第38話 高すぎる成果

作戦終了後、防衛の為に移動してきた部隊と入れ替わりで、俺たちはカークス共和国の首都へと帰ってきた。


すぐに軍司令部に呼び出されて、要塞戦の活躍を感謝されると思っていたのだけど……


「バトルレコーダーの撃破記録を見せて貰った……素晴らしい撃破数だ、しかし、これが本当の数字ならな……」


「どういう意味ですか」

思わず俺はそう聞いていた。


「他の傭兵団の話では、君たちは他の傭兵団の手柄を横取りし、しかもバトルレコーダーを不正に操作して撃破数を上乗せしていると報告が入ってるのだよ」


「そんな馬鹿なことしてませんよ、誰がそんなこと言ってるんですか」

「ふっ……だがな、あまりにも撃破数が多すぎるんだよ、なんだこの撃破数152というふざけた数字は……無双鉄騎団はたった四機だと聞いているのだがな……」


「四機でその数の敵を倒したんですよ、要塞を制圧したのが何よりの証拠でしょ」


「それは獣王傭兵団の活躍で制圧できたと報告を受けてるのだがな」


「はぁ? 獣王傭兵団は早々に苦戦してほとんど役に立ってませんよ」


「ふんっ……現場の指揮官や他の傭兵団の話とは違う意見だな……まあいい……どちらにしろ、君たちの撃破数をこのまま信じることはできない」


「ちょっと待てよ、じゃあ、成果報酬を貰えないってことか?」

お金の話になると敏感なジャンが必死の形相で尋ねる。


「今のままでは支払うことはできないが、一つ提案がある」


「なんだよ、提案って」


「君たちだけに単独の任務を与えたい、それを達成できれば、今回の撃破数も信じて報酬を支払うし、新たな任務の成果ももちろん支払う、どうだ、自分の力で証明できる機会だぞ」


「ふざけんなよ、都合のいいように利用してんじゃねえか! ちゃんと成果を払えよ!」


「やらないのか? だったら君たちとの契約は破棄だぞ、もちろん成果も払わん」


「無茶苦茶じゃねえか!」

ジャンは怒りはもっともだ、流石にちょっと酷い話だ。


「どうする勇太……」


アリュナにそう聞かれて考えたが……やっぱりその新しい任務を受けるしか無いかな……単独ってことは他の傭兵団たちに嘘をつかれてこんな話にならないだろうし……


「わかりました、その新しい任務を受けます」


「マジかよ! 大丈夫か勇太!」

「いいんだ、このまま成果を貰えないのも辛いし、どのみち新たな任務は受けるつもりだったしな」


こうして新しい任務を与えられたのだが──



「国境の町の奪還だって……」

俺の呟きのような言葉にジャンが反応する。

「奪われまくってんだなこの国、大丈夫か」


「しかも敵の数が最低でも100はいるそうよ」

「おいおい……それを俺たちだけで潰すのかよ」

「152撃破した君たちには簡単だろ、だそうだ」

「けっ! なんだよそれ、完全に俺たちのこと信じてねえな」



無双鉄騎団の単独任務と言っても、町の制圧などカークス軍の仕事もあることから、魔導機5機、歩兵500名の小規模の部隊が同行することになった。


「ほほう、君たちが無双鉄騎団か、ルバ要塞の奪回戦で不正を働いたと聞いているが、今回は大丈夫なんだろうな」


「小規模部隊の隊長が嫌味たらしくそう言ってくる」

「別に俺たちはルバ要塞戦でも不正なんてしてないですよ」

「ほほう……だが、獣王傭兵団などからそういう報告があったと聞いてるのだがな」


「俺たちの報告は信じないで、獣王傭兵団の話は信じるんだな」

ジャンが嫌味のようにそう言い返す。


「当たり前だ、獣王傭兵団とカークスは古くから付き合いがあるからな、どちらを信じるかなんて決まっているだろ」


なんとも理不尽な話をしているな……


「とりあえず、俺たちカークス軍は後方で見張っているから、さっさと敵を殲滅してくれよ、まあ、ルバ要塞戦で152の撃破数を誇った無双鉄騎団なら楽勝だろうがな」


ちょっとイライラしたが、結果でそれを証明すればいい、この場には虚偽の報告をする獣王傭兵団もいないから問題ないだろ。

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