第27話 剣闘士引退

アリュナとの戦いが終わり、俺たちは飯を食べにレストランへとやってきていた……勝利の祝いなのだが……なぜかそこには敗者の姿もあった……


「ほら〜勇太〜あ〜んして〜♡」


敗者は、べったりと俺にくっ付いて離れようとしなかった……


「ちょ……ちょっとお姉さん! 勇太が困ってるでしょ!」

そう言ったのはいつもの大人しい感じと少し雰囲気が違うナナミだった……


「あら……まあ……おませさん……妬いてるのね、あなた……でもね……私は勇太の所有物なの! そばにいてイチャイチャしてもいい存在なのよ!」


どう言う理屈だよ……


「……くっ……勇太! 私も勇太の所有物になる!」


おいおい……何を言い出すんだナナミ……


「わ……私も!」


なぜかファルマもそう言い出した……


「ちょっと待てよ……とりあえずアリュナ、そんなにくっつかれたら食べにくいから離れて……」


そう言うと、意外に素直に従う……


「それでよう、お前さん本当に勇太の所有物になるきか? 勇太は別にならなくていいって言ってるぜ」

ジャンがそう聞くと、アリュナは堂々とこう答えた。


「もちろんなるわ! 私は勇太から離れないわよ! いつまでも一緒ですよご主人様♪」


うっ……頭が痛い……


「だったら剣闘士はどうするんだ、こいつらはお金も稼いだし、もう剣闘士は辞めるつもりだぞ」

「私も辞めるわ、どうせ対戦相手もいないし……顧問としてやってきたけど面白くなかったのよね、丁度いいから引退よ」


「たく……まあ、いいけどな、ダブルハイランダーがいれば次の商売にも役に立つだろうし」


今、しれっとジャンが変なことを言ったんだけど……次の商売ってなんなんだ……それになんだこの違和感は……ちょっと黙っていられなくなり、ジャンに聞いた。


「ジャン、次の商売ってなんだよ……」

「あれ、言ってなかったか、傭兵団を作るんだよ」

「……ちょっと待て……聞いてないし、魔導機の購入が終わったらジャンとはお別れじゃないのか」

「おいおい、ここまで一緒にやってきた仲間だろ、用が済んだらポイはつれないんじゃねえか」

「いや……そうだけど……」

「それによく考えてみろよ、そこの嬢ちゃんたちにダブルハイランダーの剣闘士、それにそれを倒した勇太……最強の面子じゃねえか、これで傭兵団作らなきゃどうすんだよ」


「う……なんだかな……別にもうお金を儲ける必要もないんだけど……」

「どうしてだ? そういえばお前たちの最終的な目的を聞いてなかったな」

「ルダワンをぶっ倒すんだ……」

「ルダワン王国か? おいおい……いくら強くても一国と戦争する気かよ……だったら尚更金が必要だな」

「え! そうなのか?」

「当たり前だ、物資がなかったら戦争にもなりゃしないぞ……」

「だけど……」


その会話を聞いていたアリュナも話に入ってくる。

「勇太……流石にそれはその男の言うとおりだぞ……強いだけでは国と喧嘩はできないよ……」


そんなもんなんだ……バンバン倒して国の偉いさんに謝罪させようかと思ってたけど……どうやらそれは甘い考えのようだ……


「傭兵団って何するんだ……」

「簡単に言えば戦争だ、国に雇われて敵と戦うんだよ」

「……やっぱりダメだ、そんな危険なことにナナミたちを参加させるわけにはいかない!」

「まあ、確かにそうだな……じゃあ、最初はお前とアリュナの二人で頑張ればいい、仲間はこれから増やせば問題ないだろ」

「う……まあ、それなら……いいけど……」


なんともジャンには口では勝てないようで……うまく言いくるめられそうだ……


「やだ! 勇太が戦うならナナミも戦うよ!」

「私も……私も戦います!」


なんとなく二人がそう言うような気がしてた……

「ナナミ、ファルマ……戦争なんだぞ……絶対に危ないって……」


「だけど、ルダワンとは戦うつもりだったんだよ、ルダワンだって国でしょ、何が違うの?」

「そうだよ勇太……私たちも戦える……」


ちょっと待てよ……これもジャンの作戦のような気がしてきたぞ……二人がこう言い出すのを見越して……本当、油断ならない奴だな……


「わかった、二人とも、一緒に戦おう……だけど無理はダメだぞ……危なくなったら逃げるんだからな」


そう言うと、二人は元気よく頷いた……てか、傭兵団やるのは決まりなんだな……

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