第10話 動かない魔神

「ほら、ナナミ、追いついてごらんよ」

「待ってよ、ファルマ〜ちょっと早いって……」


二人が追いかけっこしているのを、俺は椅子に座って眺めていた……奴隷の時の生活が嘘のようだ……このままここにいてもいいなと思ってしまう……


「勇太もこっちにおいでよ」

ファルマが俺を呼ぶ……


「よし、じゃあ、俺が鬼になってやるから二人とも逃げてみな」

俺がそう言うと、ナナミとファルマはきゃっきゃっと騒ぎながら逃げ出した。


「ほら〜待て〜」

そう言いいながら追いかける。しかし……二人ともなかなかすばしっこい……全然捕まえることができず、ちょっと息が上がってきた……


「情けないぞ、勇太」

「そうね、それくらいでバテてどうするのよ」


「いや……ちょっと休憩……」

二人が逃げてきたのは屋敷にある倉庫であった……そこで俺は大きな白いロボットを見つけた……高さは10メートルくらいだろうか……それを見上げていると、二人が近づいてきた……


「これは……」

「昔、お父さんが購入した魔導機だけど……壊れてるんだって……」

「これが魔導機か……みんなこんなに乗ってるんだな……動かないんだ……」

「うん……どこが故障してるかわからないみたいで直せないって言ってた……」

「そうなんだ……壊れてるってのは間違いないの?」

「発掘後、すぐにトリプルハイランダーが乗ったけどウンともスンとも言わなかったって……トリプルハイランダーが動かせない魔導機なんてありえないから壊れてるってことらしいよ」

「発掘って……魔導機って作られてるんじゃないの?」

「コアの部分は今の魔導技術では再現できないみたい……だから旧文明の魔導機を掘り出して、コア以外を修理したりして使うのが一般的なの……」


「いやに詳しいな、ファルマ」

「うん……私、魔導機が好きなの……凄く魅力的だよね……今の魔導技術だけでは一からは作れない……そんな未知な力にも惹かれる……」

「そうだったんだ……まあ、これが動いても俺には関係ないけどな、何しろルーディア値2だからな」

「えっ、勇太、ルーディア値2なの?」

「そうだよ、低いだろ」

「そんな低数値初めて聞いた……」

「ファルマは幾つなんだ?」

「私……私は7800……」

「凄いな、そんなに高いんだ」

「うん……でも……何も役に立ってないよ……人前に出れないし……」

「そんなに高いなら好きな魔導機に乗ればいいのに」

「私には無理だよ……」


ファルマとの話が長くなり、一人寂しいと思ったのかナナミが会話に入ってきた。

「もう……ナナミも話に入れてよ〜」


「あっ、そういえばナナミって自分のルーディア値知ってるのか?」

「知らないよ……測ったことないから……」

「そっか……だけどあの奴隷小屋の扉を開けれないんだったら低いんだろうな……」

「試したことないの……」

「え?」

「あの奴隷小屋の扉には触ったこともないから……」

「そうか、だったらルーディア値が高い可能性もあるんだな……」

「そんな数値どうでもいいよ……ナナミはナナミだから……」

「そうだな、どうでもいいよな、俺も2だけど全然平気だぞ」



ナナミはどうでもいいと言ったルーディア値だが、それからしばらくして、彼女のルーディア値が判明した……それは驚きの数値だった……


「と……トリプルハイランダー……」

ナナミのルーディア値は32000の数値を計測した……


ルーディア値を知らないってことで、ベルファストさんが気を利かしてナナミのルーディア値を計測してくれた……そこで驚きの数値が出たのだ……


「ナナミちゃん、これは凄いことだよ……この数値ならどこの国にもライダーとして好待遇で迎えてくれるよ……本当はずっとファルマの友達でいて欲しいけど……君が望むならこの国に紹介することもできる……」


しかし、ナナミはそんなことには興味がないようで……


「私はここにいる……勇太とファルマと一緒に……」

そう言うと、ベルファストさんは嬉しそうにナナミの頭を撫でた……


「そう言ってくれて本当にありがとう……ファルマはいい友達を持ったよ……」


本来ならナナミはもっと評価されて、もっといい暮らしができて……どんなことだってできるだろうに……だけど、それでも俺たちと一緒にいたいと言ってくれる……素直に俺は嬉しいと感じていた……だけど……この事が後で大きな問題を引き起こしてしまう……それは、ファルマの家族の運命を大きく変えるものだった……

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