第22話 返して私の休日
「俺と模擬戦してくれないか?」
「へ?」
MOGISEN?模擬戦だと・・・。なぜ?あまりにも突拍子に言われたアレンの一言に思わず変な声が出てしまった。
「あの時、ゴブリンの群れから救ってくれたのがお前ならお前はきっと強い。俺は強くなりたんだ。だから強い奴と模擬戦がしたい。どうだ受けてくれないか?」
受けてもいいけど、今日は久しぶりの休日。適当な依頼を受けて済ませるぐらいがいい。ということで助けてほしいという思いを込めてカノンさんに視線を送った。
「そうね、私も実際にエルちゃんが戦うところを見たことがなかったし。よし私が審判をやるから訓練場へ行こうか。」
「そんな・・・。」
「でもエルちゃんももう少し友達とか作ったほうがいいと思うし、いい機会よ。」
「分かりました。そこまで言うなら行きましょう。」
確かに私にはこの街での同年代の知り合いはいない。ここはカノンさんの小声でのアドバイスに従うことにしよう。
◇◇◇
模擬戦で使うのは基本的に木製の武器だ。やはり刃引きされた武器と言えど危険はあるし、それにけがをした際に治癒術師に治療をお願いするのにもお金がかかる。そのために模擬戦は木製の武器で行われる。高ランクの冒険者や騎士同士の模擬戦の場合はそうとも限らないが。
「ねえ、エルちゃんの武器ってどうやって手に入れたの?」
「あぁ、これは家にある貴重な一本の魔剣ですよ。親の形見なんです。」
「ごめんね、重たいこと聞いちゃって。」
「いえ。」
私の武器の異常性にカノンさんが気付いたのか聞いてきたのでとりあえず昔から考えてた嘘を話す。こればっかりは真実を話すわけにもいかない。でもカノンさんがこのことを聞いてくるのもわかる。具体的に言えば私のような低ランクな冒険者に対して武器の質があってないということだ。正直この武器の性能は異常だと思う。切れ味もすごいし、魔法もすごく使いやすい。そして何よりもかっこいい!!!雪のような装飾に透き通るような刃。こういうところは男としての感性が抜けてないのかもしれない。
ちなみに親の形見というところだけはあっているかもしれない。だって今はお母さんじゃなくてリアだし。
「それじゃあ、用意はいい?」
「はい。」
「大丈夫です。」
ニーナとミアは少し離れたところから心配そうにアレンを見ている。今回の勝負では私は魔法を使ってもい事になっている。実際私が得意なのは剣術じゃなくて魔法だし、種族的にもいいままでの事例からしても私は魔術師と思われているだろう。
「じゃあ、初め!」
「行くぜっ。」
アレンが私にめがけて突っ込んでくる。それは正しい対応であり、間違った対応だ。確かに魔術師は距離を詰めて近距離からたたくというのが正しい。
でも私はただの魔術師じゃない。アレンが私めがけて振りかぶる剣を木剣で軽くいなして、がら空きのお腹をけって見せた。するとアレンは軽くよろけつつも私の方を信じられないといったような視線を向けてきた。
「どうしたの?こないの?」
「うおおおおお。」
殺気を込めてアレンに思いきりぶつけると、襲い掛かってきた。
そこからの試合展開は一方的だった。ひたすらアレンの攻撃をいなして攻撃を加える。私は魔法での身体強化を使ってないのもあり、攻撃は非力なものなので同じ場所をひたすら狙った。やがてばて始めたのでとどめを刺す。
「はぁはぁはぁ。」
「
よろけた足を魔法で凍らせて木剣を首に添えた。
「そこまで。」
カノンさんの声に合わせて魔法を解除する。その場にアレンは倒れこんでしまった。
「「アレン!!」」
「ちょっとやりすぎたね。
申し訳なさ程度に治癒の魔法をかけておく。
「ありがとう、エル。それにしてもあなたやっぱすごい。最後のあの魔法にしてもすごく繊細なものだった。」
「あぁ、ありがと。」
褒められ慣れないのもあってちょっと恥ずかしい。派手な魔法を使ってほめてくれるのはこれまでも何回かあったが。繊細な魔法を褒められることがなかったからだ。ニーナちゃんとは良いお友達になれそうだ。
「やっぱ強いなぁ。世界の広さを思い知ったぜ。」
「世界の広さなんて速いでしょ。」
「そうかもな、でも年下の少女にしかも魔法をほとんど使われないで負けたしな。完敗だよ。」
そうはいってもアレンは大体15歳くらいで身長も高いし、剣の腕もよかった。経験さえつかめば絶対に強くなれる。
私は、小さいころから超人に鍛えてもらってたし、なんかズルなような気がするんだよね。とそんな時にーーー。
カーンカーンカーン。
鐘の音が大きく響いた。
「スタンピードだ。魔物が押し寄せてくるぞ!!!!」
どうやらこのまま私の休日はなくなりそうだ。
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