第21話 勝利の後に
ハンデマッチも勝利した俺は、控え倉庫へと戻ってきた……
「勇太!」
そう言ってナナミとファルマが近づいてくる……
「また儲けたよ!」
やっぱり俺に賭けていたようで、大量のお金を持っている……
「今度はいくら賭けたんだ」
「100万!」
「ぶっ!」
俺は飲んでいた飲料水をぶちまけた……え〜と、確か倍率は48倍だったよな……てことは4800万! 嘘だろ……試合の掛け金より儲けてんじゃないか……
「とりあえず……豪華な飯でも食べに行くか」
俺がそう言うと、ナナミとファルマは満面の笑みで頷いた。
「飯食いに行くんだろ、俺も連れてけよな」
ホクホク顔のジャンそう言いながらやってくる。
「その顔はジャンも俺に賭けたな」
「いや〜流石の三対一のハンデマッチで、客はほとんど敵さんに賭けてくれてたからな〜儲かったわ」
「ジャンはいくら賭けてたんだ」
「100万!」
「ぶっ!」
いや……俺の試合でどれだけ儲けようとしてんだよ……
とにかく、俺たちは豪華な飯を食おうと場違いなレストランへとやってきた……
「失礼ですが、こちらはかなりお高い値段設定になっているレストランです……お客様のような身なりの……あっ、いえ……あなたにお支払いできるような金額ではありませんので、あちらの庶民用のレストランに行かれてはどうですか……」
やんわりと失礼な断られ方をする……まあ、庶民用のレストランでもいいかと、諦めようとしたが、ジャンは店員の態度が気に入らなかったようで反論する。
「なんだてめえ……俺たちがこの店の食べるほどの金がねえって言ってるのか? ほほう……この店がどれほどの金額か知らねえけどよ、10万ゴルド硬貨が山ほどある客を追い返していいのか!」
そう言いながら袋に入った10万ゴルド硬貨を見せた……
「こ……これは失礼しました! す……すぐに席をご用意します!」
やはりお金の力は絶大なのか店員は慌てて態度を変えた……
店内は昔の中世の宮殿の雰囲気で、明らかに高そうである……こんな贅沢していいのかと思うが、今日は勝利祝いも兼ねてるので特別だ。
「お客様、ローブをお預かりします」
ファルマは顔や体をローブで隠している……それを店員がしてきするが……
「いや、その子は酷い火傷をおってるんだ、そのままでいいかな」
「あっ……それは失礼しました……」
店員はそう言って身を引いた……
「美味しい……こんなの食べたの初めて……」
ナナミがそう言って喜んでいる……ファルマも嬉しそうなので来て良かった心から思った……
「おい、これとこれとこれを持ってこい、あと、この店で一番いい酒もな」
「……ジャン……割り勘だからな」
「ケチケチすんなよ、たっぷり儲けたんだろ」
「いや、それはジャンもだろ……」
「へっ、まあ、そうだけどな、ハハハッ……」
どうやらジャンは本当に悪い人間じゃないようだ……悪い奴がこんな笑顔で笑えるわけがない……
それから四人で楽しく食事をしていると……それを邪魔する存在が現れた…
…
「ギャハハッ マジで勇太だぞ! おいおい……奴隷から一気に出世したな!」
大声でそう言ってきたのは、見知った面々だった……
「山倉、芝居……原西……」
驚いた……クラスメイト三人がそこにいたのだ……
「ルーディア値2のゴミがどんな魔法を使ったら魔導機に乗れるんだ! 余程特殊な機体なんだろな」
山倉がそう言うと芝居も言葉を続ける……
「それに今日の試合も見たぜ……なんだあのインチキな試合は……猿芝居にほどがあったぜ……あの三人の剣闘士にはどれだけ金を渡したんだ?」
どうやら今日の試合は相手の三人と共謀した八百長試合と思ってるらしい……
「別に八百長なんてしてないぞ……それよりお前ら……性格変わったんじゃないのか」
「ギャハハっ! 性格が変わった? そりゃそうだろ、俺たちは特別なんだよ! そこらの底ルーディア値のクソどもと一緒にするんじゃねえよ!」
何があったのか……どうやらこいつら……自分を特別な存在だと思い込んだみたいだ……なんとも情けない……
「原西……お前もそう思ってるのか?」
クラスで一番仲の良かった原西……こいつだけは変わっていて欲しくなかった……
「はあぁ? 誰を呼び捨てにしてんだよ、2の勇太……原西様だろ! ゴミルーディア値のお前が俺たちと対等に話ができると思ってんじゃねえよ!」
もう怒りより悲しさしか湧いてこない……そんな俺の表情を察したのか、ナナミとファルマが原西たちに反発した……
「お前ら勇太をバカにするな! どっかいけ!」
「勇太はゴミじゃない! 勇太はいい人だよ!」
二人がそう思ってくれてるのが嬉しかった……
「ギャハハっ! なんだよ、勇太、こんな子供飼いならせて飼育してんのか? まあ、ゴミにはゴミの飼育がお似合いだな」
「おい、ここでそんなローブは失礼だぞ、不細工な顔隠してえのはわかるけど、さっさと脱げよ!」
そう言いながら山倉がファルマのローブを剥ぎ取った……獣人化しているファルマの体が晒された……店内で小さな悲鳴が聞こえる……そしてザワザワとざわつき始めた……
俺はすぐに剥ぎ取ったローブを手に取ってファルマにかけてやる……そして山倉をぶん殴った……
「いて! 何すんだよゴミが! てか高貴な俺の体に触れてんじぇねえよ!」
「どこが高貴だ、バカどもが……」
「ほう……ゴミが俺たちをバカって言ったぞ……面白え……こいつ、ぶっ殺そうぜ……」
そこで今まで黙っていたジャンが話に入ってきた……
「おいおい、どんな関係か知らないけど、お前ら剣闘士だろ? どっちが正しいかはコロシアムで決着つけたらどうだ」
「はあ、このゴミと俺たちが試合だと? キャハハッそんなの勝負になるかよ」
さすがにキレてた俺はこう叫んだ……
「三対一のハンデマッチだ! 掛け金は一億! 受けろよお前ら……」
「ギャハハっ……勝てるつもりだよこいつ……いいだろ……受けてやるよゴミ勇太〜」
こうして、次の試合はクラスメイトとの戦いに決まった……
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