第30話 孤児院
「うーん。」
今私は、悩んでいた。何がというと孤児院の子供たちのことだ。子供たちが何人いるのかわからないが物乞いみたいなことをしているということは、相当困っているということだろう。ここは、何とかしてあげたい。なんとか彼らだけで自立できるようにしてあげたい。
「おっ、そうだ。」
とりあえずいい案が思いついたのでリアを起こしに行く。ライアさんは、わざわざ一人部屋を二つとってくれたのだ。
「リア、おきて。孤児院行くよ。」
「ん?何かいい案でも思いついたの?」
「シャンプーだよ。あれの作り方を教えたらあの子たちもしっかり稼げるようになるんじゃない?」
「それは、いいけど。私が教えないとそもそも意味ないんだよ?」
「あっ。」
そうだった。今まで無条件にリアを頼っていたがこの子が私の言うことを聞いてくれるとは限らないんだった。どうしようほかに案がないんだけど。
「条件がある。」
「何?」
リアが作り方を教えてくれるならどんな条件でも飲み込んでみせよう。
「エルの尻尾モフモフさせて。」
「え?自分のはだめなの?」
「甘い!甘すぎるよ、お姉ちゃん!」
「うわっ。」
急に距離を詰めてきて訴えかけるような視線でリアが語りだした。
「自分の尻尾じゃ意味がないんだよ。誰かほかの人の尻尾を触るから心地いいんだよ。自分の尻尾を触っても何も感じないんだもの。」
「そう?分かった。後でモフモフさせてあげるからお願いします。」
「よろしい。行くよお姉ちゃん!いざ戦場へ。」
そのままリアが飛び出して行ってしまった。そんなにモフモフしたいのだろうか?私は、自分の尻尾を触ってみても特に何も感じないのだが。
◇◇◇
数人の人に尋ねることで何とか孤児院に着くことができたのだが。
「これは、ひどいね。」
リアのド直球の感想に何も言えないでいる。実際その通りで壁もボロボロでところどころ穴が開いてるし、今にも崩壊しそうな雰囲気を漂わせている。それに路地裏にあるのも相まってめちゃくちゃ日当たりも悪い。これは、子供にとって害にしかならなさそうである。これは、ちょっと環境整備の方を早くしてあげたほうがいいと思う。
「あっ、この前のお姉ちゃんだ。」
するとこの前、屋台の近くでいた子供たちを見つけた。
「ねえ、院長先生ってどこにいるかわかる?」
「うん、わかるよー。」
「こっちこっちー。」
案内されていった先には、一人の妙齢の女性がいた。
「ん?どうかしたのかい?あらあらこんなところまでようこそ。今日はどういった要件できたのかな?」
「えっとですね。この前この子たちが屋台の前で物乞いしているのを見て一体どうなっているのかが気になって。」
「まぁ、なんてこと。じゃあ、あなたたちがこの子たちに食べ物をくれたのね。本当にありがとう。」
それから院長さんは、語ってくれた。何でも年々補助金が減ってきていて、ついこの前補助金が打ち切られたこと。屋台の人たちに頭を下げてまで余った食品やいらない部位の肉などを分けてもらっているなど。
(あの国王は優秀な人だと思うけどこんなことするのかな?)
私が国王陛下に対して最初に思ったのは賢そうだということ。あの冷徹な目ですべてを見透かそうとしていたのは、今でも忘れられない。だがほかにも思ったのが慕われてるということ。ライアさんは、孤児が生まれないようにサポートを厚くしているし、そんなライアさんが慕っているのだから孤児に対してひどい真似はしないと思う。たぶん財務大臣とかそんなところの仕業だろう。
「それは、ひどいですね。」
「ううん。それでも私たちは仕方ないの。実際にお金は払えてないし、今までもらってきたのだって国民が汗水流して稼いだお金の一部だもの。切り捨てられても仕方ないよ。」
「リア、ちょっと私は用事を済ませてくるから。後は、お願い。」
「うん。任せてお姉ちゃん。」
リアが屈託のない笑顔を見せてきた。私で気づいたのだからリアもとっくの昔に気づいているはず。シャンプーの件はリアに任せて私は用事を済ませる。孤児院から少し離れたところで
「いるんでしょ?出てきなさい。」
私が声をかけると二つの人影が現れた。やはりいた。今まで私たちは監視されていたのだ。
「失礼。どうして気づいたのか教えてもらえるだろうか?このままだと打ち首にされかねん。」
そりゃそうだろう。おそらくこの人たちは、国王陛下お抱えの暗部と言ったところ。そんな見つかってはいけない人たちがこうも簡単に見つかるなどもってのほかだろう。
「私たち狐人族のお得意の魔法ですよ?魔力は抑えられていましたが分かりますよ。」
「なるほど。」
この人たちは魔術で自分たちの姿を隠していた。しかも魔力も気配も極力抑えこんでいる。流石国王お抱えと言ったところだろう。
「私からのお願いは、ふたつです。一つは、孤児院の帳簿を管理しているであろう人物の部屋を訪れて不正を見つけること。そしてそれを国王陛下の元へもっていくことです。」
「守らなければ?」
私は、魔力を一瞬放出する。
「あなたたちの魔力は覚えたのでこちらから迎えに行きます。」
「分かった。必ず実行しよう。」
「では。」
そのまますっと行ってしまった。ちょっとふるえていたのが面白かった。
「さて服でも買いに行きますか。」
子供たちの分の服を買うために私は服屋へ向かった。
◇◇◇
「リアどう?」
「ん?そりゃ見ての通りだよ。」
私の目の前では、子供たちが一斉に机に向かって様々な植物をかき混ぜている。どうやら説明が終わったようだ。
「あら、用事は終わったの?」
「はい。これ子供たちにどうぞ。」
私は、院長先生に袋いっぱいの服を渡した。
「まぁ、こんなに。でも高かったんじゃ?」
「全然ですよ。こう見えても稼げているんで。」
「そうかい。」
「あとこれもみんなで分けてください。」
「・・・ほんとに何から何まで悪いねえ。」
私はマジックバックから凍らせた塊の肉を出した。院長先生はほんとに申し訳なさそうな顔をしている。気にしなくていいのに。
「とりあえず今日は帰りますね。また明日来ます。」
「ありがとう。ほらみんなお礼を言いなさい。」
「「「「ありがとー。」」」」
私たちは、孤児院を後にした。
「それでここからどうするの。」
「そうだね。王妃様にでも渡してみるよ。そしたらたぶんうまくいく。」
「でも王妃様になんて会えるの?」
「大丈夫。明日多分国王陛下に呼び出されるから。」
「あぁ、なるほど。」
その言葉で納得したようだ。察しがよすぎる妹である。ちなみに私の計画は、孤児院を自立させることである。理由としては今回のように補助金が止められても不自由しないようにするため。
そのためにまずシャンプーの作り方を子供たちに教えてもらった。問題はこれが売れるかだ。ただこれに関しては問題ない。ライアさんの妻や商人ギルドのギルドマスターが気に入っているように評価はかなりいい。王妃様にもきっと気に入ってもらえると思う。
「尻尾モフモフ楽しみだなぁ。」
「・・・。」
そう言えばそんなことがあったわ。
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