第19話 剣闘士の戦い
対戦前にジャンが助言をしてくれる……それは何ともジャンらしいものだった……
「いいか、余裕があってもギリギリで勝ったように見せろ」
「どうしてだ? さっさと倒した方がいいだろ」
「バカか、強い姿なんか見せたら、次のマッチングがしにくくなるだろうが、いいから弱い振りをしろ」
「なるほど……」
何とも計算高い男だ……
前座試合ということもあり、俺の試合は大雑把に始まった……係りに魔導機に乗ってコロシアムに出るように言われて、出るとすでに敵が待ち構えていた。
「さて、次の試合は本日、初戦の新しい剣闘士、勇太! 機体はアルレオ! 未知の力でどこまで戦えるか見ものです! 対するはすでに50勝をマークしてる中堅剣闘士、赤龍のケベン! 機体はホルガ」
電光掲示板にオッズが表示される……57/1.5 ……どうやら俺はとんでもない大穴らしい。
「さあ! 試合開始です!」
ブーとブザーのような音がなると、相手が走ってこちらに突撃してくる……
「さっさと終わらせてやるぜ!」
敵の武器は大きな斧であった……威力は大きそうだけど……
ケベンはその大きな斧を振りかぶって俺に振り下ろしてきた……なんとも動きの遅いことか……これなら屋敷で戦った魔導機ゾフスの方がまだ早い……俺は軽く避けた……
「何!」
ケベンは攻撃を避けられたのが意外だったのか驚いているようだ……そのまま無防備のボディに拳で攻撃してもいいけど……苦戦しろって言われてるからな……俺はガムシャラな感じで体当たりした……しかし……軽く体当たりしただけで、敵の魔導機が吹っ飛んだ……
「ぐはっ!」
おおおぉ〜と歓声が上がる……
見ると相手の機体からプシューと煙のようなものが吹き出している……いや……やばいぞ……このまま勝ったらジャンに何言われるか……
ヨロヨロとしながらも、なんとか敵が立ち上がる……よし、がんばれケベン、まだお前は戦える!
「くっ……油断したぜ……まさかこれほどの力を持ってるとはな……しかし本番はこれからだ……俺の必殺の攻撃を受けてみろ!」
うむ……どんな攻撃かはわからないけど……これは食らった方がいいかな……俺は敵の攻撃を受ける覚悟をした……
ケベンの必殺の攻撃は、大きな斧をグルグル回してコマのように回りながら相手に近づいてくるものであった……俺はダメージを覚悟してそれを体で受けた……
ガシャン! と大きな音が響いて、俺のアルレオがケベンの斧を弾き返した……しかもその衝撃でケベンの機体がまた吹き飛んでしまった……
ケベンの機体はプシュプシュの音を立てて倒れている……うっ……ちょっと待て、まだ倒れるな!
しかし、俺の願いも虚しく、ケベンは立ち上がることはなかった……
「勝者、アルレオ、勇太!」
おおぉぉ〜と大きな歓声がまた上がる……あああ……簡単に勝っちゃったよ……
控え倉庫に戻ると、やはり鬼の形相のジャンが待っていた……
「苦戦しろって言ったろうが馬鹿勇太!」
「すまない……まさかあれで勝てるって思わなかったから……」
「ふんっ……次の相手は強くなるけど覚悟しておけよ、もう手頃な相手は見込めないからな」
「わかってるよ……」
そんなジャンとそんな会話をしていると、ナナミとファルマがウキウキでやってきた……
「見て、勇太! こんなに儲かったよ!」
そう言って見せてきたのは大量の1万ゴルド硬貨であった……
「どうしたんだ、それ?」
「生活費で貰ったお金全部、勇太に賭けたんだよ」
「なんだと!」
確か生活費でナナミに渡してたのは10万ゴルドだ……それを全部賭けたって……確か俺のオッズは57とかだったよな……てことは10万の57倍……570万!!
「へへっ……実は俺もお前に賭けてたんだよ……」
ジャンが嬉しそうにそう言う……
「いくら賭けてたんだよ……」
「俺も10万だ! くそっ……もっと賭けてりゃ良かったな」
なんとも……あの一試合で俺たちはかなり大稼ぎしたみたいだ……
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