第9話 職場を探して……
ナナミに学ばさせるにはお金を稼がなければいけない……俺は何か仕事を探した……風呂に入り、服を着替えたことで見栄えが良くなったこともあり、前よりは話を聞いてくれるようになった……それでもルーディア値2がネックとなり、就職までは行くことができない……
「今日もダメだった……ごめんなナナミ……」
「いいよ、勇太が一緒ならそれでいい……」
二人で分けたパンを食べながらナナミはそう言ってくれる……船で貰ったお金もそんなには持たないだろ……なんとか仕事を探さないと……
「君、仕事を探してるのかい」
そう声をかけてきたのは初老の男性だった……
「はい……そうですけど……」
「どうかね、一月で50ゴルドの仕事があるんだが……」
50ゴルド……今の俺たちにはかなりの大金だ……
「どんな仕事ですか?」
船の件もあるので、ここは慎重に尋ねた。
「私には君たちと同じくらいの娘がいてね……その娘の話し相手になってもらいたいんだ……」
「それだけですか?」
「そうだよ、君たちに家がないなら部屋も用意するし、食事も付ける、どうかな」
信じられないくらいに好待遇だ……また騙されるかもしれないけど……他に当てもないのでその仕事を引き受けた。
「そうか、やってくれるか! よかった……」
初老の男性は嬉しそうにそう言った……
男性の名はベルファストさんというこの国の貴族の人であった……早速、ベルファストさんに連れられて彼の家へと向かった。
家は大きな屋敷だった……召使の人もいて、お金持ちなのは間違いないようだ……
「今から娘に会わせるけど……驚かないで欲しいんだ……いいかな」
「はい……わかりました……」
どういうことだろ……驚くような娘なのだろうか……
そして実際にベルファストさんの娘に会うと、その意味がわかった……彼女は人ではなかったのだ……半分獣のような姿……話を聞くと、半獣という現象らしく、呪いの一種らしい……
「私には商売敵が多くてね……どこかの誰かに深く恨まれたようなんだ……それで娘がこのような姿に……うっ……うっ……娘が不憫で仕方ないのだよ……」
俺はその話を聞くと、娘さんに近づいた……彼女は怯えていたけど、俺は堂々とこう言った。
「俺は勇太、こっちはナナミ、よろしくね、君の名前を教えてくれるかい」
そう言うと、怯えながらもこう言ってくれた……
「ファルマ……」
「そうか、ファルマ、今日から俺たちは君の友達だ、なんでも話してくれよ」
「友達……」
この姿で生まれた彼女は最近まで部屋で閉じこもって生活していたそうだ……それで友達どころか家族以外で話をするのも初めてだそうで、まだまだ警戒している。
「ファルマ、ナナミと遊ぼ!」
「え……遊ぶの……」
ナナミはベッドに寝ていたファルマを強引に連れ出し、庭へと連れて行った……
ナナミに振り回されて、初めは戸惑っていたファルマも、少しづつ慣れてきたのか笑顔が出るようになった……二人は楽しそうに遊ぶようなった……
「うっ……あのファルマがあんなに楽しそうに……」
ベルファストさんは嬉しそうにそう言う……
「ナナミも同年齢の友達ができて喜んでますのでよかったです」
「そうかい……実はね、君たちの前に同じように人を連れてきたことがあるんだが……その時は連れてきた者が娘を見て化物だと言って逃げてしまってね……その時のことがあるからしばらくは娘の話し相手を探すのはやめていたのだが……それでも娘には普通の幸せを感じて欲しくてね……今回、君に声をかけて本当によかったよ……」
俺は不思議とファルマのことを化け物とは全く感じなかった……異世界ならそういう子もいるだろうくらいの感覚であったのだ……
その日から、ベルファストさんの家での生活が始まった……ちゃんとしたベッドで眠り、起きたら朝食を食べて、ファルマと話して、昼食を食べて、ファルマと遊んで、夕食を食べてファルマと話して就寝する……そんな生活が続いた……一ヶ月もすると、俺とファルマはかなり仲良くり……ナナミとは俺以上に仲良くなって、まるで姉妹のように話すようになっていた……
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