第19話 魔術指導 上

今、私の目の前には、辺境伯様に冒険者ギルドのギルドマスター、加えて辺境伯お抱えの騎士団に魔法師団までいる。最もこの場にいるのはメインは魔法師団で騎士たちは、数が多すぎるので隊長格のみだ。ちなみにリアは、私の後ろに控えている感じ。あくまでも私がメインだそうで。私たちがいるのは辺境伯様のお城のそばにある訓練場だ。ここで今から魔法の講義をする。


ちなみに魔術師たちが目をキラキラさせているのに対して騎士たちの目は懐疑的だ。彼らにしてみればメインは剣技であるわけで魔術はあまり関係ないのだから。


「それでとりあえず騎士たちも集めさせてもらったが理由を聞かせてもらえるだろうか?」


開口一番ライアさんが質問してきた。


「えぇ、それはもちろん。私が魔法について教えることで騎士さんたちもより強くなれるからですよ」


その一言にざわめきが生じた。なんせ騎士たちが使うとされる魔法は身体強化のみだからだ。


「とりあえず後で説明するので待っていてください。まず最初に一番大事なことを言っておきますね。あなたたち人間が使っているのは、魔法ではありません。」


「待ってくれ。じゃあ、今まで私たちが使っていたものは何なんだ?」


「あれは、私たちは魔術と呼んでいます。」


壮年の魔法使いの方が質問してきたので私は返事をしました。


「魔法は、魔力を直接操作して世界の事象を改変するものです。。それに対してあなたたちが使っている魔術は魔力を魔法陣に流し込むことで世界の事象を改変して魔法を発動しています。魔法陣を用いて魔法を発動するすべそれを略して魔術と呼んでいます。」


私の言葉に納得したかのような少し疑問に思うような顔があちらこちらに浮かんでいます。そりゃ言葉だけで納得できるわけがありません。そこで実践です。


「おじさん、水球ウォーターボール使ってもらえます。えーとあっちの方に向かって打ってもらえますか?」


先ほど質問してきた壮年のおじさんに私は誰もいないところへ魔術を使ってもらうように指示した。


「分かった。水球ウォーターボール


おじさんの生み出した水球はかなり大きく誰もいない方向へめがけて一直線に飛んで行った。初級魔術に分類されるものなのに威力もかなり大きい。少なくとも昔のカインのへなちょこ火球ファイアーボールなんかとは比べるまでもない。ひょっとしたらこの魔術師の中でもかなりの腕前の方なのかもしれない。


「じゃあ、見ててくださいね。水球ウォーターボール


「「「「「なっ!?」」」」」


別に詠唱などする必要はないが分かりやすいように声に出しておく。私がやったのは一度に3つの水球を生み出し、それを3つで円を描くように不規則に動かしながら先ほどのおじさんと同じ所へ命中させた。こう聞くだけでは地味に聞こえるかもしれないが彼らにとって衝撃的な事実であることは違いない。


「まあ、こんな風に魔法と魔術の圧倒的な違いは自由度の違いです。あらかじめ決められた術式通りに発動する魔術に対して魔法はほぼ自由自在です。まぁ、ここで残念なお知らせとして人間は魔法が使えません。」


私の一言にあからさまに落ち込む魔法師団たち。厳密に言えば魔法は人間にも使うことができる。ただ身に付けるのに時間がかかるだけだ。それとは別に教えないのには理由がある。私が人間を信用していないからだ。人間よりも優れている魔法という技術。ただでさえ人間には数の暴力という名の必殺技があるのだ。数という面で負ける私たち亜人の武器をそう簡単にやすやすと渡すわけにはいかない。ここの人たちは亜人に対してあまり否定的な意見はないからよいが他ではそうとは限らない。亜人狩りを推奨している人たちもいるのだ。


ただ魔物の危機が迫っているといわれる現状人間に多大な被害が訪れるのもあまりよくない。私にも気に入っている人たちだっているのだから。だから私は、人間に役に立つ程度で私たち亜人にはそこまで気にしないくらいの魔法の知識を授けるのだ。


「ただ今よりも格段に効率よく魔術を使う方法なら教えられます。その方法として皆さんには魔力操作を覚えてもらいます。」


私の言葉にぽかんとしている。いや、人間ってやっぱ魔法に対して全然なんだね。


「魔力操作というのはですね。自分の体内にある魔力を操ることです。まあ、そのまんまですね。このメリットとしては自分の最大魔力量が増える。適切な魔力の使い方が分かる。そうすることで魔術の威力、燃費ともに向上します。」


私のあげたメリットに思わず興奮する魔法師団たち。魔力量や威力に悩んでいた人もいるだろうしやっぱうれしいよね。でも残念ながらこの訓練すごい地味なのよね。


「やり方は簡単。体内にある魔力を操ろうとするだけです。この時に大切なのが意志の強さです。魔法で大事なのは何かを成し遂げようとする思いの強さです。なので絶対に動かしてやるっていう意思をもってやってみてください。はい、どうぞ。」


私の言葉を気に一斉に魔力を操ろうとする魔法師団たち。ただみんなこれがきついのかすごい汗を浮かべています。まあ、初めてやったのなら無理はないよね。


「おっ、少し動いたぞ。」


一番最初に成功したのはやはり例の壮年のおじさんだ。やはりこの人が一番魔術がうまいのだろう。


「その調子です。ちなみに皆さんが魔術を何度も発動させて練度をあげれば魔術の扱いがうまくなるというのは事実ですがやる必要はありません。というのもやっていることは魔力操作と一緒だからです。ただ魔力操作の効率を何十倍にも悪くした感じのものですけどね。」


私の言葉にしょんぼりしている人たちがいる。それはほとんどが高年の魔術師である。彼らは今までずっとやってきた方法が間違いなのを知り、大きくショックを受けているようだ。逆に若い魔術師たちは目をキラキラさせている。最も技量はやはり年長組に劣っているためになかなかうまくいってないが。


(さて)


私が目につけたのは騎士団たち。今のところ騎士たちのためになるようなことは教えていない。魔術師たちはもうどうにでもなるだろう。私は暇そうな騎士たちを見ながら、教えるべきことを考える。

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