訪問
昨日拾った猫を見る為に俺と夏美は、凛姉を待つために昇降口にむかったのだが、凛姉が先に昇降口で待ち構えていたのだ。
多分、先に仕事を終えていたのだろう。
いや、もしかすると俺が行った時点で終わってる可能性があるな。
凛姉が俺と夏美を確認すると、大急ぎでこっちに突進してきた。イノシシかい!
突進してくるものだから夏美がびっくりしてるし、俺は凛姉をなだめてから本題に入ることにした。
「浅海会長、遅れてすいません。ちょっと作成に凝ってしまって」
「部活をしっかりすることは良いことだわ。これからも頑張りなさい。あら?貴女はもしかして転校生の?」
さすが生徒会長、顔認識も完璧である。
夏美もそれに応えるように自己紹介を始めた。
「今日からこの学校に通うことになりました。紫季夏美と言います」
「生徒会長を務めている浅海凛子です。良い学校生活を送ってくれることを願っていますね」
「ありがとうございます。少しでも早く慣れるように頑張ります」
夏美のコミュニケーション能力が高いのはなんとなく分かっていた。
転校初日にしては話していた時のぎこちなさがなかったから。
「あまり、遅いと色々と大変になりますので行きましょうか」
「そうですね」
凛姉に先導してもらうようにお願いをしたが、一瞬『なんで!』って顔したけど、家が分かるの凛姉しかいないから勘弁して欲しい。
それくらい理解できるはずなんだけどな。
夏美を一人にする気にはならなかったのはある理由があるから。
ただし、本人にそれを言うと大変なことになりそうだったから言わない。
「ハル君?なんで浅海会長が私達の前を歩いてるの?ハル君の家に行くんだよね?」
当然すぎる疑問を俺にぶつけてくるので。
「ああ、さっきも言ったけど幼馴染だから家は当然知ってるからね」
「そうじゃなくて、ハル君は一緒に前歩かなくてもいいの?」
「夏美を迷子になったら困るでしょ?だからだけど」
あ……流れで言ってしまった。後の祭りだと後悔してると。
「ちょっと、なんか私ドジっ子の属性つけられてない!?」
いや、部室の会話の内容で多少のドジっ子属性はつくよ。
あれを狙ったって言われたら悪魔の所業だよ。
前を向くと凛姉の顔が若干膨れてる。
ひとつとはいえ年上なんだから多少は我慢してくれと言ってもこれは後が怖いな。
夏美は、向かってる最中にあの電子柱に目を止めた。
「夏美?どうしたの」
「ううん、昨日ここにハル君が通らなかったら猫ちゃんはどうなってたのかなって気になっちゃって」
本当に偶然だった、二人がデートに行かなければここを通ることがなかったのだから。
二人には感謝をせざる得ない、命と笑顔が守れたのだからな。
「そう言われたらそうだな。もし、アキと冬姫と一緒にいたら反対方向から帰ってるから夏美と猫に会う機会はなかったからな」
「そうなんだ、私達ってもしかして運命の糸で結ばれてたりしてね」
笑顔満点で言ってくる紫季さんに俺は顔をそむけてしまう。嫌なのではない、笑顔が明るすぎてまともに直視するのが恥ずかしいだけ。
お願いだから、美少女からそんなこと言われた勘違いするからやめて。
そして、凛姉はその冗談を真に受けないで。
そうゆう自分も似たようなこと言ってるからね!
なんか、この二人意外と似てるのかな?
三人で他愛のない会話をしながら、学校から歩いて二十分ほどで我が家に到着した。
そこから俺が先に行ってドアを開けた途端に、白い物体もとい猫が待っていた。
こいつって確か野良猫だったよね?お行儀良すぎないか?
「あら、おかえり」
「ただいま母さん。ちょっと知り合い上げるけどいい?」
「いいわよ」
「じゃ、呼んでくるわ」
そう言って、俺は二人を家に呼び入れた。
お願いだからハーレムとか思わないでね、俺が一番不思議がってるんだから。
「「お邪魔します」」
「はーい、いらっしゃい。あらー、凛子ちゃん久しぶりね」
「おばさま、お久しぶりです。ハルが猫を拾ったって聞いたので見たくて」
「あら、そうなの?結構可愛いわよ。そちらの女の子は?」
「は、初めまして。私今日から春彦君の学校に通うことになりました紫季夏美と申します」
「夏美ちゃんね、よろしくお願いします。ところで夏美ちゃん、いきなりなんだけどどこかで私と会ったことない?」
まぁ、本当にいきなりだな……母さんが夏美を見て、意味深なことを言った。
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