騒動
本日、うちの学校に転校してきた転校生の名は紫季夏美。
ロングストレートの黒髪で清楚感がありつつ、冬姫のほんの少し元気さを入れた感じの子で、目が細めでまるで猫のよう。
そして、整った鼻に小顔という。
まさに美少女という名に相応しい子である。
身長は冬姫より多少低いが、スタイルに関しては冬姫と張れるほどであり、冬姫が美人なら紫季さんは可愛いという括りになる。
ここだけの話、とあるところは紫季さんの圧勝でした。眼福です。
ラノベなどでよくあるが数人のヒロインがいる。
その内、一人だけが大きいのがあるが俺自身は大きすぎるのは少し苦手で本音を言ってしまえばB~Dくらいが好ましい。
こればかりは俺も男なので言わない訳にはいかない。
まさか、あの時の女の子がうちの学校に来るなんて思ってもみなかった。
彼女を見てフリーズしていたが、紫季さんに声を掛けられることによって解かれた。
「おーい、大丈夫??」
「あ、ああ、大丈夫。まさか、また会うとは思わなくて」
「えっと、名前だけ聞いてもいいかな?」
「犬飼春彦。よろしく」
「春彦君ね。これからよろしくね♪」
おい、ちょっと待て!二回しか会ってないのに名前で呼ぶって。
それを聞いた男子連中の目の色が変わってるじゃねぇか!
どうしてくれるんだよ本当に。
俺がげんなりしているのに前にいるアキは笑いを堪える仕草をしている。
こいつ、俺の親友だったよな?なら、ここは助けるべきじゃないのか?
そして、アキの彼女の冬姫も同じ感じだったのは、この二人似た者同士だから。
けどな、お前ら少しは助けろよ。分かってたけどさ……
彼女は大層、大人気なようで昼になると女子連中に食堂まで連行されていった。
俺の話題が出ないように願うしかなく、俺ら三人は食堂は使わず屋上を使っている。うちの学校の屋上は生徒の憩いの場や大事な場面で重宝するのだ。
晴れ晴れした青空の下で俺らは呑気に昼飯と談笑をしていた。
「にしてもハルの言う通りだったな。実際に見て俺も固まったよ。ハルの好みが全部詰まった子って感じだな」
「うるせ。まさか、転校生だったとは思わないだろ?」
解っていても、言われると恥ずかしいものがあるのだ。
「でも、可愛い子だよね♪あー友達になりたいな。だから早くお近づきになってねハル」
あのさ、それはお前の役目のような気がするのは俺だけか?どう考えても女子同士の方が仲良くなれるだろうに。
「それなら俺より冬姫の方が得意だろうが!カーストトップに君臨してるんだから、俺よりも断然可能性あるだろう」
そう、この二人なら同学年か下級年において絶大な力があるが、上級生でも同じことが出来そう。
それはカーストトップにカップルで君臨してるからで、俺は過大評価しても中の下が良い所だろう。
「こればかりは私よりもハルの方がいいに決まってるでしょ!運命の出会いなんだからさ」
「運命ね………」
「それにカーストトップになりたくてなった訳じゃないからね。気づいたらなってたのよ、私もアキも」
「まぁ、なりたくてなる奴はあいつくらいだろうからな」
俺が指しているあいつとは、男子でアキの次にイケメンなんだがもの凄くチャラいのだ。
まぁ、俺の主観だが………
アキには到底かなわないのだが、何かとアキに敵対心を燃やしている。
これを俗に無駄な足掻きという。
イケメンの枠から外れている俺からすれば蚊帳の外なのでアキには申し訳ないが、どうでもいい問題。
すると、冬姫が俺の言い分に不満をぶつけてくる。
「えー、あいつがアキの次ってあり得ないんだけど。絶対にハルの方が上だよ」
「それは身贔屓だからな。俺はアキには遠く及ばないし、あいつよりも上だなんて思ってない」
「ハルは過小評価しすぎ。ねぇ、アキ?ハルの方があいつよりも上だよね?」
冬姫はアキに同意を求める。
アキは身贔屓とかしないので、しっかり返してくれると思っていたのだが『うーん』って感じで。
「そうだね、ハルは平均詐欺してるからスペックが未知数なんだよね。あいつとハルを比べるならハルの方がすべてにおいて上って思ってるけど」
こっちも身贔屓だったか………二人して俺を持ち上げるのはやめてくれ。
っていうか、平均詐欺ってなんだよ!
ただ目立ちたくないだけなんだが。それはダメなのか、誰か教えてくれ。
そんな身も蓋もない話をしていると屋上のドアが勢いよく開いた音がしたけど、一体何事?
そう思った瞬間、背筋が凍る感じがしたが恐怖とかではなく、不安という意味で。
あれ、なんか嫌な予感……開けたドアの人物は先ほどまで話していたチャラ男君だった。
あーあ、不安的中したよ。
チャラ男の名は鈴木一郎。
うーん、意外とありきたりだな。
ツンツン頭がトレードマークで『モテます』を醸し出すが、俺からしたらウザいだけで羨ましいとは思わない。
もっと言うなれば、ヤンキーになり損ねた中途半端な不良のイメージ。
全国の鈴木さんに一郎さん、相手が相手なので勘弁してください。
鈴木は鬼の形相をしながら躊躇なく俺の所に向かってきた。
多分、あれの件だよな?それしかないよね、俺とこいつが関わることなんて。
「おい、なんでお前みたいな奴があの子に名前で呼ばれているんだよ。なんかしたんじゃねぇのか?答えろよ!」
言ってくることは至って簡単、しかも小学生レベルの言い方。
ここで無駄に張り合うのは意味の無いことなので。
「名前で呼んだのはあの子が勝手にしてることで俺には関係ない。さっきも言ったはすだが?偶然会っただけだって」
そんな俺は、鈴木の言い分を柳のように躱す。
躱すって言うほどのことではないが、俺はありのままを言ってるだけだ。
ここでlet it beが流れたら面白いのに、どっちか流せよ……つまらん。
「なんでお前のような陰キャラが好かれるんだよ。気に入らねぇ」
怒号が響き渡るが、俺の胸には届かない。
って、流石にこれは持ってる訳ないから諦めていると。
『〜貴方の胸には届かない〜』
と、二人のどちらかのスマホから音楽が流れてくる。
なんで持ってるんだよ!さっきの方が可能性九割だろうが普通。
今流れた曲は俺らの世代ではあり得ないチョイスだから驚きもする。
そして、俺は紫季さんに好かれる訳じゃ無いんだけど………勘違いもいい所。
だから、真っ向勝負の正論でぶつける。
「名前で呼ばれたからって好かれているのかなんて本人に聞かないと分からないことだろ。勝手に邪推するな、紫季さんに迷惑かけるなよ」
鈴木は唇をグッと噛みしめて『ほんと気に入らねぇ!』って言いながら去っていった。
やっと嵐が去ったけど、あいつの所為で昼休みが台無しだな。いや、俺か。
「なんか俺のせいで昼休みを無駄にしてすまん」
「なんでハルが謝るの?悪いのは鈴木じゃん。勝手に意味の分からない因縁つけてさ」
「俺がいなければあいつが来ることがなかった訳だからな。こればかりは謝らずにはいられない」
アキは『ハルらしいな』って笑っていた。こうゆう時のアキの笑いに俺は幾度となく救われている。本当にいい親友だよ、ありがとうなアキ。
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