第8話 お風呂
服と靴を買ったし、すぐに着替えたいけど、この汚い垢を落としてからがいいだろ。なんとか風呂に入りたいのだけど、その辺のおじさんに風呂の場所を聞いてみた。
「風呂に入りたい? そりゃ、風呂付きの宿に泊まるか、どこかの温泉にでも行くしかないだろうな」
温泉か、そりゃいいな。
「近くに温泉はありますか」
「そうだな。近くてもウェブライナーで3時間くらいはかかるんじゃないか」
ウェブライナーが何かはわからなかったけど、どうやら近くにはないようだ。仕方ない、風呂付きの宿に泊まるか。
「ナナミ、今日は奮発して宿に泊まるぞ」
「宿、ナナミ初めて!」
とりあえず、風呂があって安めの宿を探した。良さそうなところはどこも一泊一部屋10ゴルドもするのでとても泊まれない。そしてようやく、風呂付き一泊2ゴルドと格安の宿を見つけることができた。
部屋に入ると、ベッドは大きなのが一つだけ……まあ、いつもナナミと寄り添って寝てるくらいだからそれは問題ない。風呂は木製の桶に、板張りの風呂場だった。石鹸もタオルもあるのですぐに入れそうだ……
お湯は何かしらのよくわからない力で湧くらしく、蛇口を捻ると出てきた……久しぶりの暖かい湯気の感触に感動する。
「よし、ナナミ、一緒に入るか」
そう聞くと、ナナミは返事もせずに風呂に入ってくる。
「ナナミ、服を脱がないと」
「うん」
俺もナナミと一緒に服を脱いだ。もうこれはいらないかな? ボロボロの服を見てそう思った。
そしてナナミの体を洗ってやろうと彼女を見て驚いた。小さいが胸の膨らみがある。ちょっとドキとして目を逸らした。
「どうしたの勇太」
「いや、ナナミ、お前いくつなんだ?」
「14だよ」
「──なんだと!」
しまった! 10歳くらいだとばかり思ってたぞ。これはやばい。俺と3つしか違わないじゃないか。
「ナナミ。お前、一人で入れるか?」
「どうして、一緒に入ろうよ」
「……無理だ」
「どうして?」
「いや、それはな」
ドキドキするからなんて言えないしな。
「じゃあ、そうだな、体は自分で洗えるか?」
「やったことない」
「そうだったな……」
仕方ない。目をつぶって洗うか……俺は目をギュッとつぶってナナミの体を洗ってやった……流石に下の方は自分でやらせたが、それでも「どうして、どうして、勇太が洗ってよって」としつこかった。
後ろから髪も洗ってやる。ボサボサだった髪が解れて綺麗になっていく。そして顔も洗ってやる。普段ボサボサの髪で目が見えないのだが、今は顔を洗うために髪を後ろに持っていっている。ナナミの顔をちゃんと見たのはこの時が初めてかもしれない。こいつ、もしかして可愛いのか!?
「よし、今度はナナミが勇太を洗ったげる」
「いや、俺は大丈夫だ、自分で洗える」
「いいから、洗わせてよ」
「わかった、だったら背中を頼む、そこは自分では洗えないから……」
「うん、任せて」
ナナミはゴシゴシと背中を洗ってくれる。
「勇太……いつまでも一緒にいて……」
ナナミが不意にそう言ってきた。
「ああ、いつまでも一緒にいよう」
もう俺にとってはナナミは妹のような存在だ。そう返事するのに迷いはなかった。
「勇太、下も洗ったげる」
そう言ってきたけど、流石にそれは自分でやると断った。強引に洗おうとするナナミと少し攻防があったが、なんとか勝利を収めた。
それから二人で湯船に入った。そこでナナミの話を聞いた。家族のこと、奴隷になってからのこと……俺の話もした。前の生活のこと家族のこと、彼女は学校の話を聞いて、興味を持っていた。そうか、勉強もしたことがないんだな。
この世界に学校があるかは知らないけど、ナナミに何かを学ばせたいと思った。よし、俺の目標ができたぞ。ナナミに学びの機会を作ろう。そう決心した。
さて、年齢が発覚して、添い寝も中々難しくなったぞ。そんな俺の気持ちなど知るわけもなく、ナナミはいつも通り密着してくる。しかも風呂に入り綺麗になったのが嬉しいのか、密着度がいつもの二倍くらいであった。今日からいきなり拒絶するのも変なので、俺はドキドキする気持ちを抑えながら、そのまま就寝した。
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