第4話 奴隷生活

果実二個で売られた俺の待遇は酷かった……鎖で繋がれ、輸送用の牢屋のような馬車に押し込められて連れていかれる……そしてしばらく移動すると、山の中腹にある、大きな屋敷へと到着した……屋敷では母屋ではなく、庭にある馬小屋みたいなとこへと連れていかれる……


「ほら、入れ、ここが今日からお前の家だ!」


そこは家ではなかった……どう贔屓目に見ても小屋がいいところだろう……中には10人ほどの男女が押し込められていた……


「おい、腹が減ったんだけど……」


去ろうとする男にそう声をかけた……


「今日の飯の時間は終わりだ、明日まで我慢しろ」

「マジかよ……」


嘘だろ……こちとら育ち盛りだぞ……腹減って寝れねえよ……俺がそう考えながら落ち込んでいると、一人の女の子が近づいてきた……ボロボロの服にバサバサの髪……こんな場所では仕方ないだろうけど、お世辞にも可愛い女の子ではなかった……


「お前、お腹空いてるのか?」

ぶっきらぼうに女の子が言った。


「……ああ……腹ペコペコだ」

「……ほら、コレあげる……」


そう言ってそこ子が渡してくれたのは黒い団子であった……

「ナナミ、それはあんたの大事な非常食でしょ、そんな新入りにあげていいの?」

おばちゃんがその女の子にそう言うと、女の子は無表情でこう言った……

「お腹空いたら辛いのナナミ知ってる……」


それだけ言った……こんな小さな女の子がそんなこと言うなんて……さすがにこの団子は受け取れないな……俺はそれを彼女に返した……


「ありがとう、気持ちだけ受け取っておこう、明日には飯が食えるんだ、1日くらい我慢するよ」


「無理よくない、食べていい、それに明日のご飯もあるかどうか微妙……」

「そうなのか?」


その問いにはおばちゃんが答えてくれる……


「そうよ……ここの主人は気まぐれでね……食事は三日に一度あればいい方なの……」


そうか……それでみんなこんなに痩せているんだ……


「わかった、ありがとうナナミ……じゃあ、半分づつにして食べようか、俺はそれで十分だから」

「……半分でいいのか?」

「ああ、こんな大きな団子だったら半分で十分だ」


俺は団子を半分にすると、大きい方をナナミに渡した。

「よし、食べよう」


俺とナナミは、汚い木製の台に座って一緒にそれを食べた……見た目通りと言うか……やはり、それはあまり美味しくはない……だけど、味よりナナミの気持ちが嬉しかった……


団子を食べた後、ナナミに寝床に案内される……ちゃんとしたベッドは期待していなかったけど……そこは想像以上に劣悪な場所だった。


板の上に薄っぺらいワラが敷かれた寝床で、掛け布団はない……そこでみんな雑魚寝している……


俺が横になって寝ようとすると、ナナミが俺の横に添い寝してきた……ちょっと寒いのか、体を寄せてくる……俺は少しでも暖かくなるように、彼女の肩を抱いてあげた……



全然眠れなかった……寒いし硬いし……しかし、そんな状況でも休ませてはくれない……俺たちの小屋にやってきた男に小屋から出されると、女たちは屋敷の方へと、男たちは屋敷裏の崖に連れていかれ、作業をさせられる……


俺たちの作業は何かの発掘だった……ガツガツ掘って、何かを運ぶ……それを休みもなく一日中させられる……そして日が暮れると小屋へと戻される……


水は作業中にも少しだけ支給される……その日は作業が終わると、水とビスケットみたいな一欠片の硬いパンのようなものが渡された……


「これが今日の食事か……」

「出るだけマシ……いい日は大きなパンとチーズと干し肉が貰える日があるけど、月に一度くらい……」


「そうか……」

どうやらここは最悪の場所のようだ……


「ナナミ、どうして君みたいな幼い子がこんなところにいるんだ」

「売られた……」

「誰に?」

「お母さんに……」


あっ……聞いちゃいけなかったか……

「でも、ナナミを売ったお金で家族が一ヶ月暮らせるって言ってたから……ナナミはそれでいい」

なんと健気な子だ……うぬ……ちょっと待てよ……家族が一ヶ月暮らせる……ナナミは俺より高値で売られたのか……ちょっと微妙な気持ちになった……



それからしばらく、昼は働き、夜は寝るだけ……たまに食事を貰って食べる……そんな日々が続いた……そんな俺に転機が訪れるのは、小屋にくるここの主人の男の、ある行動に気がついた時だった……


「あいつらって小屋に鍵をかけてないよな……」

そう言うと、おばちゃんがその理由を教えてくれた……

「あの扉はルーディア値の制御キーが付いてんだ……ルーディア値が300以下の人間は開けれない仕組みになってんだよ……この小屋には100以下の人間ばかりだからね……嫌味なことだよ……」


なるほど……俺のルーディア値は2だからな……まあ、開けれないってことか……そう思ったが、何気なく扉に手をかけて開けてみた……するとガーと音がして扉が開いた……

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