うっかりさんの登場
生徒会室での一幕を終え、凛姉の顔が緩んでいるのが分かった。
なにかいいことあったのかな?一応、聞いてみるか。
「凛姉、顔がニヤニヤしてるけどどうしたの?彼氏でもできた?」
「出来るわけないでしょ!ハルみたいな子はそうそういないんだから」
「俺を彼氏の選別の比較対象にしないでよ。それに俺は凛姉の眼鏡に適う人じゃないでしょ」
凛姉は何故か大した取り柄もない俺を彼氏の選別する際に比較する。
要は俺と同じか、似たような人でないと付き合うつもりは一切ないらしい。
本当の弟ではないが、そろそろ弟離れを視野に入れて欲しいものである。
減らず口を叩くと、膨れた顔をして。
「もう、ハルは本当に自己評価が低いんだから。もっと自分に自信を持ちなさい。確かに身贔屓してるのはほんの少しはあるけどね。それを差し引いてもハルはしっかりしてるんだから大丈夫よ。きっと悠里だって同じこと言うと思うわ」
顔と言葉が一致してないけど、言われていることには多少の理解はしておかないとこれまた面倒だから。
「ありがとう、凛姉」
「礼を言うくらいならちゃんと実行しなさい。顔が見れたし、話も聞けたから。あ、今日なんだけど例の猫ちゃん見に行ってもいい?」
「俺は、特に予定もないからいいけど。じゃ、着いたら連絡して」
そう言って帰ろうとするとまた叫び声が飛んできた。
「なんで!?そこは一緒に帰ろうよって言う所でしょ!」
「俺と凛姉が一緒に帰ったら色々と大変なことになるでしょうが。待つのは別にいいけど凛姉が言葉使いとかが大丈夫ならいいよ」
この場合、困るのは俺よりも凛姉で本性を隠せるかって事が大事。
だって、本性がバレたりしたらどうなるかは先程言った通り。
俺がそう言うと悔しがるように。
「うーー、ハルの意地悪。そうやって意地悪言うなら私だって考えがあるけど実行してもいいの?本当にするよ?」
や、やばい。あの目は本気でアレを実行しようとしているのは分かった。
アレを出されたらどうにもならないのと、処理が大変めんどくさいのでここは完全に折れるしかなかった。結局、俺は凛姉の掌の上で踊られていたのだ。
「分かったよ、じゃ、部室で待ってるから。生徒会が終わった連絡してくれれば昇降口で待ってるから」
「うん、ありがとうハル♪さすが私の可愛い弟♪」
「全く、その笑顔は俺じゃなくて早く彼氏作って見せてあげてね」
「なら、ハルが彼氏になってよ。私こんなにハルのこと好きなのに」
「それは、男としてよりも弟での意味合いでしょ。そんなこと言われたら俺でも勘違いするから気を付けてよね」
「……冗談じゃないのに……ハルの鈍感〜」
凛姉が最後に小言を言ってたがあまりにも小さな声だったので聞き取ることは出来なかった。
こうして、俺は部室に戻って凛姉が仕事を終えるまでプロット作成に明け暮れた。
プロットを作成を終えて時間を見ると、生徒会が終わる時間が近付いていたので、俺はかばんに物を詰めて出ようとしたら突然ドアが勢いよく開いた。
「あ、ハル君やっと見つけた」
「あれ紫季さん?そんなに慌ててどうしたの?」
「ハル君に聞きたいことがあっていくら探しも見つからなくて」
「LAMで連絡来ればよかったのに」
「あ、そうだった。さっき交換したじゃんー。私のバカ……」
焦ってうっかりしてたようだ。そんなに慌てるってことはなにかあったのか?
俺も待ってる相手がいるので、とりあえず要件を聞く。
「俺になんの用だったの?」
「あのね、あの猫ちゃんに会いたいなって思って。あの時はただお願いだけして去っちゃったからどうしても気になって。会っちゃダメ?」
「ダメな訳ないだろう。そもそも見つけたのは紫季さんな訳だしな」
「ありがとう。それで、出来たら今日会いたいんだけど今日はなんか予定ある?」
「別にいいけど。もう一人来るけどいいか?」
「私は大丈夫だけど。彼女さん?」
何故、俺に彼女がいると?アキがいるからって俺がいる訳ないし、いたらLAMのグループに入ってるのに。実は少し天然なのかな?
「俺に彼女なんていないよ。ちなみにもう一人は生徒会長だよ」
「ハル君って生徒会なの?」
「生徒会長とは幼馴染なんだ。さっきアナウンス流れただろう?」
「そういえば流れてたね。なんか悪いことしたの?」
えっと、生徒会室って悪い事したら行くところだっけ?
そもそもなんで俺が悪者になってるの?
確かに根暗だが悪いことは一切していないのに。
押し問答しても仕方ないって思っていると紫季さんから拗ねた声が聞こえた。
「ねー、LAMのグループに入れてくれたのになんで苗字呼び名なの?さっきだってハル君は名前呼びでいいって言ったのに……」
「いや、それは呼び慣れてる方が助かると思ってな」
「でもでも、冬姫ちゃんには名前で呼んでるよね?私も『夏美』って呼んで欲しい……」
こればかりは彼女が正論だった。
LAMのグループに入ってるのに苗字で呼ぶのはフェアではない。
むしろ、このグループに入れたのを催促したのは俺だから。
その当人がアンフェアな事をしては本末転倒なんでここは考えを改める。
「分かったよ。夏美、でいいか?」
「うん、ありがとうハル君」
名前で言うと彼女の顔が太陽のような明るい笑顔で応えてくれた。
どうやら正解だったようなので、彼女と共に部室を出て昇降口へ向かうと、すでに凛姉が待っていた。
あれ、終わったら連絡くれって言ったはずなんだけど?
怒られるのを承知の上で俺は凛姉の方へ向かうのであった。
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