第11話 旅立ち

私は12歳になった。私がアリアたちとかかわるようになってから私の生活は大きく変わるようになった。母さん以外の人たちとの交流はやはり私にとっては刺激的であり、とてもいい経験となった。


ギルは、魔法こそ使えないものの剣の腕はかなり良くなっており、身体強化の魔術が使えるようになってからはますます強くなった。特に魔力操作の練習をしていたこともあり、まだぎこちないものの瞬間的に強化する部位を限定するなんて言う芸当まで身に着けている。


カインは、順調に魔術師としての腕を上げていた。魔力量もかなりのものだし、魔術によって生み出した火球の軌道を変えるという技術まで身に着けた。魔術で一番大事なのは、発想力だと思うのでこれからも試行錯誤してほしい。シーナに至っては頭がおかしい。最近ではいつの間にいなくなっていることもある。やはりあの超人に任せたのは間違いだったかもしれない。アリアは、弓の腕が上がったのもそうだが回復魔術の成長の方がすごい。ついでに言えば範囲効果のある魔術まで身に着けたようで・・・このパーティおかしくない?


そして今日は何とみんなの旅立ちの日なのだ。ついでに言えば私も。でもみんなと私の行先は違う。最初はみんなと冒険できることにワクワクしていた。だがある日ギルにこんなことを言われた。


「エル、俺は最初冒険者なんて簡単に目指せるものだと思っていた。だがそんなことはなかった。あの日エルに思い知らされた。それから鍛えてもらって俺らもかなり強くなったと思うんだ。でも俺はもっと外を知るべきだと思った。そこで俺たちは、冒険者学校を目指すことにしたんだ。親父やお袋には申し訳なかったけど笑いながら賛成してくれたんだ。だから俺たちが一人前になった時にまた一緒に冒険しようぜ。お前はもっとすげえやつになってる気がするがな。」


私はその言葉を聞いてなんてすばらしい人たちだと思った。彼たちは私のことを対等に見ようとしてくれてる。確かに私の方が種族的な特性や小さなころからの努力もあって彼らよりも強い。少なくとも魔法に関しては決して負けない。相手のことを敬うばかりで決して対等に見てくれないという可能性もあった。だが彼らは、そんなことをしなかった。やっぱり、どこの世界でも幼馴染という物はいいと思う。少なくとも私はそう思う。


今私の前にはギルたち4人のこの世界での幼馴染がいる。これから王都行きへの馬車に乗り、冒険者学校を目指すためだ。


「じゃあね、エルちゃん。私たちもっと強くなるから。」


「エルのおかげで僕も魔術に自信が持てるようになったよ。ありがとう。」


「エルありがとう。エルとの冒険楽しみにしてる。」


アリア、カイン、シーナ。みんなが口々にお礼の言葉を述べてくる。


「うん。私もみんなとの冒険楽しみにしてるからね。」


ギルに至ってはどこか恥ずかしそうにこちらを見ている。ただの照れだろうけども。


「またな。」


「またね。」


静かにただ一言だけを交わし、こつんと互いのこぶしをぶつけた。そのまま、ギルはおとなしく追うと息への馬車に乗った。私はみんなの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。


◇◇◇


「エルちゃんも今日旅に出るんだよね?」


「うん、みんなが行くのに私だけのんびりしてるわけにはいかないからね。」


「そっかあ。じゃあ、私からの餞別をあげるよ。はい。」


「えーと、これは。」


私に渡されたのは一振りの刀と巫女服。


「その刀の銘は雪時雨。エルちゃんの見た目にもぴったりでしょ。一種の魔剣で魔法の発動の杖変わりもできるよ。で刀といえば和服。和服といえば巫女服。いや~、私娘に巫女服着てもらいたかったんだよね。すごい似合いそうだし。」


見ただけですごさが伝わった。刀の方は柄に雪の装飾がされており、刃もきれいな曲線が描かれており、見るだけで魅了されてしまうような輝きを誇っていた。巫女服の方もすごかった。魔力による付与がなされており、《防汚》《再生》《防刃》の効果が付与されていた。そんじょそこらの鎧よりもよっぽど効果がある。とは言え、この世界にきてから私もおしゃれには興味を持っていたのもあり、正直めちゃくちゃ嬉しいのだが…


「やっぱりお母さんはついてこれないんだよね?」


「・・・神が一個人に入れ込むのは良くない。それは世界の秩序が乱れるから。」


数秒の空白ののち彼女は続けた。


「最初、私があなたの母親になったのも成り行きでしかなかった。私は神だから。すべてが平等であると同時にすべてに興味がなかった。」


「・・・」


「でも私は、変わった。あなたとかかわることで人という物の良さを知った。互いに支えあう人間。少しずつ成長していく我が子。見ていくうちにまだ一緒にいたいと思うようになった。そこで私は、エルと一緒にいられる方法を探して、見つけた。」


「それって!?」


「そう、私が神をやめればいい。」


「え?」


こればっかりは許してほしいと思う。なんてことを言うんだこの人と思う。神をやめるなんてできるの?


「神が一個人に入れ込むのは良くない。なら神をやめればいい。てことで私を今まで支えてきてくれた子に神としての権能を渡してきた。大丈夫、あの子は人格者だから。」


(うわぁ、それ絶対その一苦労してるよ。)


でも私は、また一緒に入れることが分かったので良かった。ひょっとすると私は、マザコンなのかもしれない。


「というわけでこれからもよろしくね、。」


私の前で甘ったるい声で私をお姉ちゃんと呼ぶのはもちろんお母さんだ。狐といえば変化である。お母さんは変化でその姿を私と同じぐらいの身長にした。だが私と違うのは、輝くような金髪に透き通るような灼眼。私と違って大きな胸。少なくともDはあると思う。もげてしまえ。


え?私も変化で大きくすればいいって?何か負けた気がするからヤダ。


そんなこんなでこの日一人の創造神ミリアがなくなり、一人の狐人族リアが生まれた。こうしてはたから見ると姉妹。だがその実情は親子という変わり者たちは、新たな街へと旅に出た。

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