第34話 不審者
(ん?)
俺は声がしたのでそっと気配を消してその様子を眺める。
「ちょっと私に手を出したらどうなるか分かってるの?」
「さぁ、わかんないなぁ。おじさんたちに教えてくれよ。」
ローブで隠れているもののわずかに見える髪を見ればそれはすぐに分かった。
(彼女がうわさの第2王女か。)
髪はこんな薄汚い場所とは対照的にきれいに整えられており、とてもこのような場所に来るような立場の人物でないことが分かる。
それに先程の噂も加味して彼女が噂の第2王女なのだろう。
そんな彼女がゴロツキ3人に囲まれて委縮してしまっている。
「私は、エリダム王国第2王女エルミア・フォン・エリダムよ。あなたたちの首なんか簡単に吹き飛ぶんだからね。」
「「「はっはっはっは。」」」
ゴロツキどもがめちゃくちゃ声を高らかにあげて笑っている。
「こんな薄汚れたとこなんかに王女様が来るわけねえだろ。」
(あっ、確かに。)
「それにこんな上玉だ。抱ける機会なんて一生に一回もないぜ?」
「うぐっ。」
流石にこればかりは俺も許せん。今の姿は男だが同じ女として?こんなクズどもは許しておくわけにはいかない。
「ぶっ飛べ。」
「ごほっ。」
魔力を込めたこぶしを思いきり、ゴロツキの親分らしき男の腹にかました。
「こんのっ、クソアマァ。」
残りの二人も襲い掛かってくるが今の俺には相手にならない。変化の特性上体を作り変えてしまう。それはつまり身体的特徴も変えてしまうということだ。
何が言いたいかというと
(体が軽い。)
今の俺は人間で男性だ。貧弱な狐人族とはわけが違う。少なくとも運動神経だけならこっちのほうが格段に上だ。
ゴロツキどもをあっという間に鎮圧して見せる。やはりゴロツキというだけあってか弱かった。冒険者レベルで言ってもDぐらいだろう。それでも一般人からしたら恐ろしいかもしれないが。
「おーい、死んでたら返事しろ―。」
「…。」
返事がない。ただ気絶しているようだった。やっぱり怖かったんだろうなと思う。彼女を背負い、ゆっくりと王城を目指して歩く。自分が女の子になってしまったせいなのか彼女を担いでも全くドキドキしなかった。
「とまれ、何用だ。」
「俺は、後ろのいるやんごとなき人を連れてきただけですよ。」
「なっ!?今すぐ中から人を呼んで来い。」
俺の担いでる人を見て、門番たちがざわめきだす。それもそうだ。たかが一介の門番如きが会えるような人物ではないのだ。
「すまないが身分が不確かな人物を王城へ入れるわけにはいかない。付いてきてもらおう。」
そして俺は、牢屋へと入れられた。
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