第28話 王都

「よし、今日はここまでだ。」


今私たちは、王都に向けて移動している。今日はもう日暮れになっているので早めに野営の準備をする。馬車は流石にライアさんが使うので私たちは自前のテントだ。もちろん料理も自分たちで用意する。


「リア、今日は何にするの?」


「うーん、とりあえずスープと野菜炒めかな?」


「おっけー。」


私も料理はできるけどもやっぱりリアの腕にはかなわない。なので基本的に私はリアのサポートに回る。


「えーと、これとこれと。お姉ちゃんこれ切っといて。」


リアは、私と二人きりの時は名前で呼んでくるのだが誰かほかの人がいる時は基本的にお姉ちゃんって呼んでくる。正直、まだちょっと恥ずかしい。


「任せてー。」


リアがマジックバックから取り出した凍らせた食材を解凍しておく。マジックバックと言っても私たちの持ってるマジックバックは、時間停止などの機能はないので普通に食材を入れておくと腐ってしまう。時間停止のマジックバックは、普通のマジックバックよりも値段がかなり高い。とても12の小娘に出せる値段ではないのです。


「ふーんふーん。」


鼻歌を歌いながらスープを作るリアをよそに魔法で作った土台で私は包丁で野菜を刻んでおく。ついでに今回使うお肉も食べやすいように一口サイズに切っておく。


「はい、あとは任せた。」


「了解。」


リアに変わってスープを見ておく。と言ってもあとはタイミングを見計らって具材を入れるだけなので簡単だ。



そうしてできた料理を木皿についではい完成。


「うーん、おいしい。」


「やっぱ、リア料理うまいねえ。」


「大丈夫。お姉ちゃんは私が育てた。自信を持ってほしい。」


「そう?ならよかった。」


リアと仲良くガールズトークをしているとライアさんが駆け寄ってきた。


「すまんが私たちにも料理を分けてくれないか?無理ならいいんだがどうも男が作った料理はな。」


ライアさんに言われた方向を見てみればよく分かった。彼らは、道中で狩った獲物の肉を食べているのだがそれも単に焼いただけといった感じの肉だった。確かに私たちの料理と比べたら明らかに見劣りする。


「リア、お願いできる?」


「お姉ちゃんも手伝ってね。」


その後、彼らのためにも追加で料理を作ってあげたらめちゃくちゃ感謝された。やっぱ全然味が違うらしい。



出発からおよそ2週間がたった。


「辺境伯様、もうすぐ王都になります。」


外から護衛の声が聞こえてくる。護衛は馬車の中と外で分かれているのだが私たちが女で子供ということで馬車の中で護衛をさせてもらっている。正直これに関してはかなり感謝している。私は、体力がないのでこういう時にはやはり騎士の方が頼りがいがある。


「失礼、中を確認しても?」


外からの声が聞こえたと同時に馬車の扉が開かれる。


「カシム辺境伯ですね。どうぞお通り下さい。」


「うむ、ご苦労。」


私たちが通っているのは、貴族専用の出入り門で一般の出入り門と比べて並ばなくていいというメリットがある。打が貴族しか通れないのでもちろん確認はある。ちなみに貴族じゃないのにここを通ろうとすると下手すると首ちょんぱの可能性があるのが怖い。私たちは、今回ライアさんの護衛扱いなので通ることができる。


「国王陛下との謁見は明日だ。服装は普段の装いでいいらしい。とりあえず今日はゆっくりしてほしい。」


「分かりました。」


とりあえずここでライアさんとは別れる。私たちの分まで宿は取っておいてくれたのだがさすがに貴族と平民が同じ宿というのはあまり外聞がよろしくないらしく、すごく申し訳なさそうにしていた。そんなこと気にしなくてもいいのに。


それよりも服装に関して気にしなくていいのは、助かる。正装なんて私一個も持ってないし、何なら巫女服色違いバージョンしか持ってない。


それにしても王都の活気は、すごい。リデアもすごかったが王都はそれ以上だ。あちこちで屋台の客引きは行われているし、冒険者たちの数もめちゃくちゃ多い。そう言えば王都では闘技大会が行われているんだっけ。


「ねえ、リアあれ。」


「うん。孤児たちだね。」


昔お母さんからいろいろ聞いている時に知った。王都には、孤児院があることを。リデアは、領民へのサポートが厚いのと辺境の街というのもあって魔物の被害が多いために住民同士の仲が良いのもあって、そういった孤児がいない。


だが王都は、まずリデアと比べ物にならないほど人が多い。そんなために孤児というものが生まれる。スラムもあるそうだがこういった問題はなかなか解決しない。


目の前にいる孤児たちは、屋台の周りで落ちている食べかすなどを拾っている。屋台の人たちは、すごく迷惑そうな顔をしている。


「おじちゃん、肉串20本ください。」


「おいおい、嬢ちゃん。まさか。」


本数から私がやることを察したのか私に何か言おうとしていたがやんわりと首を横に振っておく。


「いいんです。私がやりたいだけなんです。」


「そうか、ならいい。一本銅貨3枚だから銅貨60枚なんだがサービスで50枚だ。」


「ありがとうおじちゃん。はい、みんなで分けてね。」


「いいの?」


「うん。その代わりみんなで分けるんだよ。」


「ありがとう狐のお姉ちゃん。」


肉串を渡すと子供たちが一斉に駆け寄って分け合っていた。やっぱり子供はお腹いっぱい食べないとね。


「ねえ、リア。やっぱりこれって偽善なのかな?」


「偽善でもいいんじゃない?私たちにもできることは限られているしね。それに子供たちの笑顔が見れたらそれでいいでしょ。」


「うん、そうだね。」


ほほえましく肉串を食べている子供たちを見送りつつ私たちは、今日の宿へと足を運んだ。

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