第13話 ギルドに行こうぜ

私は今おかあ・・・リアと一緒に冒険者ギルドの目の前にいる。それにしてもお母さんのことをリアというのはなかなか慣れない。そりゃあまあ、妹歴数日に対して母親歴12年なのだから当たり前かもしれないが・・・。人前でうっかりお母さんなんて呼ばないようにしなくちゃ。


「よっし、リアちゃん行くよ。」


「リアちゃんだって。ふふふ。」


隣の狐がちょっと怪しい顔をしているが気にしたら負けなんだろう。ギルドのドアを開けると昼間ということもあり、人はそれほど多くいないもののまっ昼間から酒を飲んでいる人たちがいた。ギルドの中には酒場が備えられている。基本的に冒険者はギルドの管轄の飲食店でしか酒は飲めないようになっているらしい。理由としては酔っぱらって暴れる冒険者を止められる人がいないからだそうだ。


真昼間にもかかわらず酒を飲んで過ごしている冒険者というのは、裏を返せばそこまで必死に働かなくてもいい人ということで少なくともある程度の実力はあるということなのだ。新人の冒険者などでは危険度の低い仕事しか任せられないこともあり、稼ぎも少ない。日を超すだけの費用を稼ぐだけで精一杯なのだ。


そんな状況の中、私たちには様々な視線がぶつけられている。私たちを侮る視線はもちろんのこと、次節お尻や胸などにぶしつけな視線を向けられることがある。女性がそういった視線に鋭いというのはやはり事実で私にもすぐに分かった。だが悲しきことかなみんな私よりもリアの胸の方に視線を向けている。いいですよ、私はどうせ絶壁ですよ。


胸のことを気にするあたりもう完全に女の子に染まっているがそんなことは気にせず、仲良くリアと手をつないで空いてる受付のところに並ぶ。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。本日はどういったご用向きで?」


「冒険者として登録しようと思ってきたんです。」


「かしこまりました。冒険者として登録するにあたって注意することがありますがお聞きになりますか?」


「はい、お願いします。」


「分かりました。まず、冒険者にはその強さを示すための指標としてランク分けがされております。具体的にいえば・・・」


お姉さんの話をまとめるとこうだ。まず冒険者にはF、E、D、C、B、A、AA、Sの8つのランクに分けられているそうだ。FとEが見習いレベル。Dは見習い卒業レベル。Cで一人前。B以降は何かしら才能を持っている人ばかりでなかなかなるのが厳しいようだ。だがどんな人でも基本的にはCまではなれるようだ。ちなみに騎士のレベルは基本的にさいていでもB以上の腕前らしい。


「それから基本的にギルド内での抜刀は認められてないのでお気を付けください。」


うん。これは気を付けなければならない。万が一冒険者の資格がはく奪とかになって仕事に困るとなればたまったもんじゃない。


「それではこちらの紙に種族と得意なことなど書いていただければ」


もちろん私の場合、特技など魔法しかないので魔法と書いておく。名前は、エルフィーナだと長いのでいつものようにエルで。ちなみにリアの方を覗くと特技何でもと書いていた。


「随分と多芸な妹さんですね。」


「そうなんですよ。魔法だけの私と違って。」


紙を受け取った受付嬢の顔が引きつっている。ちなみにリアはすごく堂々としている。リアの肝の大きさには見習わないといけない。単にどうでもいいだけなのかもだけど。


「ではどうぞ、これがギルドカードです。最後に血を垂らしていただければ完了です。」


指に針を刺してカードに血を垂らす。するとわずかに魔力が抜き取られるかのような感覚を覚えた。


「えっとこれで終わりですか?」


「はい、完了ですよ。これで本人登録もできました。そのカードは本人にしか使えないようになっているのでお気を付けください。」


そのまま私たちは、ギルドを出た。おかしいなギルドと言えばガラの悪そうなおっさんに絡まれるのが定番と思っていたのに。


私たちは、その後しばらくの間今日止まるための宿を目指していた。


「エル。」


「分かってるよ、リア。」


宿に行くのをやめ、裏路地に入る。するとある程度入ったところで止まり、後ろにいる先ほどから尾行している人たちへと声をかける。


「出てきなよ、先ほどからつけてきてるのは分かるんだ。」


私の声に反応したのか物陰から5人の男が飛び出してきた。


「ほう?よくわかったな、嬢ちゃんたち。どうだ?おじさんたちといいことしないか?」


「いいや結構だね。私たち忙しいからさ。」


これだけ不快な視線を向けられれば私にも何を狙っているかわかる。リアに至っては不快すぎて視線だけで殺しそうな目付きだ。それでも手を出さないのは私のためなんだろう。


「そうか、なら仕方ない。行くぞお前ら!」


5人の男が全員一斉に襲っていた。リアは一歩引いてこちらを見ている。どうやら完全に私に任せるようだ。


私は魔法で身体強化をし、一気に懐に潜り込み腹パンをする。男たちは、私に反応できるわけもなく腹を殴られた男は壁に激突した。


「よくも、親分を。」


(いや、死んでもないのに。)


私に親分をやられたことが癪なのか男たちは、腰にある獲物を抜いた。完全にこちらを殺すつもりなのが分かったのでこちらも遠慮はしない。


吹雪ブリザード


「なんだこれ!?」


「うごけねぞ。」


「魔法なんて卑怯だぞ。」



魔法によって起こされた氷はあっという間に相手の体にまとわりつき相手を動けなくさせた。男たちが口々に文句を言ってくるがそんなものは知らない。使えるものを使って何がいけないのだろうか。


「うん。お疲れ、エル。」


「ありがと、リア。」


魔法を使い終わった私にリアがねぎらいの言葉をかけてくれた。


「いや~、エルのおかげですっきりしたよ。あと少しで手を出すところだったし。我慢してよかった。」


「あははは。とりあえずあんなのほっといていこうか。」


翌日、体中がびちょびちょの男4人におなかの鎧が思いっきりへこんだ男が見つかったとかなんとか。

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