第24話 スタンピード2
「お前たち!敵の数はまだまだ多い。ゴブリンなんぞ一撃で片付けろ!」
上級冒険者ってのは本当にすごいと俺は思う。目の前で大勢の冒険者を率いているのはこのなかで唯一のAランク冒険者のダリルさんだ。今俺たちは騎士組、魔法士組、冒険者組と3つに分かれて行動している。ダリルさんは誰よりも迅速にゴブリンを処理し、穴が開いてるところにも指示を出している。誰もがダリルさんを信じているからこそみんなが安心して行動でき、危険にも対処することができている。
「オークは、俺たちがひきつける隙を見て攻撃を叩き込め。」
ダリルさんだけでは彼のパーティメンバーもすごい。自ら率先して危険な魔物の対処にあたり、俺たちにできる限り被害を出さないようにしているんだ。あぁ、情けない。力のない自分が情けない。思わず自分のこぶしを握り締めた。
「アレン?」
「ああ、すまない。大丈夫だ。」
ニーナに心配かけてしまった。俺は明らかに自分よりも年下の女の子のエルに負けた。しかも本人の専門は魔法のはずなのに、剣士として負けてしまった。悔しかった。弱い自分に情けなかった。
「はああああああ」
「おい!」
ダリルさんの静止の声も聞かずに俺はオークに向かって突っ込んだ。
「死にさらせえ!」
俺は一心不乱に剣を振り続けた。着るたびにオークの返り血が俺に向かって飛び散ってくる。
「フッ。」
俺よりも小さな子に戦わせている現状を何とかしたい。あんな子供が戦わなくてもいいようにしたい。俺は絶対に強くなってみせる。俺は空色の髪の神秘的なオーラを漂わせる彼女を見つめながらそう誓う。
◇◇◇
今回のスタンピードに対するこちらの目的は、できる限り被害を出さないこと。そしてもう一つ私の力を借りなくても倒せることを証明して見せることらしい。今回、彼ら(ギルドマスターとライアさん)によれば魔法について十分教えてもらった。今度はこちらが恩を返す番だと張り切っているそうでピンチにならない限りは手を出さないでほしいらしい。自分たちの実力確認の意味も含めているとか。
そんな中、私は身体強化の魔法で視力を強化して周りの戦況を確認している。騎士たちはさすがともいえる連携の練度の高さも相まって一番被害が少ない。最前線にライアさんとギルドマスターがいるのはどうかと思う。
魔法師団は後ろから援護をしているので被害は来ない。流石に全員が固まっていては動けないのでいくつかのグループに分かれている。指示はその都度、私が拡声の魔法を使うことで指示を出している。だが一部魔力がきつくなってきている人たちが現れている。それも仕方ない。ずっと休みなしで援護しているからね。
逆に冒険者は、ちょっと特殊だ。全体の大まかな指揮はダリルさんがとっているようで他はパーティごとに固まって動いている。これは合理的な判断だと思う。冒険者たちが騎士団のように大人数での団体行動などできるわけもない。だからこそ冒険者たちは、普段から慣れているメンバーで連携を取り合っているのだろう。
「オークが出てきたぞ。複数人で抑え込め!絶対に被害を出すんじゃないぞ!」
「「「「おおー!!!」」」」
オークはファンタジーでよく見るような大きな豚の魔物だ。移動速度は遅いものの力が強いために駆け出しの冒険者には少し荷が重いとされている。
騎士たちは盾持ちが攻撃を引き付けて、そこをほかの騎士たちが一斉攻撃の構えをとっている。この作戦で一番負担のかかるのは盾持ちなのでできる限り攻撃を受け流すようにしたり、少しでも空いた時間は盾を地面に置くなどして体力の温存を図っていた。
「オークに魔法は効きづらい。魔法師団はオークの足元を狙うように。足止めに徹しなさい。魔力の切れた人たちはすぐに下がって休みなさい。」
「「「はい!」」」
逆に魔法師団にとっては厄介だ。オークに魔法は効きづらい。その体の分厚い脂肪に魔法が阻まれる。そのためここでは足止めに徹することにする。少しでも冒険者や騎士たちの負担を減らすためだ。
(え?)
ここで私は驚くような光景を見た。冒険者はランクが上になるほど少なくなる。今回は特に王都で闘技大会が開かれているというのもあってかなり少ない。ここにいるほとんどのひとたちがDランクだ。まぁ、そんなこと言ったら私Eランクですけども。
冒険者は、ダリルさんを中心に回っている。ランクが高い人たちほど経験を積んでいる人たちで対応力が文字通り違う。高ランクの冒険者の指示に従うのは、生き残るうえで非常に重要なことなのだ。
ダリルさんたちのパーティがオークを足止めし、そこを数の暴力でたたくという作戦を冒険者たちは行っている。そんな中、アレンが一人突っ走ったのだ。オークにめがけて一直線で突っ込んだ彼は、一心不乱に剣を振り続け、何と一人でオークを倒してしまった。オークはDランクのパーティで狩ることを推奨されているのだが。なんと彼はEランクなのに単独撃破をしてしまった。
そこを見ていると彼と視線が合った。まるで私のことを獲物のように思っているかのような目線だ。寒気がした。突然のことにびっくりしたもののすぐに彼のパーティメンバーに頭を引っ張られ引きづられていった。何だったのだろうか。
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