和解
放課後、3人を部室に呼んで昨日の事を説明すると、ドアを叩く音がしたので俺が『どうぞ』と告げると。
「ハル!なんか学校中、貴方の噂だらけになってるんだけど!」
あれ?なんか、想定外の人が凄い形相で来たんだけど!?なんでよ!
「なんで、凛姉が?ってあの噂か。なんでそんな早く広まってるんだ」
何となく予想は出来るけどな……でも、それにしても今更感が。
「なんか2年の男子生徒が言いふらしてるらしいわよ?」
「あいつしかいないか……色々と厄介だな」
「で?パパってどうゆうことかしら?納得のいく説明をしてもらいましょうか」
あ、やっぱり予想通りだよ。
どんな噂よりも超厄介。
っていうか、凛姉の頭の良さなら多少は理解してもらいたいものだがそうもいかないのだろうな……
ん、悠姉は?あ、あれもダメか……
「凛姉は分かって言ってるよね?言葉の綾だって」
「分かってるけど、一応本人の口から聞くのが一番信用性があるじゃない?」
信用も何も、元を正せば凛姉の所為でもあるんけど、それすらも忘れているんだろうな。
「今日は説明と追及の日なのか。凛姉が来るのは予想外だったからな」
「あら、他に誰か来る予定だったの?私はお邪魔かしら?」
いや、いるならいるで申し訳ないが利用させてもらうことにする。
「寧ろ、いてくれる方が今回は助かりそうな気がする」
すると、またもコンコンとノック音が聞こえた。
今度こそそうだと願い『失礼します』と3人の女子が入室してきた。
「犬飼君、一体何の用なのかな?もしかして写真のこと?」
判っていても悪びれる様子が無いって……メンタル強いけど、その強気どこまで張れるか楽しみだ。
「それもありますけど、一番聞きたいことは一つだけです。この部室から出た後も俺をつけていましたね?それで偶然とは言えど夏美の言葉を鵜呑みにしたと。しかもその話を聞いていた所為で証拠写真まで落として帰るとは」
「そ、それは」
「先に帰ってるならあの写真があの場所にある訳がないですよね?そうならば俺が拾ってるはずですからね?」
そう、あの写真があの場所に落ちているということは俺よりも後に帰ったという決定的な証拠。
あの事も聞いていることになるのだから。
しかも、あの写真を焼き増ししたとは考えにくい。
さすがにこれだけ実証があって逃げ切ることは不可能だったようで観念するように項垂れた。
「だ、だってさ、あんな話聞いたら言いたくもなるじゃないの。『パパ』なんて聞いたらさ」
「まぁ、不意に口走った夏美にも多少の悪い所はあったとしても言いふらすのは論外だ。しかもあの写真まで落としやがって」
「あの写真がないのに気付いたのは今日の朝で、あれくらいなら大したことないかなって思ったのよ」
「ということです、浅海会長。例の件は事実無根ですので納得してもらえましたか?」
「「「え?」」」
呼び出されたことに動揺していたのか、斜め後ろにいた凛姉に気づかずにいたようでいることに驚愕していた。
多分、去年の文化祭のことがあるんだろうな。
「ど、どど、どうして生徒会長が!?……あ」
「話は聞かせてもらいました。どうやら、その件については問題ないと生徒会は判断します。そして、新聞部はもう少し節度を持って行動してくださいね」
「「「はい……」」」
浅海会長は聞きたいことと言いたいことを言い終えたようなので『先に出るわね』と言って去っていった。
後で追及が来ないことを祈ろう。
会長が去った後に夏美が花村さんから例のフレーズについて聞かれていた。
「でも、紫季さん。それならなんで『パパ』なんて会話が出たの?理由くらいは教えてよ」
その会話になると、夏美が頬を赤くして俯いてしまい会話すらままならないので、俺が説明することにしたのだが納得するかは別問題である。
俺は、夏美との出会いから一通りのことを話した。やましいことは全くないので話すことに一切の遠慮はいらないのだから。
「ということなんだ。納得してもらえたかな?」
「まぁ、それなら納得せざる得ないけど、色々と突っ込みたい所はあるけど」
「うちの母親と仲がいいのはお互いのフィーリングがいいとしか言いようがない。それに春夏が俺の家にいる以上は夏美はうちに来るしかないからな。そのおかげで俺は、自分のやりたいことが出来るんだ」
「そうだったんだ。犬飼君、紫季さん。ご迷惑掛けてごめんなさい」
リーダー格である雪本さんが素直に謝罪をしてきたので俺らもそれを受け入れた。
どうやら、彼女達(2人)は目の前のネタがあれば飛びついてしまうようだ。
ちなみに2人にしたのは、月岡さんは常にストッパー役に徹しているから。
けど、実際はストッパーにならず流されるのがオチらしい。
彼女達は俺が思うほど悪い人達じゃないような気がした。
自分の気持ちに正直に動いてしまい、後になってこうして後悔などをしているのだろうと。
落ち込んでいる彼女たちを慰めるように夏美が声をかけた。
「私達はもう気にしてませんから。私もあんなこと言ったのが悪いのでお互い様にしませんか?」
「許してくれるの?めんどくさい噂が立っちゃってるのに」
「ハルはどうか分かりませんが私は別に気にはしてません。噂をどう受けるかは本人次第ですからね。その代わり、一つお願いがあります」
「出来ることならなんでするよとは言えないけど。お願いとは?」
夏美が自分からお願い事をするのは初めて見た気がする。なんだろう?
「私と友達になってもらえますか?知っての通り、転校生でまだ友達が少ないんですよ。これも何かの縁だと思って友達になってもらえたらって思いまして」
「そんなことでいいなら喜んで。こんな私達だけどよろしくお願いします」
3人は夏美の提案をすんなりと了承したのだ。
すると、夏美が俺を見てなにか言いたそうな顔をしている。
なんだろう?まだ出会って一ヶ月だが、少しだけ表情で分かるようになっていた。
「夏美、何か言いたいことがあるなら言うのも大事だぞ。いいか悪いかは聞いてから判断するから」
「なんで、言いたいことがあるって分かったの?」
「それで夏美は何がしたい?」
「もう、みんなとグループになれないかなって思って……」
この時の夏美の提案が無かったら、ただ楽しいだけの学校生活で終わっていたかもしれない。
彼女たちが加わることでまた一つ変わる気がした。
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