第14話 女の人って怒らせたら怖いよね

「ん?んんー?」



目が覚めた私は、あたりを見渡した。隣には、寝間着のリアが気持ちよさそうに寝ている。思わずなでなでしたくなるような気がする。


「おはよ、お姉ちゃん。」


「おはよ、リア。えっと起こしちゃった?」


「ううん、そんなことないよ。それよりも着替えてご飯食べに行こ。」


リアは、地上に降りてからは人間と同じように食事や睡眠をとっている。これも髪をやめた弊害である者の本人は、まったく気にしておらずむしろ「睡眠ってこんなに気持ちいいんだね~」とむしろ感心していたりする。


そしてお母さんがリアとして暮らすようになってから妙にリアの言動が子供っぽい。私の美人でクールでかっこいいっは親の面影はそこにはなく、どこか抜けてるかわいい妹って感じだ。


(やばい、早く準備しないと)


考え事にふけっていて全く手の動いていなかったので慌てて私は、着替えた。ちなみに今日は初めて依頼を受けるつもりなのでもちろん戦闘服である。(例によって巫女服)


◇◇◇


「もうっ、おねえちゃん。遅いよ。」


「あはは、ごめんごめん。おばさん、私も朝ごはんくださーい。」


「はいよ。待ちな。」


下に降りるとリアが先に降りていた。私が来るのが遅いことにぷりぷりしている。はたから見れば仲のいいしまいだが私は、正体を知っているので乾いた笑みしか出てこなかった。


私たちが泊まった宿の名前は金の卵。何でも鶏が卵からかえるということでそこからこの宿から出ていった冒険者が立派な冒険者になってほしいという願いを込めてこの名がつけられたみたいだ。昨日ギルドから出る前に受付のお姉さんから聞いたところ勧められた。朝と夜に食事のついてきてその上防犯もしっかりしている。その分ちょっと高いが。しばらくすると料理が出てきた。


「はい、どうぞ。お代わりほしかったら言ってちょうだいね。」


「「はーい。」」


出てきた料理は、パンの間に肉と野菜が挟まった感じの料理だった。サンドイッチというよりもホットドッグに近いと思う。それに加えて野菜のスープが添えられている。軽く手を合わせて、パンにかじりつく。


「おいしい・・・。」


お肉の肉厚に対して野菜のしゃきっとした感触が非常に合っておいしい。この世界では基本的に塩以外の調味料は貴重だ。故障などが使われるのももっぱら貴族とかの料理だ。つまりこのパンは、塩しか使ってないにもかかわらずここまでおいしいのだ。料理人の腕の高さがうかがえる。リアに行った手は目をキラキラさせながらかぶりついている。


(あったかいなあ。)


スープもかなりあっさりとしたものですぐにのどを通った。最終的にリアがパンをお代わりして朝食を終えた。私は、スープとパンでもう満足です。


◇◇◇


朝食を食べ終わったら私は、リアと別れる。大通りを通って街の中央の広場まで目指す。そうしたらすぐ近くにある冒険者ギルドの扉を開ける。


(うわぁ。)


朝なのもあり、酒臭いということはないのだが昨日とは違った熱気が広がっている。


(私もあれに加わらないといけないの?)


冒険者ギルドでは、依頼は新しい依頼は朝に張り出される。私が来たのは朝。時計がないので正確ではないが前世の時間としては大体7時ぐらいだろう。依頼が張り出された場所にはたくさんの冒険者が群がっている。スーパーのバーゲンセールみたいになっている。体格的に小さいので入ることもできるが十中八九押し出されるのが目に見えているので静かに見守ることにした。


しばらくしたのち人がまばらになったので先ほどまで多くの人がいた場所に駆けつける。


(うーん。)


やはり先ほどまで多くの人が奪い合ってたのもあり、めぼしいものはほとんどない。


(やっぱ最初だし、これかな。)


私が手に取ったのは、薬草採取の依頼。薬草を3束見つけてほしいという物。報酬は、薬草3束に付き200ギル。ギルはこの世界でのお金の単位だ。分かりやすく言えば


1ギル=1円


10ギル=小銅貨1枚


100ギル=大銅貨1枚


1000ギル=銀貨一枚


10000ギル=金貨一枚


貨幣の価値としてはこんなもんだと思う。ちなみに金の卵の一泊がご飯付きで銀貨4枚。二人部屋で6枚なのでさっさと稼がないと大変なことになる(涙目)。しかもお風呂などないので体を洗いたい場合は濡れたタオルなどで体をふくことになるがそれにもお金がかかる。世の中世知辛いのじゃあ~。


「あっ、お姉さん。」


「お姉さん?あっ、私の名前はカノンよ。エルちゃん。」


受付のところに行くと昨日冒険者登録をしたときにいたお姉さんがいた。カノンさんというらしい。名前昨日聞けてなかったから助かる。


「それでカノンさん。この依頼を受けたいんですけど。」


「薬草探し?あぁ、常設依頼のやつね。最初というのも考慮しても問題ないわね。はい、依頼書ちゃんとなくさないようにね。」


「はい、気を付けますね。」


「あぁ、それと昨日。路地裏の近くで冒険者の氷像が見つかったんだけどエルちゃん知らない?」


「え、えっとぉ。」


私がそういった瞬間にカノンさんの瞳がすっと薄まった。その目からは穏やかではあるものの逃がすつもりはないという意思を感じる。


私は、前世から嘘をつくのが苦手だ。今も両手の人差し指を互いにつんつんさせながら視線を思いっきりそらしてもじもじしている。はたから見れば自分が原因ですよと述べているようなものである。


「えっと、何があったの?」


これ以上逃げられるような気もしないので昨日あったことを正直に述べる。するとその直後にカノンさんが頭を抱えだした。その直後にすぐさま笑顔を取り戻した。ただし目は全く笑ってなかったが。


「うん。それは、あいつらが悪いわ。エルちゃん、私はちょっとしてくるから。気を付けてね。」


「はいっ。カノンさんもお気をつけて。」


私は、この瞬間カノンさんは起こらせないようにしようと思った。

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