本当の姿がバレる時
二人の美少女が我が家に訪問することになり、母さんが出迎えると不思議な展開が待っていた。
当然、夏美も目が点になっていて夏美は母さんの問いに慌てて答える。
「す、すいません。自分には覚えがなくて」
「ごめんなさいね、私の勘違いだと思うから気にしないで。でもこんなかわいい子見間違えるかしら?うちの息子なら間違えるけど」
おい、さり気なく息子をディスるな。
だけど、物覚えがいい母さんが見間違えるなんて美少女ってそんなにいるもんだっけ?
疑問が頭をくるくる回っていると、母さんから叱咤が飛んできた。
「ちょっと、いつまで女の子待たせてるの!だからアンタはモテないのよ」
「さっきからディスりすぎだろ!分かってるよ。ごめん、俺の部屋はこっちだよ」
「もう少ししたらお茶持って行くわね」
「ああ、ありがとう」
とりあえず、俺の部屋まで案内して俺から入る。
すると猫が俺の足元に寄って、その仕草だけはかわいいなって素直に思えた。
続いて、凛姉と夏美が入ってくる。二人とも驚いた目をしていた。
「ハル、あなたこんなに本好きだったの?昔は物をあまり置くのは好きじゃないって言ってじゃない」
「ふえ~、ハル君の部屋がまるで図書館みたいだよ」
二人はそれぞれ違う感想を述べてくる。
凛姉は昔来てたのがあってか、部屋の変貌ぶりにただ驚いていた。
夏美は、なんというか天真爛漫な子供ような感想を述べていた。
夏美の感覚はあながち間違えではない。
壁際の方を見渡せばすべてが本で埋まってるって言っても過言ではなかった。
数えるだけで五百冊は超えているだろう。
「本が好きになったのは正直いつだったか覚えてない。凛姉が見て変わってることは凛姉がここに来なくなってからってことだよね」
「そうね、私が来なくなったのは中学が入ってからだから小学の六年生くらいかしらね。ねぇ、ハル。気づいてる?」
「なにが?」
「今、私のこと思いっきり「凛姉」って呼んでるけどいいのかしら。限定じゃなかったの?紫季さん、また目が点になってるわよ」
あ、家だから思いっきり失念してた。
しかも夏美がいるのに、これは詰んだわ。
自分から限定しておいてこれだからアキにもたまにツメが甘いって言われるんだよ。
こればかりは諦めるか。
「自分から言っちゃった以上は限定解除するしかないか。多分、これ以上やってもボロしか出なそうだし夏美にも説明が必要だからな。ただ、一矢は報いるつもりだからね」
「え?ちょ、ちょっとハル!?」
急におどおどし出す凛姉をほっておいて、俺は夏美に目線を向けた。
「俺と凛姉は幼馴染って言うのはさっき聞いたと思うけど、俺が学校で凛姉って呼ばないのは理由があってさ」
夏美に俺と凛姉の関係をすべて話した。
凛姉が俺を溺愛過ぎて、俺の学校生活に影響が出るために生徒会室限定で『凛姉』と呼んでいたこと。
もう一人の副会長も『悠姉』となっていること。
とりあえず話せることは話すと夏美を何故か安堵したような顔していて、凛姉は他人に秘密がバレて『やめて~』と唸りながら転がっていた。
一矢報いるっていうか、返り討ちにした感じだな。
「ハルのバカ。少しは伏せてよね。夏美ちゃんに私の異常さがバレちゃってどう責任取ってくるのよ」
「知るか。黙っておけばいいのに言い出した方が悪い」
「うーーー」
「唸っても負けは負け。夏美、これが本当の生徒会長だ」
「えっと、さっきまでいた会長さんは幻?」
「そう思えばいいと思うよ。今日以降はこんな感じになるから。その分俺に色々飛んでくるとは思うけどね」
限定解除すればどうなるかは嫌でも分かる、男子の目線が矢の如くビュンビュン飛んでくるのが簡単すぎるほど予想できるから。
それだけ凛姉が人気者ってことの表れでもある。
本人は気づいてるのはどうかは知らんけど、多少は蹴散らしてはいるんだろうけど。
悠姉が男子という虫を蹴散らすように……しかも武力で。
そりゃ男子の憧れの的だもんな、幼馴染というのが無かったら俺もその内の一人になっていたと思う。
「それはご愁傷様でいいのかな?でも、私は今の生徒会長の方が好きですよ」
「な、なんで?こんなブラコン会長なんて普通いないわよ」
「それは、心の底からハル君を大事って思ってるからそうなんですよね。それなら無理して隠す必要なないと思うんです」
「紫季さん……」
「だから浅海会長は本来の自分でいてください。それでハル君に何かあれば私が盾になりますから」
ち、ちょっと待て。夏美、今なんて言った?
凛姉の件は仕方ないからいいとしても、夏美がそれに対して盾になったら俺への風当たりが一層強まるの分かってるよね?
っていうか、夏美自身も美少女って分かってよ……
そして、これが戦の始まりとは思いもしなかった。
これは序章に過ぎなかったのは後に知る。
だが、今はうちの猫によって戦は休戦となった。
うちの猫様が夏美の足にすり寄ってきたのだ。
凛姉にも近づいて撫でてもらっていたが、夏美にはさらに甘える仕草を見せていた。
「やっぱり、最初に見つけたのが夏美だから親とか思ってるのかな?」
「あれは、親と言うよりもなんか久しぶりにあった感じね」
「まぁ、昨日の今日だからそうなのも頷けるか」
「そんなところでしょうね。あの子にとっての親はハルよ」
実際に猫を飼っている凛姉に言われると説得力があって言い返せなかった。
凛姉は自分の疑問を春彦にぶつけた。
「そういえば、さっきからこの子の名前は?」
「いや、昨日から家族総出で考えてるんだけどいいのが浮かばなくて」
「よいっしょっと。うーん見る限り女の子ね」
凛姉が持ち上げて性別を確認した所、女の子だったらしい。
「そうなの?まだ病院も連れて行ってないからオスかメスかもわからなかったから助かったよ、ありがとう凛姉」
この子に名前がないことを知った二人は色々と名前を出し合っていた。
俺と猫ちゃんはただ二人を見つめているだけだった。
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