第39話 国境の町の制圧

奪還する国境の町には凄い数の魔導機が駐屯していた……


「100どころじゃないわね……300はいるんじゃないの……」


まずは偵察で町の様子を探っていたのだが、情報よりかなり敵の数が多そうだった。


「やばいかな」

「いえ、ハイランダーの機体はいないようだし、戦力的には問題なさそうだけど……」


「ほとんどの機体はチラキアの汎用機のバーボンですね、バーボンの性能は起動ルーディア値1200、最大出力8000、装甲Fランク、機動力Gランクで軍用魔導機の最低クラスの性能ですから……私たち無双鉄騎団なら文字通り無双できると思う……」

ファルマが敵の機体を見てそう情報をくれた。


「さすが魔導機マニアのファルマだ、情報ありがとう」


そう俺が礼を言うと、ファルマは顔を赤くして照れた。



攻撃を開始する為にライドキャリアに戻って出撃の準備をしていると、アリュナが声をかけてきた。


「勇太、ちょっとこの武器を使ってみないか」

そう言って見せてきたのは両端に大きな刃が付いている槍のような武器だった。


「それは?」

「ダブルスピアだよ、今回は敵の数が多いからね、攻守のバランスが良いトンファーより、殲滅力があるこの武器の方が合っていると思うのだけど、どうかな」


「なるほど、わかった使ってみるよ」


アリュナのおすすめで俺はトンファーからダブルスピアに装備を変更した。



作戦は要塞戦の時とあまり変わらず、俺とアリュナとナナミで敵に突っ込み、ファルマが上空からポンポンとアローを撃つと単純なものだった。これを作戦と呼んでいいのかすら怪しいが……


接近に気がついた敵の魔導機が一斉に動き出す──俺たちは一気に加速して敵の集団に突っ込んだ。


ダブルスピアをクルクル回転させながら敵の機体を斬りつける──ダブルスピアの刃が触れるだけで敵の機体はスパッと斬り裂かれ、タイミングが良ければ真っ二つに分断される……


「凄い切れ味だな……」

「いや、普通はそんなに斬れないわよ……おそらくルーディアの補正効果だと思うけど……やっぱり勇太のはルーディア値は気になるわね……」


「ルーディア値って攻撃力にも影響するんだ」

「そうよ、魔導機の全ての能力に影響しているのよ」


「そうなんだ」


と、こんな会話をしながらも俺たちは敵をなぎ倒していた……ファルマの言うように、文字通り無双状態である。


ファルマのアローだが、前より格段に連射スピードと精度が上がっている……下手すると一番撃破数を稼ぐ勢いだ。ナナミの剣技も大きく向上している、踊るように戦うスタイルはアリュナのを参考にしているのかリズム良く敵を斬り裂いていく。


戦闘開始から1時間──敵の半数以上を戦闘不能にすると、こちらの力に脅威を感じたのか敵の攻撃が鈍くなってきた。


「さすがにこれだけ無双すると、敵さんもビビり始めたようね」

敵の動きの変化を見てアリュナがそう言う。


「もう少し倒せば逃げそうだな」

「ナナミ、もう疲れたから逃げてくれると助かるな」

「私も疲れた……」


ナナミとファルマの言うように、いくら無双状態と言っても疲労は蓄積される、1時間も戦えばそりゃ疲れるよな。


「よし、もう一踏ん張り頑張って撤退に追いやろう!」

俺の言葉に、みんな良い返事をしてくれた。


「お〜う!」


と、ビビっている敵に攻撃を再開したのだけど……


さらに多くの敵を撃破して、撤退寸前のその時、東側から凄い勢いで近く魔導機部隊がいた。最初は敵の増援かと思ったのだが、その魔導機に見覚えがある。


「どうして獣王傭兵団が出てくるんだ」


そう、その部隊はあの獣王傭兵団だった……


「援軍要請に応じて来てやったぞ!」


獣王傭兵団の団長がそう言うが、援軍など頼んでない。

「いや、援軍なんて要請してないけど」

俺がそう言うと、意外な言葉が帰って来た。


「お前たちからではない、同行しているカークス軍の下士官からの要請だ」

「はぁ?」


どうやら同行して、後ろで待機しているカークス軍が獣王傭兵団に援軍を要請したみたいだ……なんだよそれ……


「ちょっと待て、今回は俺たち無双鉄騎団の単独任務だ、援軍なんて必要ない」


すでに勝負は付いているのに本当に援軍なんていらない。


「ふっ、ルバ要塞戦では助力の必要のない我々を助けるフリをして獲物を横取りしたお前たちがそんなこと言う権利などない!」


いや、いや……あの時、助けなかったらあんたらやばかったろうに……


そんなバカらしいやり取りをしていると、獣王傭兵団の登場でさらに劣勢になると判断した敵軍は、すぐに撤退を始めた……

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