謝罪
林間学校を終え、休日を空けての登校はなんというか、体調を崩していなくても怠いのは俺だけではないはず。
体調もすっかりと良くなり、いつものように4人で登校していると。
「「「おはようー」」」
朝から元気な声が3つほど飛んでくる。
「おはよう、相変わらず元気だな」
「すっかり体調は良くなったみたいね。夏美がいたり尽くせりしてくれた?」
雪本さん?外でそんなこと言うと、色々と面倒だって前に言ったよね?
「あ、私。少し忘れっぽい所があるけど気にしないで」
いやいや、それ新聞部としては……人として駄目じゃないのか……っていうか、情報漏洩し放題じゃんよ!
「でも、嘘は言ってないと思う。で、どうなの?」
この人、意外とぐいぐい来るのね。
花村さんよりも注意しないといけないのはこの人だと直感で理解できた。
話を上手く?逸らしながら登校をすることを決めた俺は先頭を歩く。
その後は『今日の昼はどうする?』などの他愛もない会話を繰り広げながら、校内に入ると上級生が俺らの所へとやってきた。
「えっと、犬飼君でいいかな?」
誰?まさにその一言に尽きた。
「はい、そうですけど。先輩ですよね?」
「ええ、いきなりですいませんが、生徒会室まで来て欲しいと浅海会長が」
どうやら、凛姉と面識がある上級生らしく呼び出しを食らった以上、無視するのは色々と都合が悪いので。
「分かりました、今から向かいます。お手数おかけしてすいません」
「いえいえ、凛子にはいつもお世話になってますから。それでは」
上級生は、その場から立ち去り俺はみんなにこう告げた。
「ってことで、俺は生徒会室に行ってくるからみんなは先に行ってくれ」
「私はハルに付いていく」
「凛姉の事だから、夏美も来ると思ってるだろうから。いいよ、一緒に行こう」
俺と夏美は、みんなと別れて生徒会室に向かいドアを軽く叩くと『どうぞ』と声が掛かったので、入室するとそこにいたのは……
「おはよう、凛姉。いきなり呼び出しってどうしたの?」
そう言うと、凛姉はすぐさま立ち上がり、俺の所へズンズンと効果音が聞こえるような勢いで俺の前に立つと、急に頭を下げた。
「ちょ、ちょっと、凛姉どうしたの??」
「ひなたから聞いたの。私の所為でごめんなさい!」
「あれのことか、大木さんにも言ったけどあれは生徒会の所為じゃない」
「でも、私が提案しなかったら……」
こうなると、凛姉は当面落ち込んだままになるので厄介というか、どうしたらいいか悩む。
仕方ない、ここは強めにいくかな?
「凛姉、終わったことをいつまでも気にしたって意味ないのは解ってるでしょ?もう気にしてないから笑って欲しいかな。凛姉に暗い顔は似合わない」
「ハル……」
「分かった?悠姉、凛姉にいつものアレをお願い」
「さすが、手慣れたお手前で。ほら、凛子。しっかりしろ!」
悠姉が、持ち前の怪力で凛姉の背中を勢い良く叩くといつもの凛姉が帰ってくる。
何度見ても、アレは食らいたくない……きっと、一昨日みたいな状態になるから。
背中から喝を入れられた凛姉は、悠姉に。
「もう、あんたは力が強いんだから手加減くらいして」
「そんなの今更だろ?ありがとうね、春彦」
「いえいえ、それでは俺らはこれで失礼しますね」
「ハル、ありがとう」
「いいって」
生徒会室を出て、俺と夏美は今日へ向かう途中に夏美から。
「ねぇ、なんで副会長さんはハルのこと名前で呼んでるの?元カノさん?」
夏美さん?何故、その発想に至ったのか理解に悩むが、今は誤解を解くことが最優先だなこれは。
「そんなんじゃない、凛姉は幼馴染だけど、悠姉は単なる先輩後輩の仲だからだよ」
「ごめん、変な勘ぐりなんかして」
夏美の場合は、ここに来て日が浅いから仕方ない部分があるから、一方的に責めることは出来ないし、そもそも責める気すらない。
悪いのは、説明していない俺だから。
「最初にちゃんと説明してなかったから誤解されても仕方ないよな、ごめん。まぁ、悠姉にはどっちでもいいとは言ったらそうなったんだ。多分、揶揄われるからで普通に呼んでるんだよ」
「そうなの?言われてもケロってしてそうなんだけど?」
「意外と繊細なんだよ、見た身に寄らずにな。その点、凛姉はダイヤモンド並みのメンタル持ってるから」
夏美の顔からは『あー、確かに』って分かりやすく表示されていた。
そして、俺が悠姉を揶揄わないのはさっきの凛姉のようになりたくないからで、凛姉だからあれで済んでるけど、俺だとどうなるか分かるもんじゃない。
触らぬ神に祟りなしってやつである。
2人で教室に戻るとアキと冬姫が俺の席で待っていた。
「あ、ハルお帰り。浅海会長の要件ってもしかして?」
「察しの通りで、自分が提案したことによる謝罪だったけど一蹴してきた」
「会長すらもお構いなしってさすがね」
「あれは、特命の2人の仕業だから生徒会に非がないのは明らかだからな」
別に、俺は大したことは言ってない。あくまで一般論で一蹴しただけの事。
「夏美は何か言われたの?」
「ううん、私はただ聞いてただけだけどハルの言ってたことに痺れた」
痺れたって……本当に痺れているのは凛姉の背中なんだろうなって思いつつも、俺の言葉に痺れるところがあったのかすら、疑問な所であるけどな。
そんなことがありながらも俺らはいつもの変わらない平日を過ごすのであった。
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