第6話 狩りに行こう 上
ふっふっふ。ついにこの時が来ましたよ。
魔法の修業を始めて苦節3年。私は8歳になりました。なんとですね、今なら自分の魔力の半分ぐらいなら自在に操れるようになったんですよ。
え?しょぼいだって?ちっちっちっち、これだから甘いんですよ。3歳のころと比べて今の私の魔力はものすごく増えました。ええそれはもう。なんと魔力だけならドラゴンにも負けないそうですよ。まぁ、全魔力を完全に掌握できて初めて立派な魔法使いらしいのでまだまだなんですよね。
え?剣はどうしたのかって?ちゃんと今でも続けてますよ。ようやく素振り100本ができるようになったので型を教えてもらってるんですけど、もうそれが下手すぎて泣けそうになります。まさかここまでとは思ってなかったので普通に泣けます。
おっと話がそれました。今日は初めての実践なのです。ようやくですよ。私の力を見せる時が来たかと思いました。今日の相手はゴブリンです。ファンタジー物でよく出てくる序盤の敵ですね。特徴はやっぱり緑の小さな人型のモンスターらしいです。やっぱどこの世界でもゴブリンの共通認識は変わらないんだなと思いました。
「じゃあ、エル。今日は初の実践だけど一つ縛りを設けます。魔法禁止でゴブリンを倒しなさい。ゴブリンの魔石を一個でも持ってこれたら合格よ。」
「え?」
今耳を疑うようなことを言われたような気がする。魔法禁止?剣の才能もないこの貧弱ボディで魔法を使わずに?お母さんの眼を見てみたがマジだった。冗談では済ませないらしい。だがこう言った目をしているときは必ず私のためを思っている時なのだ。だから私は素直に頷いた。
「大丈夫よ。今のあなた言っておくけど剣だけでも普通の一般人よりも強いからね?普通の一般人でもゴブリンは倒せるのだから平気よ。」
そう言い残してお母さんは、私に目で森の方へ行くように訴えてきた。どうやら索敵も自分の手で行わないといけないようだ。やっぱり実際にやってみる以上に価値のある訓練はない。
森に入り、今まで以上に周囲に注意を払うようにするつもりだ。今まで通っていた道はある程度舗装されていたが、森の中ではそうもいかない。いつ魔物が出るかも注意しないといけないし、しかも足場も悪いので気を付けなければいけない。
ここまでくるとお母さんの意図がだんだん読める。そう今までの苦労はすべて魔法を使えば解決する。自分の周囲に微弱な風を発生させて何か生物がいたら発見できる魔法。私はこれを<風読み>と名付けたがこれがあれば今のように周囲に注意を払う必要もないし、足腰も魔法で強化すれば足場にも気を付ける必要がない。
つまりお母さんは私にこう言いたいのだろう「魔法ばかりに頼るな」と確かにそうだ。失念していた。私はあまりにも魔法が便利すぎるがゆえに無意識に魔法に頼っていた。私の魔力は規格外なので気づいていなかったが常に魔法を使い続けるなんて魔力の消費の無駄だ。でもお母さんはそのことに気づかせてくれた。
とその時に私の耳がある音をとらえた。
(何かの足音?)
私の狐耳は人よりも優れているので良く音が聞こえる。なので足音が聞こえたほうに注意をむけつつ、木の裏に隠れた。だんだんと大きくなる足音。そこでようやく足音の正体が判明した。
(ゴブリンだ)
緑の肌に醜悪な顔面、少しいやかなり嫌悪感を覚える魔物がいた。ゴブリンはどうやら食べ物探しに夢中なようで、近くにある木の実に目が釘付けだ。逆に私はチャンスだと思った。周囲にはゴブリン以外に目立った気配もなく、そのゴブリンも1匹だけ。このタイミングを逃せばいつチャンスが来るでしょうか。いや来ない。
私は内なる興奮を抑えて、ゴブリンに気づかれないようにそっと近づいいく。思えばこれが慢心だったのでしょう。目の前のゴブリンに夢中だった私は足元にある木の根っこなぞに気づくわけもなく
「ふぎゃ」
「グギ?」
(痛い)
子供の体が精神的に未熟だというのがよくわかった。こけただけなのにものすごく痛い。今にも泣きそうなぐらい。それだけならまだいいのですが、ゴブリンに気づかれした。しかも私はこけている。ゴブリンはこちらを見て下卑た笑みを浮かべた。背筋が凍る思いをした。まさに絶体絶命だ。
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