第26話 勝負の行方
アリュナの剣を弾き返したことで、俺の心に余裕ができていた……敵の攻撃は俺のアルレオに通用しない……そう思っていた……
トンファーで強引に攻撃すると、アリュナはそれを軽やかに避けた……大振りの攻撃だったこともあり、大きな隙になってしまった……その隙に、アリュナは攻撃体勢に入る……だけど中々攻撃が繰り出されない……その代わり妙な音が聞こえてきた……無数の鋭い風が吹き荒れるような高い音……そしてそれは爆発音へと変化した……
ドガッ!
凄い衝撃に機体が揺れる……見るとアルレオの肩の部品が吹き飛んでいた……
「なんだって!」
驚く俺にアリュナがこう言ってきた……
「なんだい、ルーディア集中も知らないのかい……それでよく私と戦えるね……」
ルーディア集中……なんだよそれは……
「ルーディア値は感情や集中具合でその値は常に変化してるんだよ、意識を集中してルーディア値をコントロールして最大値まで持ってくる……それがルーディア集中だよ……」
アリュナは親切にそう教えてくれた……
「さて……講義はおしまいだよ……そろそろ終わりにしようか……」
ルーディアが増大したアリュナの動きは劇的に変化していた……さらに早く、さらに力強く……
アリュナの双剣がもの凄いスピードで襲いかかる……トンファーで防ごうとするが、防ぎきれない攻撃がアルレオにヒットする……腕の部品が吹き飛び、ボディーが切り裂かれ、顔の一部が吹き飛ばされる……
ダメだ……このままではやられる……どうすればいいんだ……
そこでふと思う……俺もルーディアを集中すればいいんじゃないか……でもやり方もわからない……できるのか……いや……やるしかない!
俺は目を瞑った……そして意識を集中する……何度か渚に付き合ってお寺で座禅を組んだことがある……あの時の感覚……心を無にする……何も考えないで……意識を集中していく……
やがて暗闇の中に光る白い点が見えてきた……それは集中すればするほど大きくなっていく……そして光の点は大きな光の円へと変化していた……円をさらに大きくイメージする……やがてその光の円は視界一杯に広がり、何かが見えた……
「何ボーとしてるんだい、遠慮なくとどめを刺すよ!」
不思議だ……目を閉じてるのにアリュナの攻撃が見えた……俺はその攻撃を避けなかった……避ける必要がないことを感じたのだ……
ガコーン!!
攻撃して吹き飛んだのはアリュナのベルシーアの方だった……
「ど……どういうこと……今の最大出力の攻撃だよ……ベルシーアの最大出力250万の攻撃ならダブルハイランダー専用魔導機でもバラバラにする威力なのに……それに勇太の機体のあのオーラは……」
俺のアルレオは青白いオーラに包まれていた……シューシューと何かの音が響いてる……変な感覚だ……アルレオと同化したような感じ……今なら自分の体のように動かせるよな気がした……
アリュナはすぐに立ち上がり、双剣で攻撃を繰り出してきた……
「何が起こったかわからないけど……勝つのは私だよ! 勇太!」
アリュナの攻撃がスローに見える……俺は軽く体を捻ってそれを避けた……そして一瞬の隙を突いて、トンファーをベルシーアのボディーに叩き込んだ……
ドゴッと鈍い音がして、ベルシーアのボディーがへこむ……そのまま膝をついて崩れ倒れた……そしてプシュプシュと煙を出して動かなくなった……
「しょ……勝者……アルレオ……勇太!」
会場は一瞬静まり返った……数秒の沈黙の後、大きな歓声が起きる。
うおおおおお…………
勝った……ギリギリだったな……
俺はすぐに倒れたベルシーアに近づいた……
「アリュナ、大丈夫か!」
コックピット近くが大きく凹んだので心配になりそう声をかけた……ギギッ……と妙な音を響かせて、ベルシーアのハッチが開かれる……そしてアリュナが無事な姿で現れた……
「勇太! ハッチを開けな!」
そう叫んでいる……うわ……俺が勝っちゃって怒ってるのかな……でも……無視しても後が怖そうだし……俺はアリュナの言うとおりにハッチを開いた……するとトントンとコックピットまで上がってきて……俺に抱きついてきた……
「勇太〜マジ惚れちまったよ……もう私はあんたのもんだからね……好きにしていいんだよ……」
「ええ! いや……それなんだけど……所有物になるって話は無しでも……」
「何言ってるんだい! そんなのダメに決まってるだろ! 勝負は勝負! 賭けは賭け! 負けた方がやっぱりその条件無しって言うのがダメなように、勝者もその条件は無しって言うのはダメだよ!」
なんだろ……納得できるようなできないような話だな……さて……どうしようか……
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