第32話 お引越し

王妃様との会合から3日。あれから何をしていたというと・・・・。


「これで完成。」


「「「「「おおおおおおおお」」」」」


新しい孤児院の建築をしていた。本当は、私とエルの二人がかりでやるつもりだったんだけどアベルさんが手の空いてる職人さんたちに指示を出して、私たちに従うようにさせたそうだ。彼らは、最初私たちの言うことなんか聞こうともしなかったがリアが建築計画書を見せたとたん急に協力的になってきた。


建材なども用意してくれたおかげで支出も減り、何より手が増えたおかげで作業効率がめちゃくちゃよくなった。大いに助かった。


ちなみに何があるのかというと一階は、みんなでご飯が食べられる食堂に男女別のお風呂。お風呂は、さすがに私たちの家のように凝ったものではなく、みんなで浸かれるような広い浴槽を用意した。でもお湯どうすんの?と思われたかもしれないが何とリアがこのためだけに新しい魔道具を完成させてしまった。簡単にいうと魔力吸引装置だ。この世界では大気中に魔素というものが広がっている。魔素によって生まれるのが魔物であり、魔素を変換したものが私たちの持つ魔力だ。


リアが作ったのは、大気中の魔素を少しづつ吸収してそれを魔力に変えてそれを貯めこむといったものだ。そしてお湯が欲しい時に魔力を取り出してお湯を生み出すという優れモノだ。ちなみにこれは、ソーラーパネルのように屋根に敷き詰められている。本人曰く太陽光を魔力に変換したかったらしいが流石にできなかったらしい。逆にそんなことができたら恐ろしいことになるような気がするのでぜひともやめていただきたい。


ちなみにこればっかりは職人さんたちに見せるわけにはいかなかったので彼らが去った後に魔法で《透明化インビジブル》の効果を付与している。よっぽどの人(世界最強クラス)じゃないと見破ることはできないだろう。


ちなみにそのせいもあってかお風呂場を作るときに少々もめたので物理的に黙らせました。てへっ。


◇◇◇


「さてみんな今日が何の日かわかるかな?」


「「「「「お引越し~」」」」」


「みんな用意はできてるかー?」


「「「「「おーーーーーー」」」」」


子供たち相手になんか演説するの楽しいな。みんな結構ノリがいいし。


「本当にいいんですか?私たち何もできてないんですけど。」


「いいんですよ。これは、お姉ちゃんの受け売りなんですけど子供が笑って過ごせない環境は社会が悪いって言ってるんで。それにあれを見てくださいよ。」


エルが私に向かって指さしてくる。え?私そんなに変な顔してるの?


「確かにあんなに嬉しそうならなにも文句は言えませんね。」


院長先生が何を言っているかはわからないが悪口を言っているわけではないだろうし、別にいいだろう。それにしてもこの子たちが笑ってくれているのを見るとやっぱりうれしくなる。私としては、どうしても前世の自分と重ねて考えてしまう。私は、両親を失ってふさぎ込んでしまったがこの子たちには笑顔でいてほしい。それにしても


(会いたい。)


この世界のどこかにいるであろう両親に会いたい。まぁ、私のように姿が全く変わっていたら分かんないかもしれないけどさ。


◇◇◇


「すごーい。」


「きれーい。」


「大きいー。」


新しい孤児院を見てみんなが目をキラキラさせている。頑張ってお手伝いした甲斐があった。私がやったの木材の切り出しぐらいだけど。仕方ないじゃん。専門職ばっかいたんだし。


「これは、すごいですね。」


院長先生は、もう何か今まで驚くべき言葉から起きたせいかだいぶ耐性がついてきている。


「では案内するんで。みんなついてきてー。」


リアを先頭にみんながついていく。私?後ろからほほえましく眺めさせていただきます。


「ここがみんなでご飯食べるところね。ちゃんとあっちで手を洗うんだよ?」


「「「「「はーい。」」」」」


食堂にはもちろん水道がある。ただ子供たちの人数が人数なので広い。イメージとしては小学校とかにあるような水道だね。


「ここがお風呂場だよー。女の子と男の子別れてはいるんだよ?」


お風呂場まで来て院長先生を見てみればもう何か魂が抜き出そうになっている。


「リアお姉ちゃん。お風呂ってなーに?」


「お風呂はね、みんなで体を洗いっこする場所なんだよ。気持ちいいからあとで入ってみてね。」


子供たちの反応を見て思い出した。お風呂って貴族でもない限りめったには入れるものじゃないんだった。そのお風呂が目の前にあったらビビるわ。ごめんなさい院長先生。



「こっちがみんなのお部屋ね?4人一組で一つの部屋だからね?」


子供は全部で20人。そのうち女子が8人で男子が12人。なのでちょうど4人部屋で割れる感じなのでそうしてみた。本当は、一人一部屋でもよかったのだがリアによると仲のいい子たちと一緒の方が安心するだろうって。それに院長先生も把握しやすそうだし。


子供たちが一斉に各部屋に仲のいい子を誘って散らばり始めた。余ったりする子がいるかと思ったがそんなことはなかったようなので安心した。


「最後は、先生の部屋です。」


「あら、素敵。」


先生の部屋は、シンプルでベットと机、棚があるくらいだ。スペース的にはまだ余裕がある。


「すいません、質素な感じで。」


「全然、むしろありがたいぐらいよ。こんなにいい部屋もらってるのに。」


院長先生が喜んでくれるならそれでよかった。


「それでシャンプーの方はどうですか?」


「もうありがたいことに絶好調なのよ。おかげで子供たちのごはんにも苦労しなくなったし、服も買うことができた。後は、だれかお手伝いさんを雇うのもいいかもね。」


シャンプーの売り上げの効果もあってか子供たちの生活環境は大きく改善したようだ。ただその反面、こんな大きな家に越したせいで院長先生の手が回りきらなくなることもある。ただお手伝いの人を雇えば負担も減ると思うので思いっきり休んでほしい。今まで誰よりも苦労していたのは、子供たちみんなが知っているだろうし。


「それでよかったらまた今日もご飯はどうかしら?みんなもあなたたちがいると喜ぶと思うのよ。」


「でしたらお邪魔させていただきます。今日もいい食材があるので」


「ほんとにあなたたちには、いつも驚かされるわ。ありがとうね。」


やっぱ誰かと一緒にする食事は楽しいと思う。子供達との食事を通して私はそれを強く実感した。時間があればまた一緒に遊びたいな。

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