第10話 銀は黒に
黒が苛立ちを抑えながら銀の相手をしていた時、金と相対する銀もまた苛立ちを募らせていた。
全くもって手応えがない!!
なぜ!?私はそこらの女性よりも魅力的なはず。
少なくとも皇国で私よりも綺麗なものはいなかった。しっかりと手も加えて、1番美しい私で相対している。
それでなぜ私に靡いてくれない!?
もしかして既に心に決めた人がいるとか...?
「テルミス様は、どのような女性が好みなのでしょうか?もしかして、既に好いている方がおられてるとか?」
嫉妬に狂いそうになりながら尋ねる
そんな女がいたらどんな手を使ってでも殺してやる
「アハハ、昔からあまり女性に縁がなかったもので。公務などもあり恋などしてる暇もありませんでしたし、まぁそろそろ婚約はしなければと思ってはいるんですが、出会いに恵まれず...」
自分の黒い感情は一瞬で引っ込む。
我ながら単純なものだと呆れるが、嬉しいのだから仕方ない。
「婚約者がいらっしゃらないんですね。私もまだ婚約者がおらず、このままでは行き遅れてしまいます...」
目を潤ませながら彼を見る。普通ならこれで充分なはずなのに、
「そうなんですか。ですが、ソフィア殿はお綺麗ですからすぐに見つかると思いますよ」
効かない。全然効かない。
綺麗って言われたのは嬉しいけど求めてるのはそうじゃない。
「で、では婚約者のいない男性で良い方を...」
そんな時、ふと、視線を感じた。
好奇心とかやっかみとかそんなものを一切排除した害意と殺意に満ちた視線。
どこから見られているかはわからない。横目で窓から誰か見ていないか視線を投げてみたが、誰もいない。せいぜい使用人が時々通るくらいだ。
でも、この状況で私に敵意を向けるということは、つまりそういうことよね?
私と彼が共にいるのが許せないのね?
つまり
ワタシの
敵ね?
これは悠長なことはしていられない
早急に公的な婚姻関係を結ばなければ
先手を打たれたらおしまい
「あ、あの!」
「あ、はい、どうかしましたか?」
「わ、私はテルミス様がそうだったら...いいなって...思います」
勝負に出る
「え、えっと...それは、どういう...?」
「で、ですから」
顔を赤らめる
「テルミス様が、婚約者だったらいいなって...思います...」
「えっと...あの...」
「皇国と王国のこれからのためにも、テルミス様と私の婚姻は良いものであると思います!」
「で、ですから...」
「それとも私では...お嫌ですか...?」
「...いえ、ですから、僕達は昨日知り合ったばかりでは無いですか...。そういうのはもっと時間を置いて...」
「乙女が恋するには充分な時間です!」
「...そうなの...でしょうか...?」
「そうです!このままだと私、初恋の方にフラれてしまい、悲しみに暮れて食事も喉を通らなくなってしまいそうです...」
涙目なんてやろうと思えば誰にでもできる。そして、ここまですれば流石に
「.........」
「.........」
「...わかりました」
「っ!」
「...父に相談してみることにします。しかし、判断によっては御提案は受けることはできなくなってしまうことを御了承いただければ...」
「嬉しいです!すぐにお父様にも伝えなければなりません!それではテルミス様、失礼致します!」
「えっ、ちょっ...」
私はそれを言うと急いで立ち去る。言質はとった、これ以上反論されても困る。
お父様は乗り気だった。
合意を得られたと伝えればすぐにでもライズ王に持ちかけるだろう。
悪い婚約ではない。最終的には成立するはずだ。
そうすれば外堀は埋められる。あとは本人だけだが、私が王国に残って四六時中傍にいるのはどうだろうか?
留学という名目で彼に来てもらうのも悪くない。視線の主から引き剥せるのだから誰かに邪魔をされることもないだろう。
嗚呼なんにせよこれからが楽しみで仕方ない...
ソフィアは恍惚の表情を浮かべ、皇帝の元に急ぐのであった。
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