林間学校を終えて
2日間に渡る林間学校を終えて、俺は2日目の肝試しの後遺症というか、疲れが全く抜けずに家で静養していた。
あれだけの酷いのは久しぶりで、全くと言っていいほどに動ける状態ではなかった。
「折角の休みなのになんでこうなるんだか。とりあえず、起きるか」
これに関しては、正直誰の所為でもないのは分かっていて自分の弱さが一番の原因だから。
いつかはこれを克服しなければいけないのは分かっているが、そもそもの原因が分からない以上は探りようがないので、今はその場面にいないようにすることが最善の策なのかもしれない。
そんな、考えをしていると下から大きな声が聞こえる。俺は重い身体を無理やり起こしてドアを開けた。
「そんなに大きな声を出さなくても聞こえてるよ、どうしたの母さん?」
「みんなが来てるんだけど上げても大丈夫?」
「ああ、軽く着替えるからちょっとだけ待ってて」
そう答えると寝間着から普段着に着替えてみんなを迎え入れた。
来たメンバーは意外な人もいるが予想通りだった。っていうかこれなら俺が下に降りた方が良くないか?
案の定、あまりの来客の多さに俺の部屋では収まりきらないのでリビングを使うことになったのだ。
来たメンバーと言うと、春夏秋冬・雪月花・特命・大木さんだった。大所帯だな。
「ハル、体調はどう?無理してない?」
一番最初に気に掛けてくれたのは夏美で、俺の隣で支えてくれている。
「少しだけ身体が重いけど昨日よりは良くなったよ。一昨日と昨日はありがとうな夏美、本当に助かった」
「夏美ったらずっとハルのそばにいたもんね♪」
一昨日と昨日は、夏美に看病してもらっていたようなものだった。
帰ってきてから急激に熱が上がり、起きることすら困難な状態になってしまい夏美が、ずっと俺の看病をすることになってしまったのだ。
折角の休みを俺の看病なんかに使わせてしまって申し訳ない。
すると、大木さんがものすごい勢いで謝ってきたのだ。
「犬飼君、本当にごめんね。予想外のことで私の気が動転しちゃって……」
「あれは、大木さんの所為じゃないから謝らないでよ。悪いのをそこにいる杉下なんだから」
「何を言うか。あれぐらいリアリティがなければ肝試しもならん。生徒会がぬるいから我々が手を貸したまでだ」
「「「「「「「………」」」」」」」
特命以外が見事なまでに黙るしかなかった。
今回、特命と少しだけ関わって分かったことは『こいつ等が絡むと厄介』というのが分かったこと。
そして、雪月花と特命を混ぜるのはもっと危険ということ。
でも、俺はこんな時でもこう思ってしまう。『恵まれているな俺は』と。
「最後がこんなオチだったけど、意外と楽しかったから良かったかな。みんな、俺の為に見舞いに来てくれてありがとう。夏美、俺を助けてくれて看病までしてくれありがとう」
「ううん、私もハルと一緒にいられて楽しかった。看病だって春夏も横で見ててくれたから。私じゃなくて私達だったね、春夏」
「にゃー」
夏美に一緒って言われて喜んでいるようで、まるで『褒められた』って顔をしながら、俺の所にやってきて胡坐をかいてる間にすっぽり収まった。
「ふふ、春夏ったら甘え坊さんになっちゃったね」
「まぁ、まだ小さいからそうなるのも頷けるけどな。昨日も構ってやれなかったからな。ごめんな」
「にゃ……」
このやり取りを見ていたアキと冬姫と雪月花が唖然とした顔をしていた。何故?
「ねぇ、アキ?これってわざとやってる訳じゃないよね?雰囲気がカップル越えて夫婦みたいな感じでいたたまれないんだけど……」
「確かに、これほど甘ったるいのは見たことないね。これは一昨日と昨日で何かあったのかな?」
「犬飼君といるとスクープが絶えないから助かるわ」
「眼福」
「もう~、2人とも今日はそうゆうのは無しって決めたでしょ!」
5人の会話を聞いてる限りで分かることは、俺と夏美の会話及び雰囲気がとてつもないことになっていたということらしい。
あの冬姫が珍しく砂糖を吐き出しそうな感じになってるし、鏑木に至ってはすでに砂糖に埋め尽くされていた。
その後も、みんなして他愛もない話で盛り上がっていて最初からみんなが仲間のような感じになっていて、心が温かくなるのが分かった。
今回を通じて、杉下と鏑木。そして、クラスメートで生徒会の大木さん。こうやって一つ一つの行事で仲間が増えていくというのは良いことなんだって思えた。
すると、冬姫が『そろそろ帰りますか』という合図に全員が帰る準備を始めたので俺は玄関まで送ることにした。
「今日は、本当にありがとう。明日は問題なく学校に行けると思うから」
「まぁ、夏美がいるから無理は出来ないはずだから大丈夫だと思うけどね。夏美無理させないでね。夏美が♪」
「もう~、冬姫!」
「夏美、ハルを頼んだよ」
「うん。任せて」
春夏秋冬との会話を終えると雪月花と特命からも。
「また明日ねー」
「また明日」
「犬飼君、お大事にね」
「では、また会おう犬飼」
「元気そうで良かったわ。また明日な」
「ありがとうな、今日は嬉しかったよ。また明日」
最後に大木さんも俺に感謝の言葉をくれた。
「犬飼君、一昨日は本当にそばにいてくれてありがとう。途中で抜け出しちゃったけど、ペアに慣れて本当に良かったって思ってる」
「ああ、俺も大木さんと親睦を深めることが出来て良かったって思ってるよ。これから改めてよろしくって感じでいいかな?」
「うん、私なんかでよかったら私の方こそ改めてよろしくお願いします」
それぞれが労いの言葉を言って、俺と夏美を残して去っていく。
その姿を見て俺は『はぁ~』と息をついたのを見て夏美が怪訝な顔をしていた。
「ごめんね、疲れているのに色々と無理させて。とりあえず、部屋で休もう?」
「ああ、大丈夫だ。ただ、ちょっと思いに浸っていただけだ」
「思い?誰に?」
「立ち話もなんだし、部屋で話すよ。夏美にもゆっくりしてもらいたしな」
玄関で話していても意味がないので俺らは部屋に戻ることにした。
戻った俺は夏美をベットに座らせ、俺はデスクチェアに座ってさっきの続きを話した。
「さっきの話なんだけど、俺は本当に色んな人に恵まれているんだなって思ったんだよ。たかが肝試しなんかで倒れた俺を心配して来てくれるなんて、3人以外はないって思ってたから」
「それだけ、ハルの人柄がいいってことなんだよ。私は誇らしいって思ってるし、私達のリーダーは頼りになるって」
「それは買いかぶりだな。まぁ、それは置いてといて夏美、来週の日曜日はなんか予定入ってるか?」
「来週の日曜日?ちょっと待ってね」
夏美は、カバンから手帳を取り出してスケジュールを確認していると俺の方を向いて『大丈夫』って返答が来たので俺は、約束と看病をお礼をすることにした。
「そうしたら、日曜日に俺とあのショッピングモールでデートでもしないか?俺なんかでよければだけど……」
「私となんかでいいの?それに『俺なんかでよければ』なんて言わないで。私はハルとデートしたい」
「ありがとう夏美。だったら夏美も『私となんかでいいの?』は無しだぞ。日曜日に俺が夏美の家まで迎えに行く形でいいか?」
「それじゃ、お言葉に甘えてお願いしてもいい?」
「ああ」
こうして、来週に夏美とのデートが決まった。
このデートが俺らの今後を少しづつ変わっていくなんて思いもしなかった。それは色々な思いが交錯し、夏よりも熱い恋の灼熱バトルの開始の合図でもあった。
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