第18話 初戦の相手
「よし、では対戦相手でも探しにいくか」
ジャンがそう言ってきた。
「どんな相手がいいのかな」
「まずは金を持ってないと始まらない……そしてある程度自信家である必要がある」
「そんなの外見でわかるものなのか」
「だから俺がいるんだろ、その辺りは任せておけ、人を見る目だけは自信がある」
そしてジャンが選んだのは、酒場で豪快に笑っていた映画で出てくるバイキングのような風貌の男性であった。
「なんだ、俺と戦いたいって言うのか、それは面白い……それでそいつの実績はどんなもんなんだ」
「この戦いが初戦になる」
「ガハハハッ〜〜初戦にこの赤龍のケベンを指定するとは無謀な奴だな、悪いがそんな鼻垂れ小僧と試合する気にはならねえな、他を当たってくれ」
「掛け金は2000万だ」
「……なんだと……それは本気か?」
「本気だ、それでも受けねえか」
「……ふっ……いいだろ、受けてやるよ……後悔するなよ」
「そちらこそな」
こうして、俺の初戦の相手は赤龍のケベンという人物に決まった。
「相手、強そうだけど大丈夫かな……」
ナナミが心配そうにそう言う……そんな彼女に俺は自信満々の顔で……
「俺は絶対に勝つから心配するな」
「ちょっと待てよ、魔導機に乗るのはお前なのか? ハイランダーのお嬢ちゃんじゃないのか?」
「俺だよ、ハイランダーじゃないけど、絶対に勝つから」
「いや……ハイランダーに任せた方がいいんじゃねえか……同じ機体でもルーディア値でかなりの差が出るからな……」
「いや、まあ、実は仕方ないんだよ、俺にしか今乗ってる魔導機が動かせないからね」
「へぇ? どう言う理屈なんだ? ハイランダーが動かせない魔導機を、お前は動かしてるのか?」
「なんだろ……相性かな……」
「いや……そんな話聞いたこともないぞ……単純に考えて、そのハイランダーより、お前の方がルーディア値が高いって考えるのが妥当だ」
「いや、それはない、俺のルーディア値は2だから」
「……なんだと! 2……ますますおかしな話だな……そんな数値じゃ魔導灯すらつかないぞ……」
「まあ、ちょっと変な魔導機だからね」
「う〜ん、まあ賭けるのは俺の金じゃねえからいいけどな……」
コロシアムには剣闘士の戦いを管理する組合があった……剣闘士ギルドと呼ばれる組織で、対戦の管理や斡旋、それに勝負の保証などを行っている……剣闘士ギルドに今回の対戦を申請して、掛け金を治める……これによって負けた相手が、掛け金を踏み倒すのを防ぐことができる。
「なんか、グレーな商売かと思ったけどちゃんとしてるんだな……」
「まあな、昔は無茶苦茶だった見たいだけどな、今は剣闘士ギルドの力が強いから、大人しいもんよ」
「それで俺の対戦はいつに決まったんだ」
「午後の一番からだな」
「早いな……」
「夕方からは大きな対戦があるからな、勇太のような初対戦の試合は早い時間に押し込められるのが普通だ」
「なるほどね、前座ってとこかな……」
「そう言うことだ、それより、そろそろ魔導機の準備した方がいいんじゃねえか、下に出場する選手の控え倉庫があるからそこに行きな」
「そうだね……ナナミ、ファルマ、俺は魔導機をとってくるから、ここでジャンと待っててくれるか」
二人は頷いた……ちなみにファルマは大きなローブで体全体を隠しているので頷きもよく見えなかったけど、動きの雰囲気は伝わった。
俺の魔導機はコロシアムの近くの広場に置かせてもらってた……鍵とかついてないけど、俺以外に誰も動かせないので誰も盗む奴はいないだろ。
魔導機は無事にその場に置かれていた……俺はそれに乗るとコロシアムの控え倉庫に向かった……
控え倉庫に行くと、係の人が近づいてきた……
「午後一の対戦に出場する勇太さんですか」
「はい、そうです」
「使う機体はこれですね」
「はい」
「それでは機体名を聞いていいですか」
「機体名?」
「この魔導機の名前です……ないですか?」
「あっ……そうですね……」
「登録に困るので、今すぐに適当でもいいので付けてもらえますか」
「はあ……」
魔導機の名前か……そんなの考えてもなかったな……そうだな……何にしようか……白い魔導機か……白と言えば……俺は子供の時に見たアニメを思い出していた……白いライオンの子供が活躍する話で、その名前が確か……
「名前はアルレオで登録してください」
「アルレオですね、わかりました」
こうして俺の魔導機に名前がついた……
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