


「俺の国にこんな言葉があるんだ……『仏の顔も三度まで』てね、次も同じような結果ならカークスは見限って次に行こう」

遠くを見るような真剣な表情でそう言うと、ジャンも渋々黙った。


「面白い言葉だね……四度目は無いってことだね、まあ、そうした方がいい、ちょっと獣王傭兵団とカークス軍の裏で何かあるみたいだしね、国境の町での援軍のタイミングはおかしすぎる」


アリュナが言うように、俺たちを貶める何か力が働いたように思える。本当なら今回で見限ってもいいくらいだけど、日本の古い言葉に従って最後にもう一度だけ機会をやることにしたのだ。



その日は、俺たちだけで祝杯をあげた……勝利したのは間違いないし、誰にも認められなくても自分たちでそれを知っているから。


祝杯と言っても、ナナミとファルマはお子様なので果実ジュースで乾杯して、俺は軽いお酒を飲まされた……この世界では16歳で成人らしいので、俺はギリギリ飲める年齢だそうだ。


「たくよ! なんだよ獣王傭兵団って! 俺たちの方が百倍強いってんだ!」


「なんだよジャン、お前が一番怒ってるよな」

「当たり前だ! 俺はただ働きが一番嫌いなんだよ!」


そんなジャンの怒りに対してアリュナは冷静な表情で大人なお酒の飲み方をしながら……


「確かに収入はないけど、それよりもっと有益な物を私たちは手に入れてるよ」

「なんだよ、金より大事なものか?」

「まあ、ある意味ね」

「でっそれはなんなんだ」

「戦闘の経験だよ……二回の大きな戦闘で、私たちの技量は大きく向上している……それは傭兵団としては財産となると思うけど」


「確かにそうだけどよ……金も欲しいって……」


「まあ、カークスがダメなら次で儲ければいいだろ、国はいっぱいあるんだから」

「勇太……お前ってポジティプだよな……」

「それは昔からよく言われる」


「さすがは私が惚れた男だよ、それくらいドンと構えてくれないとね」

「へんっ、俺がなんかケチな小さい男みたいじゃねえか」


「実際にそうでしょ、まあ、あんたみたいなタイプもいないと破産しそうだからいてくれて助かるけどね」


「ふんっ、まあいいけどよ、それより、俺の育てた肉誰か食ったか?」

ジャンが肉を焼いている鉄板を見てそう言う。


「な……ナナミ食べて無いよ!」

「ほほう……俺はよく焼いた肉が好きだから端っこで大事に育てて焼いた肉をナナミが食べたんだな……」


「だから食べてないって!」

「嘘付くなこの食いしん坊が!」


ナナミとジャンの肉の取り合いの話は無視するとして……とにかく、カークスでの活動は次で最後になるかもしれない……あの司令官の調子だとその可能性は高いかな……まあ、そうなっても良しとしよう、アリュナの言うように俺たちは経験値と言うお金より大事な物を得ているから……

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