第28話 大きな買い物
「ライドキャリアと魔導機を二体ね……ライドキャリアは私が持っているから買わなくてもいいわよ」
購入予定の対象の話をすると、アリュナがそう言ってくれる。
「いいのか、高いんだろライドキャリアって……」
「何言ってるのよ、私は勇太のモノなんだから……だったら私のモノは勇太のモノでしょ」
どう言う理屈かはちょっと理解に苦しむけど……まあ、タダで手に入るならそれにこしたことはない。
「あとね、勇太、一人、紹介したいのがいるんだけど……」
「え、誰?」
「ライザ、こっちきなさい」
そう声をかけると、ボーイッシュな女の子が駆けてきた。
「この子も仲間になりたいんだって……私のベルシーアの整備をずっとやってくれてたメカニックで、魔導機整備の天才よ」
「そうか、魔導機を整備してくれるのは助かるな……よろしくなライザ」
そう声をかけるが、ライザはむすっと怒ったような顔で俺を睨んでいた。
「……え〜と……なんかしたかな……俺……」
「……お前……嫌い! アリュナ様を誘惑するな……」
「ええ!……いや……そんなこと言われても……」
「こら、ライザ……違うって言ってるでしょ、私は誘惑されたんじゃないのよ、負けて、勇太の所有物になったんだから」
「……どうしてお前が勝つのよ! それに勝ったからって女を所有物にするなんて下品! アリュナ様を返してよ!」
どうやらこの子……仲間になりたいと言うより、アリュナと一緒にいたいだけみたいだな……
「そんなこと言われてもな……」
文句を言うならそのアリュナ様にして欲しいんだけど……
「ライザ、これはもう決まったことなのよ、それが嫌なら他に行きなさい」
冷たいアリュナの言葉にライザは、口をつぼめてなんとも言えない表情をすると、黙って作業へと戻った……その悲しい表情を見ると、なんだか可哀想に思えた……
「それより、勇太、魔導機はどんなスペックが欲しいんだい」
どうやらアリュナに魔導機販売の伝があるようで、そう聞いてきた。
「ハイランダー用の機体が欲しいんだってよ」
俺の代わりにジャンが答える。
「そうか……だけど今乗っているアルレオじゃ不足なのか?」
「いや、俺の機体じゃないんだよ、ナナミとファルマに魔導機を買いたいんだ」
「ちょっと待ちな、そこの嬢ちゃん、ハイランダーなのかい」
「まあ……」
「驚いた……そりゃ是非とも戦った方がいいね……それで正確なルーディア値は幾つなんだい」
そう聞かれてちょっと言うのを躊躇した……ナナミのルーディア値は国が動くレベルらしいからな……でも……アリュナとジャンはもう仲間だからいいか……
「ナナミは32000、ファルマは7800だよ」
「なっ! ナナミはトリプルハイランダーなのか!」
ジャンが驚いて大声でそう叫んだ……俺たちがいるのはアリュナのプライベート倉庫なので部外者には聞かれなかったろうけど……
「凄いわね……傭兵団では私が二番手だと思ったけど……」
アリュナもその数値に驚いている……
「じゃ、ハイランダー用じゃなくて、トリプルハイランダー用か、ダブルハイランダー用の魔導機を買った方がいいな……」
「そうね……あまりにも需要が少ないから値段もハイランダー用とあまり変わらないし……」
ジャンの提案に、アリュナも同意する……二人が言うなら間違いないと、俺もそれを了承した。
最上位クラスの魔導機はそこらの商人では取り扱ってないと言うことで、アリュナの伝で国家を相手に商売している大商人の元へと足を運んだ。
「わ……ジャルマだ……エプシスもある……凄いな……本でしか見ないような魔導機ばっかりだ……」
魔導機マニアのファルマが目を輝かして並んでいる魔導機を見ていた……
「これはこれは、アリュナさん、今日はどうしたんですか、もしかしてベルシーアから乗り換えで?」
小太りの見るからに商人ですと言った感じのおじさんが近づいてきて、アリュナにそう話しかけた。
「いや、今日は仲間の魔導機を購入しにきたんだ、お勧めのトリプルハイランダー用の機体と、ハーフレーダー用の機体を見せてくれるか」
「と……トリプルハイランダーですか! それはまた大きな話で……わかりました、丁度、最高の機体がございます……本当はエリシア帝国あたりに売り付けようと思ってたのですが……他ならぬアリュナさんですから……」
そう言って奥へと連れて行かれる……そこにあったのは金色に輝く美しい魔導機であった……
「魔導機ヴァジュラ……起動ルーディア値30000、最大出力320万、装甲SSランク、機動力Sランクと、性能は文句無しの機体です」
「確かにそうだね……それでいくらなんだ」
「五億と言いたいんですが……他ならぬアリュナさんですから、四億でお売りしますよ」
「どうする、勇太、いい機体なのは間違いないけど……」
「そうだな……ナナミ……こいつ好きか?」
やっぱり乗る本人が気に入らないと始まらない……ナナミに決断してもらおうと思った……
「……綺麗な姿……昔、金は幸せの色だってお父さんが言ってた……ナナミ……これがいい……」
「そうか……じゃあ、買おう」
そう俺が判断したとこで、ジャンが話に入ってきた……
「待て、待て、待て! 買うのはいい! 良い機体そうだし、ナナミも気に入った……それはいいだろ……だがな、商人の提示した最初の金額を受け入れてんじゃねえよ! 四億だ〜バカ言ってんじゃねえよ、値切るに決まってるじゃねえか!」
まあ……確かにジャンからすると交渉もしない買い物なんてありえないのだろう……ジャンは商人と交渉を始めた……それは1時間にも及ぶ大攻防へと発展した……
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