第15話 薬草採取
「嬢ちゃん気をつけろよー。」
「うん、ありがと。おじちゃん。」
さて、門番のおじちゃんにも挨拶しておいたので薬草探しへと行きましょう。と言っても行先は街のすぐそばでちょっと街道をそれた程度でいい。私が街から出てきたのは、王都側の方の門だ。逆に帝国側の門は出入りが厳しく、魔物にも備えないといけないこともあって、常に複数人の門兵によって守られている。そのおかげで街の平和も守られているので私もきちんと感謝しないといけない。
「よし、ここらへんで《ウォーターシャワー》」
別に魔法を使うのには、別に詠唱なんて必要ない。でも魔法は、イメージが大事なので私は使う魔法に名前を付けている。そうすると区別しやすいしね。
それと実はというと人間でも使おうと思えば魔法が使える。だが魔法に手製のある種族の私でさえ年単位で時間がかかったのだから人間が魔法を身につけようとしたらどれほど苦労するのかは計り知れない。
結局、ある程度魔力が制御できるなら人間にはやっぱり魔術のほうが向いていると思う。
そんなこんなであたり一面を濡らした私は、ひたすら薬草を探す。薬草と雑草の見分け方は、水をはじくかはじかないで分かるといったけども薬草には一か所だけ水がしみこむ場所がある。まぁ、葉脈なんですけど。葉脈だけにしみこむのでめちゃくちゃわかりやすいんですよね。カノンさんの話によれば薬草採取に行く人の多くは、水筒を余分に持っていくなどするらしいです。私は、魔法が使えるので気にしなくてもいいのですが
(もういいかな。)
鞄には、パンパンに詰め込まれた薬草の数々。いくら報酬が安い依頼といえどこれならある程度の報酬はもらえるはず。
(ん?これは・・・)
私の優秀な狐鼻がとらえたのは血の匂い。しかも獣の類ではないようなので人間のものだと思う。私は、血の匂いのするほうへと駆け寄った。
◇◇◇
俺たちは最近冒険者になったばかりの駆け出し冒険者だ。俺は、生まれた時からこの町に住んでいるだから騎士の人たちを見ることもたびたびあった。そして彼らを見て強く思った。俺も強くなりたいと。祖いて目指したのが冒険者だった。今日は、ゴブリンを狩るつもりだった。もちろん、ゴブリンだからと言って油断するつもりはない。それは俺の父さんにいやとなるほど聞かされていたからだ。父さんは元冒険者だ。Bランクにまでなったそうだ。そんな父さんの体はいつも傷だらけだった。そんな父親を見たからには油断はない。そう思っていたのだが・・・。
(どうするんだよこれ。)
俺はパーティを組んでゴブリン退治にきていた。魔法使いのニーナと盗賊のミアと剣士の俺の3人パーティ。もちろん、最初は順調だった。ゴブリンを見つけてはすぐに協力して狩っていた。だがその途中ー。
「グギャアアアア。」
ゴブリンが叫び声をあげたのだ。もちろん、すぐに倒したもののそこへ新たなゴブリンが次々と来たのだ。1匹や2匹ではない。100匹ぐらいいるんじゃないかと思った。ゴブリン一体一体は弱い。だが数の暴力によって俺たちは徐々に押されていった。ニーナは魔力がつきかけ、ミアも体力ギリギリ。あきらめて死のうかと思ったその時・・・。
「グギャ」
「グギッ」
あちこちで氷の雨が降り注いだ。それもゴブリンをせん滅するかのようにここしかないと思った俺は、二人に声をかける。
「逃げるぞ!!」
俺たちは全速力で逃げ帰った。ありがとう、俺たちを救ってくれた名前も知らない方。
◇◇◇
私が慌てて近づいた時には目を疑った。ゴブリンと言えば知能が高くない。そのため彼らは連携をとったりはしないはずだ。だが目の前の光景は私の認識を改めさせるのには十分な光景だった。3人の冒険者に対して圧倒的な物量で押し寄せるゴブリン。文字通り数の暴力だった。それに加えて、剣士の子以外はもう限界そうだった。その剣士の子も息が切れかけていた。本来は他人の狩りに横槍を入れる場合は、声をかけたりする必要があるが今回は、相手に余裕がなさそうなので手を貸すことにした。
「
私が発明した広範囲のせん滅魔法だ。ゴブリンに降り注ぐ無数のつららがゴブリンを容赦なく屠っていく。
「逃げるぞ!!」
剣士君の声にほかの二人もついて撤退を始めた。そこで私に押し付けて撤退したのはいい判断だ。このまま戦い続けてもらっても足手まといにしかならないからね。
30秒ぐらいするとすぐにゴブリンは片付いた。
「うえぇ。」
ゴブリンの死体がごろごろと転がっており、ゴブリンから漂う死臭が私を不快にさせる。
「
周りの木に引火しないように気を付けながら死体を燃やす。魔物の死体は魔物を引き寄せる効果があるという。だからすぐに処理するかその場から離れるなどしないとさらに余計な魔物が来る恐れがある。しかもどういうわけか魔物の死体によって来るのは、その死体の魔物よりも確実に上位の魔物しか来ないという質の悪いもので駆け出し冒険者からたまったもんじゃない。
(はあぁ、ちょっと調べるかな。)
ゴブリンが戦術を用いて襲ってきたことに頭を抱える私は、薬草採取のことなどすでに忘れていた。
※ ※ ※
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